新聞の地方版に、『 横須賀芸術劇場 休館へ』  の文字が。

7月から休館になるとのこと。

つり天井の耐震化のための改修工事で、2026年の3月末までの予定とのこと。

1994年の2月に完成し、本格的なオペラハウス仕様で、私も初めてこの劇場に足を踏みいいれた時にびっくりしたものです。

もう30年が経っているのですね。

2011年の東日本大震災で劇場のつり天井の落下が相次ぎ、建築基準法の関連法令が見直されたことによるもので、新基準に沿って建物と一体化させるものになるとのこと。

どんな形になるのでしょうか。

先日亡くなったフジコ・ヘミングさんのモーツァルトのコンチェルトを聴いたのも、横須賀能を見たのも、こちらでした。

安全基準に則って改装しなければならないものだとは思うのですが、あのオペラ座の感じの建物がどうなるのか、気になります。

それほどあの建物に入った時の、最初の印象がかなり強かったのです。

 

ヨーロッパの地方の歌劇場のように、定期的にオペラが開かれるようになったら良いなあとは思っていましたが、なかなか横須賀の地までオペラを観に行きましょうというお客様、それに足の確保。これが問題だと思います。

 

とは思いつつ、月日は流れ、この会場も改修工事の段階に入ってきたのです。

 

海に臨んだ土地柄なのですが、東京からオペラ劇場横付けの観光船で往復できるとか、この劇場でなくてはという事があると良いのですが………

野島稔先生のお名前がついたピアノコンクールがあったり、先日は野島先生とゆかりがあったピアニストの方が、コンサートを開いていらっしゃいました。

 

藤田真央さんも、カーネギーホールでのリサイタルを開かれる前に、野島先生を偲ぶピアノリサイタルをこちらで開かれました。

私が藤田さんのソロのピアノ演奏を聴いたのはこれが初めてのことでした。

野島先生のお写真が飾ってあって、演奏の後アフタートークという形で、先生の思い出話をされていました。

野島先生のタバコの吸い方を真似して、吸ってみたというお話が1番心に残っているでしょうか。

 

「隅田川 」という能を元にしたブリテンの《カリュー・リバー》を、能とオペラの上演を一度に行ったこともありました。

こちらの劇場の新しい試みとして、横須賀能の上演を見たことがありましたので、こんなことができるのは、この劇場しかできないのではないかと思ったのですが。

 

そういえば、チェコのプラハ国立歌劇場の《ノルマ》の上演は、ダブルキャストで、横須賀とミューザ川崎で、2回聴きましたっけ………

横須賀のタイトルロールを歌う歌手がグルべローヴァではなかったからです。(ディミトラ・テオドッシュウでした)

演出は同じはずなのに、劇場の形で微妙に異なって見えました。

ヒロインの衣装も、微妙に違っておりました。

 

地方にオペラが根付くには最適な劇場でしたのに………

オペラだけに特化するわけにはいかなかったのでしょう。

シーズン毎の出し物があって、そこの専属の歌手たちがいて、合唱団もいて、小さい地方都市の歌劇場から、つぎつぎに大きい歌劇場に移っていき、そこから世界に発信できる歌手が登場するというような………

ヨーロッパの地方都市のような形があっても良いようには思っていたのですが、これはなかなか難しいのでしょうね。

そんな気持ちが新聞を見ながら錯綜いたしました。