「運命」の聴き比べをした学年の振り返りカードを読んでみましたら、よく聴いて興味を持っていたことがわかりました。

歌を歌ったり、合唱をしたり、お互い聴きあってハーモニーさせたりすることができないので、今までも「運命」の聴き比べはやってきたのですが、そういった時間の分も入れてかなり丁寧に今年は扱いました。

 

授業の内容もかなり考えました。

鑑賞ノートは同じですが、指揮者の演奏の違いは内容的になにが違っているのかを感じさせることに気を使いました。

 

以前、音楽の鑑賞の授業を、関東地区で発表をせねばならず、その時初めて、世間的に研究発表の形というものはどういうものを言うのかを思い知ることになりました。

今更といった年齢でしたが、一から叩き直されましたので、その一年間は発表する学年の子供たちには、毎時間短い曲であっても聴かせて、感想というものの質を高めていくことを指導されました。

音楽の要素的な言葉が必ず入ってくるように一年間訓練する感じでした。

その時に、どういった面を注目して聞かせて行ったら良いか、それぞれの曲について結構考えました。

はっきり言って、音楽の授業の中で一番やりにくいのは鑑賞の授業かもしれません。

普通、その曲の説明をして、時間があれば感想を聞きますが、だいたい感想ノートを書か

せて終わりという感じが多いと思います。

 

 

まあ、その発表の時に何か違った授業のあり方を考えるヒントはないかと思って、いろんなところの発表などを見学に行きました。

 

「ハンガリー舞曲第5番」では、テーマが繰り返されていることと、速度が速いところと遅いところを身体で感じさせるために、グループを作らせて、音楽に合わせた振りを作らせました。

そういった活動の中で、発言の中に、ここは最初と同じメロディーだから、同じ踊りにしようとか、ここは明るい感じだから動きも明るくしようとか、速さの違いをどうやって表そうかとか発言が出てきたら、それは音楽の要素をよく理解しているという評価になるのですが、やってみてこんな方法も積み重ねていかないと、思うような動きを見せてくれないのです。せいぜい一つの鑑賞曲にかけられる時間は2時間ぐらいですが、その中で一定の成果を得ようと思ったら、この時間では足りないことと思います。

 

その後動きを伴った鑑賞の授業は、積み重ねていけないので、近頃はやっていませんが、小さい時からちょっとずつ積み重ねることができれば、結構おもしろい方法だと思います。

しかし、今年度は、近寄らせてはいけない、密になって喋らせてはいけないという世の中ですから、こういうこともできません。

そういった中で、鑑賞の授業の中心になるであろう「運命」の聴き比べは、今までの授業で使ってきた資料にプラスして、さてここまで違って聴こえるのはなにが違っているのであろうかというところまで、もう一度、授業の振り返りのカードを書かせながら、問いかけてみました。

そこで、今年度学校で新しく購入したDVDの、プロムシュテット指揮のバンベルク交響楽団と、朝比奈隆 指揮のNHK交響楽団の映像を一楽章の最初の部分だけ聴かせてみまし

た。

同じ部分に出てくる同じ楽器の音がまるで違って聴こえることなど (ここでは ホルンでしたが…)本当に良く聴いていました。

同じ音色ではなく、音色にも重い、軽いがあったり、曲想によって全然違う音になるのだということに気がついて、それを面白いと感じるお子さまが結構いたことが、振り返りカードに書かれていて、私もちょっと嬉しかったです。

様々な方の「運命」を聴いて、授業の3名の指揮者を選択したわけですが、聴くたびに本当に私自身も勉強になるのです。(小澤征爾、カラヤン、ベーム)

 

お子さまたちも映像がかなり面白いと感じたらしく、もっと他の方の映像も見てみたいという要望も出ていました。

しかし与え過ぎても行けないし、必要なものを印象深く感じる程度に使っていくのには、こちらの事前の緻密な作業が必要です。

 

この学年の夏休み前の最後の歌は、カントリーロードにしました。

英語の歌詞がついているのです。

「耳をすませば」のオープニングの「カントリーロード」の歌を聴かせましたら、その演奏の良さも感じてくれたようで、ちょっと嬉しい出来事ではありました。