昨日しか、このMET.ライブビューイングの《ロメオとジュリエット》を聴きにいく機会がありませんでした。
今週の木曜日までで上映が終わってしまいますので、この日に行くことにしておりました。
まずは、最初の場面で背景の18世紀の絵画のような人物配置が浮かび上がってきました。
舞台の設定は、最初から最後の幕まで変わりませんでした。
家の中庭であったり、屋敷の前の広場であったり、屋敷のジュリエットの部屋であったり、墓所であったり、同じ作りの舞台設定や人がその場の状況を作っているのです。
場面転換が早く、ロメオとジュリエット の時代とは違いますが、演出のバーレット・シャーが考えたものは、スピード感と、主人公たちの心情を簡潔に表せるように、そしてわかりやすさも兼ね備えるように考えられたものでした。
でも今回1番印象深かったのは、ロメオの第一声でした。
ベンジャマン・ベルナイムという方がロメオ役なのですが、この方が歌うと、「うーんフランス語だ」と感じたのです。
それに第2に印象深かったことは、ジュリエットのネイディーン・シエラと2重唱をする時の、響きの美しさです。このロメオさんが歌われると、柔らかなその声とシエラさんの声の響きが、うまく程よい具合に溶け合うことができるのです。
思わず美しいと心の中でうなっておりました。
シエラさんのフランス語は、10代からジュリエットのアリアを勉強していたとのことでしたが、
まだフランス語ネイティブのロメオのような感じには聴こえませんでした。
しかし声の響きあいはとても美しかったのです。
イタリアオペラや他のオペラの2重唱では、どちらかといえば、溶け合いというよりは声をどこまで立派に出すか と言った雰囲気になってしまう印象が強いように思います。
美しいというよりは、よく声が出ているなあと感じるものが多いのです。
ロメオの声が、程よくジュリエットの声と響きあいを持っているので、その加減が美しいと感じるのでしょう。
こういう印象を最初から持ちました。
(ロメオ様を見ていると、歌っている口の感じなどを見ていると、なんだかロベルト・アラーニャを思い出しますし、ちょっとした仕草などを見ているとイアン・ボストリッジを思い出してしまいました。2人を足して2で割ったような感じがしてしまいました………)
〜余談ですが、実はこのライブビューイングの休憩中の画面に、ピーター・ゲルプ総裁のインタビューがあったのですが、そこでお話が出ていた、アスミク・グリゴリアンさんのリサイタルが本日あるのです。
ライブビューイングの最後の演目《蝶々夫人》にやっと出演なさるというお話をされていました。
MET に出ていただくタイミングが遅くなってしまったというお話もされていました。
15日と17日に、アスミク・グリゴリアンさん のリサイタルがあるのですが、今回、2日間どちらものプログラムも聴いてみることにいたしました。
どちらのプログラムも前半は同じ曲目なのですが………
この方が、演奏会形式で《サロメ》を歌われた時、もちろんチケットは購入していたのですが、コロナで具合が悪くなってしまったその日か、次の日かにこの公演だったのです。
本当に残念に思いました。
それまで評判は聞いていたのですが、一度もお聴きする機会がなかったので楽しみにしておりましたのに……
そんなわけで、本日夜、上野に参ります〜
今回、ロメオ役を歌っていらしたベンジャマンさんのお声もいつか実際に聞いてみたいものだと思います。彼の場合ぜひフランス語のものを聴いてみたいと思います。
以前、大先生から、なかなか声が喉に捕まっていると言われた症状がとれない時に、いきなりフランス語の大量の歌曲を歌うように言われたことがありました。
なんだかその言葉の持つ要素に秘密が隠されているのかもしれません。