予告編を見た時、何しろパリのオペラ座、ガルニエ宮の様子が写った時にこの映画は見に行きたいと思ったのです。

人生で初めて、外国のオペラ劇場というものに足を踏み入れたのが、このオペラ座だったのです。

初めてヨーロッパに行った時  (はるか昔のことです。円が○○○円でとても弱い円でした。

ユーロなどまだなかったのです。あ〜あ年齢がわかるね………) 、

色々な国を回るというツアーでした。イギリス、フランス、イタリア、スイス 、だったかな?

そこで、まだバスチーユオペラはできていなかったので、ガルニエ宮で、バレエとオペラが、交互に上演されていた時でした。ちょうど私どもがパリに行った時にはバレエの上演の日で、確かベルリオーズの《幻想交響曲》に振り付けをしたバレエを見たように思います。前日にオペラ座の中部のツアーに行き、次の日がパリ最後の日で、その日に今度は観客として、バレエを見に行ったように思います。

平土間ではなく天井桟敷でもなく、真ん中の階の座席だったように思います。

シャガールの天井画がかなり印象的でした。あの宮殿のような豪華な建物の天井に、シャガールのモダンな絵が描かれていて、一見アンバランスな感じ、これがフランスなんだなあと思ったのでした。

 

映画はそのガルニエ宮で開かれていたアカデミーでオペラの歌手になる才能があるテノール の若者を育てるという話だとのこと。

 

2018年に作られた「パリに見出されたピアニスト」という映画を思い出しました。

プログラムにありました。

「社会階層の違いを超え、芸術家や職人は匠の技を「よそ者」に伝授。その幸運な出会いで、よそ者は新たな人生のステージへと向かうー。これは格差社会で、かつ芸術の国のフランスだからこそ、誕生しやすい物語ではないだろうか」(林 瑞絵  著)

 

◎先週封切りされたばかりですから、ちょっと内容に触れてしまうところもありますので、ご注意下さいませ。

 

「パリに見出されたピアニスト」は、今回の「テノール」とストーリーはかなり良く似ていて、話のあらすじが想像できてしまうのですが、パリの街並みや、雰囲気、この映画ではオペラ座ですが、これが見たいと思いました。

前者の映画は、まだ火事になる前のノートルダム寺院が写っていました。

こちらの映画は、駅に置いてあるストリートピアノを弾い ていた青年が音楽大学の教師の方に見出されて、ピアニストへの道を歩み始めるというストーリーでした。

やはり、パリ郊外の移民の方が多く住んでいる地域が居住区だったと思います。

 

今回の「テノール」の映画でもパリ郊外の移民の方が多い地域に住んでいて、その居住区同士の抗争や、お金をかけた闇での格闘や、ラップバトルなどが出てくる状況が重なっているように思うのです。

ピアノの映画の時にも思ったのですが、才能があっても少々の期間、プロの教育者に指導されただけで、プロのピアニストになれるのかと思うのです。

今回の「テノール」の青年も、確かに良い声なのですが、何ヶ月かで一流のオペラ歌手になっていく道を歩めるものなのかなあと思うのです。

ちょっと現代のおとぎ話風ではあります。

しかも今回は、ロベルト・アラーニャが出演し、主人公と一緒に歌ったりするのです。

アラーニャ自身が王道を歩んできた訳ではないので、「偏見の壁を崩したい」というこの映画の志向と共振しているとのことが書いてありましたが。

 

最後に主人公がオーディションを受ける場面では、いつの間にか、伴奏がオーケストラになっていましたし、そんなキリキリとした場に主人公の兄や幼馴染や仲間たちが聴きに来ても、なぜか周りが何も言わないのです。その場の端にアラーニャがいて、彼の演奏を聴いているのです。

そして、彼が一曲超、有名なアリアを歌うわけです。

映画は歌い終わったところで終わりで、その後彼がどうなったかはわからないのです。

 

話としてはあまり変わったところはありませんが、オペラ座や、ガルニエ宮の大広間の「グランホワイエ」が本当に美しく、あの場所設定があるからこそ心にグッとくるように思うのです。

 

共演者も、彼が心惹かれるソプラノの女声の方はミュージカルを歌っているようで声も出ますし達者にお歌いになるのです。

最初の《ペレアスとメリザンド》からの歌らしいのですが、は美しいと感じましたが、主人公と2重唱する《椿姫》の〈乾杯の歌〉は、なんだか声質が?と思ってしまいましたが………

もう1人バリトンの方はリヨン歌劇場で歌っていらっしゃる若手の方のようです。

この方が、いわゆる恵まれた教育を受け育ってきたハンサムボーイとして扱われているのです。

 

というわけで、何故だかありがちな話なのに最後にはウルっとしてしまいました。