MET.の2023ー2024のライブビューイングの9作のうち 1、2、3作はMET.初演の作品でした。

《デッドマン・ウォーキング》《マルコム・X》ときて、ようやく今年のMET .をまだ見に行っていないなあと思ったわけです。近頃オペラの演出もより変わったものへと、目先が変わったものへとの動きがきついように思います。

あまりそういうものが続いてくると、オーソドックスなこれぞオペラというものを見たくなってしまうのです。

このシーズンのMET.のプログラムの表紙には、表が《アマゾンのフロレンシア》で、裏表紙が《ナブッコ》の写真が使われていて、やはりこのシーズンのおすすめ演目のように思います。

というわけで、前作の第3作めの《アマゾンのフロレンシア》から聴きに参りました。

 

第4作目の《ナブッコ》は行きたかったのです。

これぞ 「オペラ」という感じのヴェルディのオペラを見に行きたかったのです。

昨日は平日の上映にもかかわらず、かなりのお客様の数だったように思います。

思いはみんな同じということかもしれません。

料金も高くなりましたし、なんと今まで頂いていたタイムスケジュールや、配役が書いてある神の配布がなくなりました。一枚大きな紙が貼ってあって「これを見てください」とのことでした………

ライブビューイングも人気があって集客が見込める時は少し大きめの会場、あまり見込めない時は少し小さめの会場と、映画館側も考えているのですね。

昨日は前回に比べてちょっと大きめの会場でした。この調子ならきっと祝日からの3連休にはもっと混んでいたのでしょう。

きっと他のお客様も、この演目は見たいと思われていた方が多かったのではないでしょうか。

私もこのオペラを見に行きたいと思っていたのですが、今週はこの日しか空いておらず、この日を逃すと見に行けませんので、少し頑張りました。

今日は二期会の《タンホイザー》ですが、《ナブッコ》があまりにも素晴らしかったので、ちょっと心配ですが。

 

はっきり言って、《ナブッコ》は、好きな演目というのではなかったのですが、もっともオペラらしいものを見聴きしたかったのです。

そして行って良かったと思いました。

もうもう芳醇な音楽が、序曲からとうとうと流れてくるのです。

開幕の合唱も、ステージの神殿の場面も「ああ、オペラだ」という気持ちがしました。

近頃、ストレートにオペラを見聴きすることができなくなっているように思います。

色々考えられていることはわかりますが、歌手の熱演にも関わらず、舞台装置や、あまりにへんてこりんな演出が現れるとがっかりしてしまうということが近頃多くあるのです。

そういった意味からも、このしっかりお金のかかった大掛かりな舞台装置を見ているだけで嬉しくなります。

それに、この重量級の声の飛び交うステージ。

凄い!

まず、【ザッカーリア】のディミトリ・ベロセルスキー。【ナブッコ】のジョージ・ギャグニッザ、そして【アビガイッレ】のリュドミラ・モナスティルスカ。この3人の歌に圧倒されました。

特に【アビガイッレ】でしょうか。この方と【ザッカーリア】の方はウクライナの方だそうです。リュドミラさんはこの役と《ノルマ》がとても好きだとのことでした。

うーん、本当に歌唱力や、発声にも無理なく、低い声から高い声まで豊かに危なげなく歌われるのです。これぞアビガイッレ……

それにザッカーリアのディミトリさん。いつもこの役の性格がどちらかといえばお説教ばかり言っている役どころであまり好きではなかったのですが、今回この役を見直しました、

それにナブッコ役のジョージさん、この3人の傑出した歌唱力、演技力がしっかりとこのオペラを支えているのです。

その他の出演者も素晴らしかったです。(フェネーナ役のマリア・バラコーワさんはロシアの方なのですが……)

なんだか今の自分に必要だったエネルギーだったように思います。

それが証拠に昨日の自分の練習の時に、ちょっとこうやってみたらどうだろうというアイディアが浮かんできました。

聴いていておおいに満足できた《ナブッコ》なのでした。