神奈川フィルハーモニー管弦楽団 華麗なるコンチェルトシリーズ

指揮  太田弦      ピアノ  マルティン・ガルシア・ガルシア

2023 6月10日 午後2時〜    みなとみらいホール

 

私はこのコンチェルトシリーズのチケットを購入して2サイクルめになります。

同じ座席で聴かせていただけるので、そのピアノの音色の違いなどが感じられるように思います。

このお名前を繰り返す感じで、覚えやすいお名前の方、マルティン・ガルシア・ガルシアさんは、あの反田さんの活躍で一躍注目を浴びたショパンコンクールの時、お名前だけは知っておりました。

このコンチェルトのシリーズは最初、反田さんと一緒に2位となった、アレクサンダー・ガジェヴさんが演奏するはずでした。

病気のためにガルシアさんに変更されたのでした。

 

序曲〈コリオラン〉が終わって、FAZIOLI  のピアノが出てきた時、まずピアノ横に書かれたこの文字が目を引きました。このピアノは先日、この方と同じショパンコンクールで優勝された、  ブルース・リウ さんのリサイタルでも目にしたように思います。

比較的新しく作られたピアノのようですね。

そのピアノの音色の特徴として書かれていた、明るく美しい音色が今回のショパンコンクールで好まれたとのことでしたが。

 

バランスがとれ、コントロールしやすいのだとのこと。

ペダルが4本あるそうです。(あとから、このピアノについて調べたので、実際はペダルの部分は見ていません)………早いフレーズなどでppを楽に弾くことができ、高音を優しくppグリッサンドすると、ソフトペダルとは違って、輝きを保ったまま繊細な美しい響きが得られる とのこと………

1980年代にイタリアに登場し、ショパンコンクールなどにも採用されるなどあっという間に一流ピアノの仲間入りをしたとのこと。( 飯田俊明さんの記述によります)

 

ソフトペダルを踏むと、弱音にはなるのですが、どうしてもくぐもった感じの響きになりますから、それが輝きを持ったままの弱音になるというのはかなりな魅力ですね………

時々ハッとする美しい弱音が聴こえましたが、その長所を生かした演奏だったのかもしれません。

 

しかし、このピアノの演奏が出てくる前の、このコンサートの初めの   序曲〈コリオラン〉はこの小柄な指揮者の方が、渾身の力を込めて手を振られた時に、ちょっとどきっとしました。

これほどの熱と気持ちを込めて振ったアクションにちょっと驚きがあったのです。

もうすぐ30歳になる方なのですが、見た目が、髪型と雰囲気で学生指揮者のように見えてしまうのですが、その背中が誠実に音楽に迫ろうとしているように感じたのです。

そういった情熱を年齢を重ねるほど忘れていくことが多いように思いますが、そういった気持ちをずっと持ち続けていただきたいな……とは思いました。

 

同じ日の、その後に聴いたノセダさんの指揮ぶりにも、そういった情熱がほとばしり出ておりました。

ちょっと、太田さんの姿をノセダさんに重ねてみたりしてしまいました。

太田さんは棒をお持ちにならずに、手で振っていらっしゃいましたが、ノセダさんは棒を持っていらっしゃいました。

 

しかし、見た目からいくと、コンサートマスターの石田さんが、ガルシアさんと太田さんの兄弟の伯父さんと言った感じに見えてしまいました。(すみません……)

 

しかし、その太田さんの指揮に好感を持ちました。

この 序曲〈コリオラン〉をしっかりと見聴きしたことは確かです。

今回の主なプログラムは協奏曲なのですが。

 

ガルシア・ガルシアさんの協奏曲の第3番の演奏は、あまり他の方の演奏との違和感はありませんでしたが、やはり第5番の〈皇帝〉はちょっと普段と変わった音が聴こえてきたように思います。

しっかりした音がガーンとくるかなと予想していた時に、優しい柔らかな音がなってきたりする部分がありました。

知っている曲だとどうしても次はこういう音だろうと予測して聴いてしまうのですが、そこの部分に違った音が聴こえてくると、違和感を持ったり、反対に心惹かれたりするわけなのです。

今回の場合、後者であったように思います。

 

「うーんこうくるのか………」といったような感じでしょうか。

それがショパンコンクールで最優秀協奏曲特別賞を受賞したことにもつながるのでしょうか。

心満たされる音楽会でございました。