この演出は2011年が最初で、2013年にも上演されたようです。

私は拝見するのは初めてでした。

実は、モーツァルトのオペラの中で1番眠くなる確率が高いオペラがこの演目だったのです。

アンサンブルが素晴らしいオペラなのですが、どうも私はそういう聴き方が今までできなかったように思います

ですからはっきり言うと積極的に「行こう」という気持ちはあまりなかったのです。

このオペラのテーマのようなものもあまり好きではなかったですし………

何が「めでたし、めでたし」なんだという気持ちもありました………

(今回の演出ではその締めくくりが、めでたし、めでたしでなかったのも良かったのかもしれません)

きっと以前もそうだったのだと思いますが、現代風の演出で、写真にキャンピングカーなどが写っていたので、「また今度もちょっと期待はずれかな……」などと思っていたのです。

これが良い意味で予測と違っていたわけです。

今回、初めてこのオペラを面白いと感じたわけです。

うーんやっぱり手がかかっているのです。舞台を作るのが大変だったのではないかと思いましたが、その舞台の作りのドキドキワクワク感が新しいものとして認識することができました。

アンサンブルも今回はしっかりと聴き取ることができました。

実は、女声の2重唱やら、ここに出てくるアリアは、声楽を勉強する者は必ず歌ったことがあると思います。

ドラベラ、デスピーナ、フィオルディリージのアリアは必ずアリア集にも載っていますし、まだ高校生の頃や、うら若き頃にその歌の意味もわからずに歌っていた覚えがあります。

フィオルデリージのアリアはもう少し年齢が上になってからでしたが………

 

実は今回、行く時もあまり心弾まず、気持ちが落ち込んでいたのです。

そのことに関して、早く言えば、今はやりの「カスハラ」のような感じになってしまったのです。窓口で……

 

「どこがおかしいか」をきちんと説明いたしました。

そこにいらっしゃった係の方より年配の方が窓口にいらっしゃって、ことを収めてくださったのですが、なんだか自分の気持ちがまたまた落ち込んで、オペラどころではなかったのです。

しかし、おかしいものはおかしいのです。

 

実は今回、本当はそこから帰ろうかと思ったのです。

 

でも帰らないで、このオペラを見ることができてよかったと思いました。

終わったのが22時を回っていて、家にたどり着いたのは日付が変わる直前でしたが………

 

まあそんな気持ちで見始めたのですが、最初の音がジャーンとなった時に、「今日は面白いかもしれない」と感じたのです。

 

今回は3階の2列目ほぼ正面でしたので、舞台は左も右もよく見ることができました。

何が今回良かったのか考えたのですが、もちろん歌手の方の歌も演技もなかなか良かったのですが、心惹かれた原因は、キャンプ場で、舞台に変化があってそれに無理がないこと、キャンプ場の窓口のような、カフェテリアや、池や、バーベキューの場所、キャンピングカーの前に焚き火をする場所、そんなものが回り舞台に作ってあって、本当にある山のキャンプ場感があるのです。

以前お子様を引率して体験教室によく参りました、

キャンプファイヤーをしたり、肝試しをするのに道を間違えないように夜の森の木のそばでじっと立っていたりした思い出が、舞台中央の山を、灯を持って移動する動きがとても懐かしかったのです。

見ていたらいつの間にか、そういったキャンプ場の夜のワクワク感と重なってくるのです。後半はほとんどが夜の時間蔕で、暗い感じの舞台なのですが、よく見えなくても、最初にこの場所がどういうところかぐるぐる回って見せていただいているので想像できますし、その場所が今は夜でこんな感じなんだとなぜか懐かしいワクワク感があるのです。

その怪しい夜の暗闇であるからこそ、仲良しの相手の恋人を好きになってしまうのだなあと思えるのです。

うーん、この演出家はそこまで考えたのか……と思いました。

なぜかモーツァルトの音楽と、このキャンプ場が違和感がないのにびっくりしました。

特にあの池の場面が素敵に心惹かれました。

女声のお二人の美しい白い足がスッと伸びて、崖を降りてぽしゃんと水に入るところなどはドキドキしました。男声のお二人も洋服を脱いで、水着でやはり池に入る、どうってことない動作なのですが、目が離せないのですよね……

 

今まで見た《コジ・ファン・トゥッテ》の中で1番面白かったかもしれません。

帰らないで良かった………