4月25日 火曜日 みなとみらい小ホール
19時〜
今回、第一声を聴いた時に、あれ?この方はこんなに太めのお声だったかしら と思ったのです。
何年か前にリサイタルをお聴きしたことがあるのですが、そんな印象はなかったように思います。
N響の昨年12月の定期演奏会で、ワーグナーの〈ヴェーゼンドンクの五つの詩 〉を聴いた時もそんな印象は持たなかったと思うのです。
ちょっとびっくりいたしました。
聴こえてくる声が変化したように思ったのです。
最初のプログラムのモーツァルトの5曲はちょっとそういった驚きでした。
そこし太めのメゾっぽい声と、弱音に抑えた高音の対比がはっきりしていて、一曲の中にそういった表現がピリッと歌曲の内容を豊かに表しておりました。隅から隅まで神経が行き届いた表現といえば良いのでしょうか。普通その歌が歌われている感じと一味違った表現で歌われておりました。細かい分析と歌う技術を駆使しているように思いました。
その表現の広がりは、もしかすると中低音域を思い切って低い部分に落として歌う今回の声と関係しているのかもしれません。
表現の内容としては、広がって行くようにも思うのですが、ある意味高音の美しさにさっと変化する部分が難しいのではないかなと思いました。
きっとそういったことを考えられた選曲だったように思いました。
モーツァルトの歌曲から、マーラーへ。
休憩後ツェムリンスキーの歌曲が6曲歌われ、その後、細川俊夫が日本民謡を素材にして作曲した〈子守歌〉を2曲歌われました。
この日本歌曲ではゆったりした空気感の中で声を自在に、下からズリ上げてみたり、低めの音程
で歌ったりと随所に歌い方を変えていらっしゃいました。このような歌いわけができるのですから、表現の幅が広がったように思います。
「こんな歌い方もできるのだ」と思いましたから。
そういった、表現の幅を助けていらっしゃったのがピアノの伴奏の方でした。
美しい起伏のある音色だったように思います。日本の民謡の主題の〈子守唄〉も、よく雰囲気を掴んでいらっしゃったように思います。
モーツァルトの歌曲の時に、一箇所、テンポや強弱を細かく変えていかれる藤村さんのテンポと合わなかった箇所がありましたが………
モーツァルトからマーラーの曲になった時に歌い方や音色がパッと変化しましたが、それがツェムリンスキーでまた変化するその妙味。その後日本の歌で歌い方を変えていく。
そんな色々な藤村さんが持っていらっしゃる多様な面を今回は味わうことができたように思いました。
【プログラム】
モーツァルト
1 静けさは微笑み
2 喜びの鼓動
3 すみれ
4 ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼く時
夕べの想い
マーラー さすらう若人の歌
1 恋人の巡礼の時
2 朝の野を行けば
3 胸の中には燃える剣が
4 恋人の二つの青い眼
〜休憩〜
ツェムリンスキー 「メーテルリンクの詩による6つの歌曲」Op.13
1 三人姉妹
2 目隠しされた乙女たち
3 乙女の歌
4 彼女の恋人が去った時
5 いつか彼が帰ってきたら
6 城に歩み寄る女
細川俊夫 二つの日本の子守唄(日本民謡集より)
1 五木の子守唄
2 江戸の子守唄
メゾ・ソプラノ 藤村実穂子 ピアノ ヴォルフラム・リーガー
〜余談ですが、五木の子守唄の歌の内容を初めて深く知ったように思いました。知っているようで知らないことってまだまだたくさんあるのですね………