先日、ミューザ川崎の市民交流室で開かれた、《エレクトラ》の事前講座から2週間あまり経ちました。

あの時、興味深いなあと思ったことを、どのように聴きとることができるのか、ちょっとワクワクした気持ちがありました。

前回の《サロメ》は、コロナ療養期間にかかってしまったので、残念ながら聴くことができなかったので今回に期待する気持ちはなおさらです。

いつもの金曜日のごとく、リハビリからお弟子先生レッスンに行き、東京からの帰りに電車を川崎で下車いたしました。

 

R.シュトラウス《エレクトラ》

演奏会形式  /全1幕/  ドイツ語上演 /  日本語字幕付

5月12日(金) 19:00 開演  ミューザ川崎シンフォニーホール

 

指揮:ジョナサン・ノット

演出監修:サー・トーマス・アレン

 

エレクトラ: クリスティーン・ガーキー

クリステミス: シネイド・キャンベル=ウォレス

クリテムネストラ: ハンナ・シュバルツ

エギスト : フランク・ファン・アーケン

オレスト :  ジェームス・アトキンソン

オレストの養育者 : 山下浩司

若い召使い : 伊達逹人

老いた召使い : 鹿野由之

監視の女 : 増田のり子

第1の侍女 : 金子美香

第2の侍女 : 谷口睦美

第3の侍女 : 池田香織

第4の侍女 / クリテムネストラの裾持ちの女 : 高橋絵理  

第5の侍女 / クリテムネストラの側仕えの女 : 田崎尚美

 

合唱 : 二期会合唱団

管弦楽 : 東京交響楽団 

コンサートマスター : 小林壱成

 

何しろ圧倒的な R・シュトラウスの音楽にいつの間にか はめられてしまったという感じでしょうか。

指揮者が出てきて指揮台に立ち、指揮棒をグーンと振った瞬間から、あの音の塊が周囲に放たれこの《エレクトラ》の世界が広がりました。演奏会形式といっても歌手は音楽が始まってから登場する形で、もうほぼセミステージ形式といいますか、演技をしながら歌うのです。

侍女と一緒にエレクトラが登場しますが、最初の場面はほぼ侍女たちの場面です。

その歌に合わせて、演技するのですから、衣裳や大道具や小道具のない立派なステージです。

もちろん譜面台に楽譜などという状況はありません。

ステージ前には、歌詞などの映像を流すためでしょうか、テレビ画像がいくつか並んでおりましたが……

もう大音量のオーケストラがステージ上で音楽の流れを作り出しております。

そういった嵐のような、凝縮された音楽の中でエレクトラが歌い始めるわけです。もう目から見てもその身体の大きさは、半端ではありません。

しかし、この音楽が咆哮しているといった中で、動き回りながら、それぞれが歌うわけです。最初のうちこそオーケストラの大音量に負けない声量や、声の質などを求めていましたがそのうちそんなことはどうでもよくなるぐらいの圧倒的なものがありました。

いつの間にか、R・シュトラウスの、凝縮されたこのおよそ100分の世界に陥っていたように思います。

復讐が達成された喜びの付点音符のリズムに合わせてエレクトラがあの奇妙な感じの勝利の踊りを始め、最後にくずおれた後に、あの「アガメムノン」と呼びかけるメロディー、エレクトラを表すモチーフのようなあのメロディーが最後に演奏されて、最後の長調の和音での終結。

 

音が鳴り終わった瞬間に、もうこの音楽に乗っ取られてしまった自分を感じました。

咳き込みそうになるのを必死でこらえていたからかもしれませんが、涙がじんわり目尻に溜まっているのを感じましたから………

 

なんだか指揮者がとか、歌手がとか、オーケストラが、とかではなく、R・シュトラウスの音楽にとらわれてしまった、はめられてしまったといった感覚だったのでしょうか………