フランシス・プーランク 台本: ジョルジュ・ベルナレス
《カルメル会修道女の対話》全3幕 (フランス語上演/ 日本語字幕付)
3月1日 (金) 18:00〜 新国立劇場 中劇場
指揮 : ジョナサン・ストックハマー
演出・演技指導 : シュテファン・グレーグラー
管弦楽 : 東京フィルハーモニー管弦楽団
【ド・ラ・フォルス侯爵】佐藤克彦 【ブランシュ】冨永春菜 【騎士】城宏憲 【マダム・ド・クロワシー】前島眞奈美 【マダム・リドワーヌ】大高レナ 【マリー修道女長】大城みなみ 【コンスタンス修道女】渡邊美沙季 【ジャンヌ修道女】小林紗季子 【マチルド修道女】一條翠葉 【司祭】永尾渓一郎 【第1の人民委員】水野優 【第2の人民委員/ティエリー】松浦宗悟 【ジャヴリノ/看守】中尾奎五 【役人】長冨将士 【修道女たち】河田まりか 斉藤真歩
先日はこのオペラ自体について書いたように思います。
今回はそれの実際の演奏を聴いてどうであったかを書きたいと思いました。
どうしてもズシンと胸に響くオペラなので、どういう演出で、どういう風に上演されるのか、研修所の終了公演といっても、この特別なオペラは聴くことにも覚悟がいるように思います。
心に残る上演であってほしいと望んでおりました。
行って良かったと思える演奏でした。
このくらいのオペラ劇場の規模がちょうど色々な声の色合いや、細かい演技が見えてきて、本当に心が揺さぶられた上演でした。
このオペラのお知らせのチラシを最初に見た時に、絶対の見にいかなければならないものとして、私の中で位置付けられておりました。なんとかして見にいくべきものだと思いました。
金曜日はいつもいろいろ重なってしまうのですが、できれば初日を見に行きたいと思っておりました。
そして3月がこのオペラとともに始まった形になりました。
実は昨日、このオペラの前に来週の大先生のレッスンに備えてお弟子先生レッスンを受けに行ったのですが、一曲がマーラーの歌曲の〈トランペットが美しく鳴り響く所〉という歌だったわけです。以前この歌をやりかけた時は、今のように、あちこちで戦争の匂いがする世の中ではまだありませんでした。
この歌の中で恋人に夜明けの頃会いに来るのです。魂が彼女の家に最後にやってきたのです。
そして自分は緑の丘の美しいトランペットが鳴り響いて聞こえるところが家になるのだ と歌うわけです。
戦場が浮かぶのです。
この歌を練習しながら、心がズキズキしながら、この歌はここではどうしてもこんな声で歌いたいと思うのですが、なかなか技術的に難しい部分がありました。
そんなモヤモヤした気持ちが実はあったのです。
言われたように感じたようにまだまだ歌えないまでも、「とても勉強にはなると思うわ」とのお弟子先生のお言葉………
そんな心境だったからまた特別に胸に迫るものがあったのでしょうか。
この中に出てくる修道女は、当たり前のことですが、みんな女性で、兵士ではありません。
しかし、心の中での戦いはかなり強烈なものがあるのです。その一見淡々としたように見える日常が心を打つのだと思います。
そしてその心が大きく揺れながら、運命をともにするブランシュの姿がまたこちらの心を揺らすのだと思います。
今回、病気で亡くなる修道院長、新しい修道院長、マリー修道女長も熱演で、この方たちの姿が実はこのオペラに欠かせないものなのだということを再確認いたしました。
特に今回クロワシー修道院長の熱演が心に残りました。そういった演出でもあったのだと思いますが………
刑場に向かう前に他の修道女が、新しいリドワーヌ修道院長にすがりつくその姿は、聖母マリアを囲む天使の絵のようにも見えました。照明やステージでの位置関係もそうなることを意識していたようにも思いました。
というわけで、深いところで心が揺さぶられた上演でした。
それぞれの役を深く愛し、それを演じたそれぞれの方にお礼を言いたい気持ちです。
心の中でひたひたと残る上演であったことは確かでした。