ゴールデンウィークに突入して街はどこも混んでいるようですが、いつもとあまり変わりない近場を動いているので、あまり嫌になるほどの人混みには会いません。

今は充電期間なので、がんばって力を蓄えたり、考えたりしたいと思っているので。

 

この日曜日は、電車で1駅のところにあるホールで行われるコンサート、1年を前期、後期に分けて3回づつ、計6回行われるコンサートの前期の始まりの日でした。

あまり大きなホールではありませんので、室内楽系のコンサート企画が多いのですが、私は毎回意見を書く欄に、声楽関係のコンサートを入れてくださいと書いておりました。私がこのコンサートの会員になってから初めて、5月のコンサートはメゾソプラノの方のコンサートになりました。極めて珍しいことですし、わたしにとってはとても嬉しいことです。

 

今年度前期のスタートはヴァイオリンとピアノの演奏会でした。

モーツァルト、シューベルト、フランク、それにアンコールがショスタコーヴィチだったのです。

 

これらの曲がヴァイオリンの様々な音色で演奏されました。

こんなにヴァイオリンの音色って色々あったのだ とその多様性を今更ながらのように感じました。

 

ボリス・ベルキン      ヴァイオリン・リサイタル

野田 清隆                    ピアノ

 

【プログラム】

 

モーツァルト :  ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.378

 

シューベルト  :  ヴァイオリンとピアノのための2重奏曲

 

〜休憩〜

 

フランク        :    ヴァイオリン・ソナタ イ長調

 

アンコール

 

(ショスタコーヴィッチ     ツィガノフ編曲:  4つのプレリュード)

 

 

ヴァイオリンのソロの音色に耳を傾けて聴いたことは久しぶりかもしれません。

最初のモーツァルトの曲の時はヴァイオリンの音も落ち着いた音色で、あまり主張しない感じといえば良いのでしょうか………

心地よいのですが、するっと流れていく感じといえば良いのでしょうか。

 

3回ごとに座席の場所も抽選で変わりますので、この前座っていた場所も周りの方も違ってきます。

今回この座席は、前回よりも真ん中に近くなっていました。

どうも私のお隣の方は音楽関係の方のように思いました。

モーツァルトが終わった時、「野田さんの方が良いように思うね……」

とお話しされていました。

たしかにピアニストの表現がそう言われるほど良かったのです。( 丁寧で美しい音色、押し付けがましくないモーツァルトなのです)

それはわかります。

ヴァイオリンと対話しながら曲が展開していくのです。

 

昔まだあまりコンサートにも出かけていない若い頃、ヴァイオリンの弦をギリギリと特にG

線を強く抑えるようにして弾くヴァイオリニストがいました。

日本ではかなり名前が売れていらっしゃるので、聴きに行ったのですが、弦を強く押さえすぎるからか、ノイズが多く聴こえ、ちっとも美しい音色には感じられず、かなりがっかりした覚えがあるのです。

しかしこの方の最初の音はすっと美しく入ってきました。(特にフレーズの弾き始めが美しいのです)

モーツァルトは音色も曲想もあまり大きく変わることなくスーッと流れていった感じがありました。

でも弦を押さえつけないフワッとした音色は柔らかく、ああ心地よい音色だなあとは思っていたのです。

 

次のシューベルトでは音色と曲想が、ピアノの音色もそうですが、変化していき、ピアノパートと対話したり、独立して主張する部分が面白く、その変化を楽しむことができました。何かリートの時の歌とピアノの関係によく似ているなあと感じました。

フランクの曲では、その流れがもっと自由に美しく演奏され、その音色の変化と曲の構成を楽しむことができました。モーツァルトから徐々にこちらの曲に向けて積み上げられていく様子が見事です。

 

そして、極め付けは、アンコールに演奏されたショスタコーヴィッチでしょうか。

プログラムの1つにしてもおかしくないような内容でした。4つのプレリュードを、一つ一つ弾き分けて、多彩な技術を示されるのです。

この曲はきっと自分の中で大事にされていて、身についたものの位置にある曲なのだと思います。

暗譜でお弾きになり、自然に自分の曲として流れ出す様子が今回の白眉の演奏だなあと感じました。