一昨日の日曜日、この講座の最終回の  「 20世紀   日本   アメリカ    イギリス」をテーマとした回に参りました。

いよいよ6カ月目となりました。

今までは、「西洋音楽史」の教科書に基づいた形でその中の作曲家の、主に歌の作品、オペラの作品を中心にお話が進んできたように思いますが、最終回に来て、現代の日本のオペラ作品として、青島先生のオペラの作品の中から、2つの曲が歌われました。

遠藤周作 原作     青島広志 作曲  の《黄金の国》 と、 江戸川乱歩原作  三島由紀夫作   青島広志作曲 の《黒蜥蜴》 の2作品です。

作曲家のピアノ伴奏で歌われたわけですが、この方の今までの回で語られていた音楽の要素がここに反映されているのだなあ と感じることができました。

作曲家ご本人もおっしゃっていましたが、《黄金の国》のアリアの方は、なんだか團伊玖磨さんの《夕鶴》の匂いが感じられました。

《黒蜥蜴》の方はもっと音の構成が複雑になってきていて、「よくこのような音を描いたと自分でも思う」と言っていらっしゃいました。

作曲家ご本人が演奏されるピアノで、しかも解説を聞きながら、その作品を聴くというこの贅沢さは、きっと今しか味わえないだろうと思いました。

 

この回は《ペレアスとメリザンド》のメリザンドのアリア〈私の長い髪は〉から始まり、《子供と魔法》、《放蕩者のなりゆき》、《電話》、《夕鶴》、と続いて、青島さんのこの2曲。

そして最後がガーシュインの《ポギーとベス》の〈サマータイム〉でした。

 

近代・現代のオペラとしてはもっと普通出てくるものもありますが、この選曲もとても変わっていると思いました。青島先生の感覚で、しかも1時間という制約の中に詰め込まれているのですから、焦点を絞って、この時代のこれを聴いてほしいという講座の流れが色濃く反映されておりましたが、それはそれで面白いと思いました。

そういう側面を切り取ってお話を聞くこともとても興味深かったです。

この演奏された《放蕩者のなりゆき》はストラヴィンスキーのオペラで、物凄く難しいアリアのようでした。歌手の方が歌いながら、必死でリズムを数えていらっしゃるのが、とてもよくわかるほどでした。中間部でどうもピアノ伴奏が、どうも音を飛ばされたようでしたが、聴いている方はそんなことはよくわからなかったのです。

どちらの方もプロの方ですから、その事故もおおごとにならずに通過できたのですが、青島先生が演奏が終わった時に、「この演奏がこのまま残ってしまうのが嫌なので、もう一回演奏します」と言われて、この回で一番難曲だと思われるこの曲をもう一回演奏されました。

プロとしての自覚、この講座を一種の作品として残しておきたいと思われる気持ち、その気持ちから放出されるエネルギーになんだか圧倒されたように思いました。

最初の回から、その時代に出てくる主な作曲家の似顔絵をホワイトボードに先生はお描きになっているのですが、その特徴をとらえた絵を真似して、私も自分なりに描いてみるようになりました。

今回も2人の作曲家の顔が描かれておりました。

ドビュッシーとラヴェルだったと思うのですが、私が描くとちっとも似ていないのです。しかしその似顔絵を見ながら描いてみると、その方の特徴というものが感じられるから不思議です。

 

今回の「西洋音楽史」6回シリーズ、全回通わせていただいて本当に楽しかったです。

もちろん全部を覚えているわけではありませんが、この中のエッセンスはきっと自分の中に残っているように思います。

なにかの時にひょこっと出てくるように思うのです。

その中でも今回実際にアリアを聴かせていただいた《黄金の国》《黒蜥蜴》の上演がありましたら一度聴いてみたいと思いました。

講師の青島先生、ゲストで歌っていただいた歌手の方、この企画をしていただいた新国立劇場の方々に御礼申し上げたいと思います。

また新しい年度にもこういった企画をお願いしたいと思います。