ミューザ川崎で5月12日に演奏される、ジョナサン・ノット指揮、東京交響楽団の演奏会形式ではありますが《エレクトラ》に関係しての講座でした。
実はこの事前講座も早々に完売になっていました。定員80名とのことでしたので。
4月24日 月曜日 ミューザ川崎 音楽工房 市民交流室 13:00〜
5月12日の演奏は
【エレクトラ】クリスティーン・ガーキー 【クリソテミス】シネイド・キャンベル=ウォレス 【クリテムネストラ】ハンナ・シュヴァルツ 【エギスト】フランク・ファン・アーケン 【オレスト】ジェームス・アトキンソン
上記の歌手の方が歌われるので、本当にワクワクします。ガーキーさんは、MET のオーケストラと来日予定でしたが、中止になってしまったのでMET ライブビューイングでしかお聴きしたことはありません。
お話によるとクリテムネストラのハンナ・シュヴァルツさんは今80歳くらい(79歳でした……)ではないかとのこと。それも凄い。
今回のお話はこの演目に対する興味をかなり引き出していただけるものでした。
事前に行われるレクチャーでも、色々な形がありますが、それぞれの形で色々な興味を刺激してくださるので、受講できるものはしっかり受講したいと思っているのです。
最近のものですぐに出てくるのは、コンサートのプレトークということで開催された、弥勒忠史さんの「オペラと歌曲の密な関係」です。
もともと何語で歌うことを想定されて作曲されたものであるかによってメロディーの形が変わってしまうのだというお話が、実際にその歌を歌っているからこそ出てくる発想だなと感心もし、心に残っております。
最近でしたら、今度5月に公演の予定のケルビーニの《メデア》です。
このケルビーニという作曲者についてのお話や、この《メデア》という作品についてのお話が最初にあって、この曲を指揮される方との対談という形で始められ、このオペラで歌われる、2人の歌手がそれぞれの代表的な部分をお歌いになりました。
やはり実際に目の前で歌っていただけると、迫力が違いますし、記憶に鮮明に残ります。
今回は昨年の《サロメ》に続いて日本R・シュトラウス協会の事務局長をされていて、本も書かれている方が講師でしたので、今度出される本の中からの資料を使ってお話いただきました。
最初始まる前に資料に目を通した時に、やはり文章だけではちょっとイメージしづらかったので、「大丈夫かな」と思ったのです。
しかし、ここに載っている資料を満遍なく語るというものではなく、本当に自分がここを説明したいという箇所をその資料からピックアップされて重点的にお話しされ、ピアノで実際に載っている楽譜の箇所を弾かれながら説明されるので、説明が立体的になると申しましょうか、感覚的にも捉えられるのです。
その音で説明する順番もとてもよく考えられたものだと思いました。
まず、R・シュトラウスがこの時代に何故人気を博したかの理由を挙げて、その理由の一つに1幕もので、100分ぐらいで終わっていることが入っておりました。
その凝縮された中味について後半具体的に説明しますので、まず音で前半の最後にエレクトラのモノローグを聴いてくださいとのことで、MET.のビルギット・ニルソンの圧倒的な演奏を聴きました。
休憩後に、資料に載せられた楽譜をピアノで弾きながらいくつかのモティーフや、その人物の性格を表している和音などを実際に響きで示され、その凝縮された内容について語られました
「喜び」を表す付点のリズムも《フィデリオ》や、《交響曲第5番》の4楽章などの例を引いて実際に音で示されると(ピアノで弾かれると)かなり具体的に迫ってくるのです。
エレクトラは最後に死ぬという結末なのかどうか………
ト書きには(くずおれる)とは書いてあるけれども、死ぬとは一言も書いていないとのこと。
最後になるハ長調の和音は何を暗示しているのか、シュトラウス自身はどう解釈していたのかといったような問いが発せられましたが、聴いた方自身が感じるものしか答えはないように思いました。
学術的に作品にアプローチされる方、演奏者として作品にアプローチされる方、いろいろですが、私にとって事前のこのような講座はとても興味深いものです。できれば必ず参加したいものだと感じます。