2024年 5月18日  (土)  17:00 開演

横浜みなとみらいホール

 

〜2024年12月をもって指揮活動からの引退を発表している井上道義 との最後の共演  。

日本フィルとの共演はこの公演が最後となります。

1976年の初共演以来、数々のステージを重ねてきた我々としても寂しい限りですが、マエストロ井上の「有終の美」をしっかりとともに作り上げてゆきたいと思います。〜

 

とのメッセージがプログラム冒頭にありました。

 

ショスタコーヴィッチ  :  チェロ協奏曲第2番  ト短調 Op.126                   チェロ   佐藤晴真

 

……………ソリストアンコール  カザルス〈鳥の歌〉………………

〜休憩〜

 

ショスタコーヴィッチ  :   交響曲 第10番  ホ短調     Op.93    

 

 

指揮     井上道義  

コンサートマスター  田之倉雅秋  

 

 

井上さんの指揮を目の前でしっかりと見ることができる 貴重な  P席を譲っていただいたので、嬉しかったです。

以前もやはり、P席で井上さんの指揮を拝見させていただいたことがあるのです。

何しろ顔の表情が、パッパと変化する井上さんの指揮は、動作が、こうやってほしいという気持ちに溢れているのです。

その指揮がもう見られなくなるということは、本当に寂しく思うのです。

 

この方を知った初めの頃は、ズケズケとものをいう方ですし、動作が大げさで他を低く見下すような感じがしておりました。

最初の頃はそのオーバーな表現が原因で、はっきりいってあまり好きな指揮者ではなかったように思います。そういった調子ですので、あまり興味を感じずに過ごしてきていたのです。

時々友だちに譲ってもらった日フィルの定期演奏会、N響の定期演奏会、他のコンサートでその指揮を拝見しているうちに、変わった方だけど正直な方なのだなあと印象が変わってきたように思います。

それに大病をなさってから、すぐに復活して、だんだん命のお重みを感じさせるような発言の中から、引退のお話が出てきたのですから、びっくりしました。

 

ある演奏会で、今までの自分の経験から「どんなに偉大な指揮者と言われる方であっても、ある年齢を過ぎると指揮者としての活動が困難になってくるのだ」 とおっしゃっていました。

いろんな指揮者の教えを乞うて勉強をしている時に、どんなに偉大な指揮者であっても、どんどんダメになっていくのだということを身にしみて感じたのだそうです。

というわけで、自分は自分のやるべきこと、やりたいことを、その期間までにやり終わることができるように考えているとのこと。

これから今年の12月まで、様々なオーケストラと共演なさるようですが、日本フィルハーモニー交響楽団との共演はこれが最後とのこと。

 

そういった要因があるからでしょうか、もう目一杯自分のショスタコーヴィチを目の前で展開して聴かせてくださいましたし、見せてくださいました。

……打楽器パートが活躍する所が多いショスタコーヴィチでしたので、始まる前の時間を使って入念に最後の最後まで入念にスネアドラムのスティックをどれを使うか試していらっしゃったのを知っています。どのスティックをどの場所でどうやって使うか……(P席はそういう細かい所が見える場所なのです)

いつもより一層細かく考えていらっしゃったのですね。

 

井上マエストロ独特の指揮のニュアンスと、顔の表情が連動する様子………

マエストロの頭の中に、ここはこういう動きでこういう風に、振ってみようとしっかりと考えられているのだと思います。この音はこういう風に指示をすると、聴いているものに1番印象的になるだろうと考え尽くされているように感じました。

確かにあれだけフルに身体を動かして表現される指揮は、体力的に限りがあるように思いました。

身体全体があれほど滑らかに、しかもスタイリッシュに動かせる指揮者はそうそういないでしょう。

引退すると決めたその日までの期限いっぱい、自分の最善を尽くすのだという気概がみなぎっておりました。

そういった時に、ショスタコーヴィチは良く映えるように思いました。

 

そういった中で、佐藤さんのカザルスの〈鳥の歌〉の演奏が一瞬の静寂を伴って立ち上り心に刺さりました。ピアノが伴奏する時の前奏の部分もチェロで演奏された編曲で、その卓越されたテクニックにもびっくりしました。「ピース、ピース」となくというカタルーニャの鳥のメロディーのシンプルな美しさを、より引き立てておりました。

 

うーん素晴らしかった。