このDVDは新国立劇場開場15周年記念刊行 オペラ鑑賞ガイドブックに付録としてついていたものです。

この鑑賞ガイドは2012年発行のものです。私が購入したのはそれから何年か経った頃だと思います。

常勤の時代はなかなか時間がとれず、初台まで来ることが気持ちの上からも大変だったのです。

上野文化会館であれば、電車から降りてすぐに歩いていくことができるのですから。

 

新宿から一駅京王新線に乗るか、渋谷駅からバスに乗るかというこの一手間が、少々この新国立劇場へ行くということをためらっていた原因なのです。

もう少し簡単に行けるところでしたら、もっと早くからこちらへ通っていたように思いますが、この劇場ができた頃は本当に忙しく自分の時間というものがあまりなかったように思います。

その溜まったストレスをいつの頃からか、休みごとに海外に出かけるようになってしまったので、益々時間がぎゅうぎゅうになってしまいました。

娘が、少し大きくなってきた頃には、一緒に連れて行くようになりましたが………

 

というわけで、この本が発売になっただいぶ後に、購入したのです。

これを買った時は、新国立劇場にオペラを見に来るようになってからですから、発売されてからだいぶ経っていたときだと思います。

 

この劇場のはじめの頃を知らないですし、会員でもありませんし、バックヤードツアーに参加したこともありませんので、ちょっと興味があったのだと思います。

 

しかしまたこれを買った時は、もう非常勤に変わっていたので少し時間が以前よりはとれるようになっていましたが、目の前にあることに追われて、つい本の紙ベースの部分をさささと読んで、DVDは見ないでいたのです。

そして他の本に紛れてそのままになっていたようなのです。

先日、音楽関係の本をまとめておりましたらこの本がひょっこり顔を出したのです。

「オペラの作り方」という表題に惹かれて購入したくせに、そのままになっていたのです。

 

このDVDを全部見ても30分。

早速見てみました。

劇場の外観、3つの劇場の作りとどういう仕様になっているかが最初に出てきます。

それから短いですけれども、スタッフさんから主にどんな仕事をしているからというお話をしていただいた画像が出てくるのです。

その中で一番面白いと思ったのは、音響の方のお話です。

「オペラ劇場は、客席へ音源を増幅したりしする仕事はありません。なくても良いのです。

舞台の声や、オーケストラピットの音が客席に届きやすいように作られているからです。

じゃ何をするのかといいますと、客席にはよく聞こえても、舞台の上では音が聴きづらいので、歌手の方が伴奏の音をよく聴き取れるように調整しているのです」

とのお言葉。

なるほど!

舞台上にだいたい10個ぐらいのスピーカーを置いて、歌手の方に音が聴こえやすいように調整しているのだというお話は新鮮でした。

あれだけ大きいステージのまた奥に入ってしまいましたら、伴奏の音がちゃんと聴こえるわけないのですよね。客席で聴こえる音が、ステージの奥で聞こえるわけないのですよね。

そんな当たり前のことに今まで考えがいたりませんでした。気がつかなかったのです。

 

ちょっと大きいホールになると自分の声が聴こえにくいし、いつもと違う聴こえ方をすることはわかっていながら……

小編成のオーケストラ伴奏で歌ってみた時も、そういえば音が聴きにくかったということを思い出しました。

すぐ真ん前で歌ってもあれだけ誤差が出てくるのですから、オペラのように動き回り、演技をしながら、立ち位置も変わってなおかつ難度の高い歌を歌うわけですから、ステージにオーケストラの音が聞こえていなくてはならないわけですね………

納得。

 

本当に短いお話と、その仕事の画像なのですが他にも面白いお話がいっぱいありました。

プロンプターの方の座り位置や、マエストロの普通のオーケストラの曲を振る時と、オペラを振る時の意識の違いなどのお話は、またまたなるほどね……でした。

オペラは時間をかけて煮込んだスープのようなもので、じっくり手間暇をかけて演奏し、オーケストラを振る時はその時その時の感性が生きていくものというような感じのお話でしたでしょうか。

指揮者って、指揮者という職業を選んだ時点で目立ちたがり屋なのです……というようなお話も。

なるほど。

このいろいろな方のちょっとしたお話で構成されている部分が、とても新鮮で面白かったのです。

 

今度機会がありましたら、バックヤードを見てみたいと思いました。

そういえば、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場ではバックヤードツアーに参加しましたっけ。

 

感染症対策というものがなくなったら、是非体験してみたいです。

鑑賞の助けになるように思いますし、ドキドキ感も共有できます。

 

ちょっとそんなことを思い出した画像でした。