降り続いた雨が上がりましたので、マッサージの後にこの季節を味わいたいと思い歩いて出かけました。
火曜日のことです。
実家に車を止めて、10分弱で歩いていける英連邦戦没者の墓地に行きました。
一番近いのは、植物園、次に近いのは公園。そして3番目が、特別な雰囲気がするこちらです。
こちらを訪ねたのははかなり前、何10年も前になります。
閉園時間がありますし、天気の良い休みの日に積極的に行こうかなと思う場所はいろいろあって近くても行きそびれてしまうのです。
静かで美しい所です。
なんだかこんな感じの風景を想像したことがあったように思いました。
昨年歌っていた R・シュトラウスの歌曲 〈Freundliche Vision 慕わしき幻影 〉の中に出てきた平和な美しい場所の風景についていた、メロディーと詩が表していたイメージにぴったりとしているように思いました。
きっとこの曲の詩はこんな風景をイメージして書いていたのであろうかと思われるのです。
落ち着いた平和な風景、そして静かな風景でした。
実際は鳥の声や、車の通る音も聞こえてはくるのですが、何か受ける感じがシーンとしているのです。
この詩のイメージとしては天国のような風景だったように思うのですが、なんだか目の前にある風景がその「天国」のように思いました。
西洋的な天国のイメージとでも言いましょうか………
しかしこのエリアの植物は、英連邦の墓地なので、オーストラリア、インド、ニュージーランド、イギリス、カナダ の国籍の方々のお墓にふさわしいようにユーカリの木や、ヒマラヤスギなどいろいろな植生のものが植えられていて独特の林というか、小さな森のようになっているのですが、その集合体は不思議なものなのです。
もちろん桜もあります。
そしていろいろな花も咲いています。
こちらの風景を設計し、この風景を守るために手入れをされている方がいるのだと思います。
ちょっと古い話ですが、チャールズ皇太子とダイアナ妃が来日された時にこちらの墓地を慰霊のために訪れたことがあるのです。
やはり、特別な場所なのだと思います。
普通言われている外人墓地とは違います。
こちらは1939年から1945年までにお亡くなりになった方の墓地で、第2次世界大戦中の、陸軍、海軍、空軍の兵士の方々が眠っていらっしゃる所なのです。墓碑銘を読んでみると、お亡くなりになった年齢などが書いてあるのですが、19歳などと書いてあるものもあり、胸が痛みます。
80年近くこちらで眠っていらっしゃるのですね。
ご本人もこのような異国の地に眠るとは考えてもいらっしゃらなかったことと思いますが……
何10年も前に訪ねた時に一緒に行った母親はもうおりませんし、それこそダイアナ妃もこの世の人ではありません。
歳月は容赦なく経っていくのですね。
一つ一つの墓の間にはバラの苗木が植えてあるのですが、これも見事に手入れがされていました。
周りは芝生が植えてあって、ちょうどその手入れの方が3人ばかり作業をしていらっしゃいました。
あまり知られていない所なので、中でお会いしたのは、この手入れをされていた方と、散歩に来られたご夫婦だけでした。
何故か、このエリアにいるカラスや、その他の鳥たちもいつもと変わって、自由にのびのびとしているように見えました。
同じ風景を見ても心の持ちようで感じることが違って来るのでしょう。