第3作  ダニエル・カターン《アマゾンのフロレンシア》MET 初演  全2幕    スペイン語

 

スペイン語のオペラが MET .で演奏されるのは100年ぶりだそうです。

プトグラムには、MET 史上3番目のスペイン語オペラだとの記述がありました。

それでなのかもしれませんが、これを歌う歌手の方たちのテンションが高いこと。

インタヴュアーの方もヒスパニック系の歌手の方で、スペイン語なまりの英語がかなりカンカン響く感じがしました。

ご自身はアメリカで生まれて育っていても、親御さんのルーツは中南米の国々の歌手の方が歌っていらっしゃいました。

自分たちがしゃべっている言葉で歌うことができるのだということを、大きな喜びを持ってお話ししていらっしゃいました。

先のトランプ政権の時にメキシコ国境に建設された壁が1つの象徴でした。

密入国をさせない手段とのことですが、豊かな国力があれば誰も自分の国から出ては来ないでしょう。

あの喜びに満ち溢れた彼らのインタヴューを聞いていたら、なんだか雰囲気がいつものライブビューイングと違ったように見えました。

 

今年度の1回目、2回目は、あまりにも題材が強烈すぎて、この3作目が今年度初めてみるライブビューイングのオペラでした。

近頃、こういった現代の問題を扱った新作もののオペラがだんだん多くなってきましたので、つい3作目まで今年の上映を見ずに来たのです。年末から1月が結構慌ただしかったからが主な理由ですが。この作品も経験したことがないスペイン語のオペラでしたし、絶対に行きたいという気持ちは最初あまりなかったのです。

しかし、今年度のチラシやパンフレットに、蝶々とこのオペラのタイトルロールを歌われる方の写真が使われていましたので、今年度の一押しのオペラのような気がしたのです。

今週は雪に見舞われたので、結局最終日になりましたが……

それと、先日のコンサートで初めて短い歌でしたがスペイン語の歌に取り組みましたので、そういった興味もあったのだと思います。

 

今回この難しいオペラの状況をうまくステージに載せられていてそれがまず目をひきました。

 

美しい明るい色合いが美しく、猿やワニ、イグアナ、睡蓮、魚たち、パペットと呼んでいましたが、操り人形が独特な世界を作っていました。

 

ジャングルに消えてしまった恋人を探すために、歌姫が帰郷してマナウスの歌劇場に行くところなのです。

その1つの船の中で、起こる出来事があるのですが、

とうとうと流れるアマゾンのように、切れ目のない作りと申しましょうか、それこそワグナーのように、このオペラの音楽も滔々と流れていくのです。

旋律の感じは、現代音楽風ではなくラテンアメリカの匂いを残しつつ、無機質にならないメロディーとでもいいいましょうか…………。

指揮者も言っていましたが、その音楽の中にマリンバや、スチールパンの音など、珍しい音も入っているので、音楽が詩のように展開していく感じだと言っていました。

それでなんだか不思議な味わいのある音楽が形作られているのですね。

 

歌手の方のテンションの高い熱唱も、ちょっとこの変わったオペラには不可欠な要素だと思いました。

 

指揮………ヤニック・ネゼ=セガン             演出…………メアリー・ジマーマン

〈キャスト〉

フロレンシア・グリマルディ………アイリーン・ペレス

リオルボ………マッティア・オリヴィエリ

ロサルバ………ガブリエラ・レイエス

アルカディオ……マリオ・チャン

パウラ………ナンシー・ファビオ・エレーラ

アルバロ……マイケル・キオルディ