METライブヴューイング2022-2023 の第1作目 でした。

マリアカラスのこの役の写真が有名ですが、どんなオペラか知りませんでした。

少々おどろおどろしいお話なのだということは、語られていることで何となく知っておりましたが、まず聴いてみようという形で今年のシーズンの最初の演目に行って参りました。

 

演出によっては、あらすじもわからないかもしれないなあと思って見にいったのですが、ところが演出も、歌手の熱演も、かなり前向きなものとして捉えることができました。

よく分かりました。

 

指揮:カルロ・リッツィ 演出:ディヴィッド・マクヴィカー

 

メデア:ソンドラ・ラドヴァノフスキー       ジャゾーネ: マシュー・ポレンザーニ      

グラウチェ:  ジャナイ・ブルーガー      クレオンテ :  ミケーレ・ベルトゥージ

ネリス :   エカテリーナ・グバノヴァ

 

このステージの印象深い感じは、ステージ後方にある鏡の効果が大きいように思います。

裏切った夫が結婚する前の日に、そこへやってくるメデア。

夫のジャゾーネのために自分の国を裏切り、彼と彼の仲間が戦利品として宝を得る手助けをし、子どもが2人いるメデア。

 

最初の場面で、新しく彼の妻となるグラウチェが、結婚衣装の合わせをしながら、暗い予感を抱いているのです。そういった場面が、後ろにある鏡に映り様々な人がいろんな動作をしている動作の裏側が見えることに気がつくわけです。

ステージが広く、その一つ一つに意味があることを感じるのです。

結婚式のベールの長さや、動きがかなり意味があるものに見えるし、強調されるのです。

床に横たわっているとその角度によって、空中に浮かんでいるようにも見えるのです。

 

最後に子どもを殺し、炎の中に入る最後の場面にも効果的な役目を果たしておりました。

かなり凄惨な場面なのですが、そういった鏡の効果で現実ではない、幻想のようにも見える効果がありました。

 

しかし、メデア役のラドヴァノフスキーがやはり素晴らしいのだと思います 。

このメデア役は、かなりの部分蛇のように床を這って動くようなところがあるのです。

休憩中の映像の中にそういった動きに体が耐えられるように、トレーニングする姿が映し出されていました。専門のトレーナーもいたようです。

それだけでなく、化粧をした後に楽屋で柔軟体操をしている姿もありました。

何しろこのオペラはこのタイトルロールを歌うことができる歌手が いないので、上演することができないオペラであったとのこと。

マリア・カラス以来上演されていなかったとのこと。

 

お話では、《ノルマ》を上演した後に、ラドヴァノフスキーからゲルブ総裁にこの《メデア》の上演のお話をしたとのこと。

きっと、そのために少しずつ訓練をされてきて、その裏付けとなる力をつけてこられたのでしょう。

それがよくわかるステージでした。

きっとそれが、このオペラに対して何の知識も経験もない私でも惹き込む力を持つものになったのでしょう。

 

映像ではなく、本当のステージを見たらまた違った印象を持ったのでしょうか……

しかし、この映像であってもその迫力は充分伝わってきました。

こんな、音楽も、演出も、演じる歌手も揃った熱演は、あまり多く見られるものではないと思いました。見に来て良かった。