短編が9編この本には入っています。

この方の作品は、映画やドラマなどになる作品が多いように思います。

巧みな筋運びに、いつの間にか話の流れにはまっているのです。

その話の意外さに最後のどんでん返しにびっくりするのです。

話によってはそのどんでん返しに、「少し無理があるかなあ」と思いつつもこの短編集でもその短い文章の中にヘェ〜という決着があるのです。

短編集の良いところは、短い待ち時間や、ちょっとした時間の合間に読むのに適しているところです。

 

正月の決意

十年目のバレンタインデー

今夜は一人で雛祭り

君の瞳に乾杯

レンタルベビー

壊れた時計

サファイアの奇跡

クリスマスミステリ

水晶の数珠

 

の9編です。本当に短いので直ぐに読めてしまいます。

この季節にふさわしい名前の話が2つほど含まれているからでしょうか、自分でも何故この本を買ったか記憶はあまり定かではないのですが、少し前にまとめて購入した本の中にあったのです。

 

この方の話は映像になることが想像できるのですね。話自体が映像的なのかもしれません。

頭の中でこういう映像になるだろうなと思えるのです。

 

いろいろな話の書き方があると思うのですが、この方の話は何か映像が浮かぶのです。

 

まず読み始めた、最初の話。

もうすぐお正月だという今の時節にぴったりの話で、いつの間にか何気なく読んでいましたら、引き込まれておりました。

最後の一捻りが効いていて、ちょっと終わりの部分に細い光が差し込む部分があるように思い、少し嬉しい気持ちがしました。

 

そうですね、まるでO.ヘンリーの 「最後の一葉」とか「賢者の贈り物」風なちょっと悲しいけれどもちょっと救いがあるような気持ちがしたのだと思います。

同じような肌触りがしました。

 

この季節になると何故か思い出すOヘンリーの短編集です。

 

そういえば、先日、春に歌うことができなかった〈飛べよツバメ〉という歌があって、とてもこの年頃のお子様たちに歌ってもらいたかったので、季節外れですが、部分2部合唱で練習をしました。

その時、ツバメの話をした時に、オスカー・ワイルドの「幸福な王子」に出てくるツバメの話をしました。寒い季節には暖かい国へ飛んで行くから、もう秋になった日本では見ることができないという話から、この話に出てくるツバメはこの王子のメッセンジャーを勤めて寒い雪の夜に彼の足元で死んでしまうのだという話です。

結局「王子」の像もすっかりみすぼらしくなってしまったので倒されて溶かされるのですが、溶けない塊があってそれはこの「王子」の鉛の心だったのだというお話ではなかったでしょうか……

もちろん授業の時には、季節ハズレを承知で王子のために残ったツバメのことを、ちょっと伝えたかったので、そこの部分しか教えませんでしたが。

その後、この話を読んだお子さまはいるのでしょうか。

 

さて東野さんの話は、こうやって記憶に残っていくものになるのでしょうか。