種谷典子 ソプラノリサイタル

2024年  2月10日 (土)  14:00〜   東京文化会館   小ホール

 

実はこの方はもうオペラでタイトルロールを歌われているようなのですが、私はお聴きしたことはありませんでした。

東京音楽コンクールも、何回か聴いているのですが、記憶にはないのでお聴きしていないのだと思います。

この方のチラシはかなり以前から東京文化会館に置かれておりました。かなり目を惹くお写真なのです。美しい花柄のドレスに身を包んだお姿はかなり目を引くものでした。さてこの方はどんな方なのだろう……と思わせる力がこのチラシにはありました。

ですので、歌われる曲目に惹かれたのでも、この方の歌をどこかで聴いて、リサイタルを聴きたいと思ったのでもなく、ほぼこの方の全身を写したお写真に惹かれたといった方が良いでしょうか。

 

私も何回か文化会館のコンサートに伺っている時、休憩の時に、ひょいとお聴きしてみようかという気持ちになったのもこのチラシのお写真の力かもしれません。

(この時期ちょっと日程が空いていたということもありますが)

 

まあ、プログラムを拝見してちょっとびっくりいたしました

前半はフランス語、日本語、英語、イタリア語、ドイツ語の歌曲が並んでおりました。

後半は、ヘンデル、モーツァルト、ドニゼッティ、ヴェルディのオペラアリアのステージでした。それも最後に 《ランメルモールのルチア》から〈あたりは沈黙に閉ざされ〉と《椿姫》から〈不思議だわ !  ああそは彼の人か〜花から花へ 〉の2曲を持ってくるのですから、結構ボリュームのあるプログラムです。

《椿姫》を最後に持ってこられたのは、昨年 7月 東京二期会の《椿姫》でヴィオレッタ役をお歌いになっていらっしゃるからだと思いますが。

 

お美しいドレス姿と、お歌の技術が合致すると良いなあという気持ちがあったのだと思います。

なんだか、他にもそういった方もいらしていたようで、「プログラムのお写真より少しふっくらされているわよね」とお話しされているのが聞こえました。皆さんとは言いませんがあのお写真に心惹かれた方はもしかするとかなり多いのではないかと思いました。

 

プーランクの歌曲から始まって、デュパルク、中田喜直、山田耕筰、クィルター、リスト、R シュトラウス、2部のオペラのアリアは、ヘンデル、モーツァルト、ドニゼッティ、ヴェルディでした。

 

かなり、様々な言語の詩をお歌いになりました。

前半のプログラムは少し照準を絞っても良いかなという気持ちもいたしましたが。

この1部で歌われた歌は、「戦争により大切な人を亡くした嘆きや平和を切に願うもの、愛する人とともに歩む人生を祈念する作品を集めた」とのことでしたので、少しねらいがわかりにくかったのかもしれません。

もちろんこれだけの言語の歌を歌いこなすことができる力を持っていらっしゃることもよくわかりましたが、その歌が持つ力が分散してしまって、少し印象が薄れてしまったような気がしたのが少し残念に思いました。

 

後半のオペラアリアのプログラムはよく考えられたプログラムであったように思います。

ヘンデルのコロラトゥーアの歌から、パミーナの〈ああ、私は感じる〉ドンナ・アンナの〈酷いですって! ……仰らないで、愛しい人よ〉から先に書いた、ルチアとヴィオレッタのアリアに続いていくのです。

この並びは自然に感じました。

アンコールの木下牧子さんの〈竹とんぼに〉の歌が美しく、とても心に残りました。

聴きながら、大先生がよくいう言葉を思い出しました。一流の歌手は、「良い声だ」という褒め方はしないのだよ。「良い息の流れだ」と言って褒めるのだよって……