3月、4月、5月と3ヶ月お休みが続いたオペラ講座が先週の土曜日、再開されました。
演目は《死の都》でした。
折しも感染症の病気が猛威を振るっている今日、このオペラのテーマのようにも思える、「生と死」は今の時期、興味深い問題です。
コルンゴルトが、若くしてこのテーマを選びそれを曲にして作ったわけですが、アリアとして独立したものにならないように、歌の中に違う方のメロディーが混じったり、合唱の部分が入ったりしているという形をとっているようですが、ソロで歌われる時は、その部分を削ったりなさって歌われているようです。
何しろ美しいメロディーが溢れているのです。
オペラの中で歌われるマリエッタの歌を今回しっかりと聴きました。
彼の歌曲に取り組んだ時も、ものすごくシンプルなメロディーラインなのですが、それをどう歌うかで全然その持ち味が変わってしまうということが、体験的によくわかりました。
それだけ歌い手の力量に左右される歌ということだと思います。
このオペラの歌もものすごく広い音域で、耽美的なメロディーや、キラキラ感のある音色が使われているとのことで、とても歌い手の方の力量が問われて大変なのだろうなと思いました。
今回拝見した映像は、マリーとマリエッタ役はカラン・アームストロングで、彼女は素晴らしい歌唱力、演技力でした。
この方は演出家として有名な、ゲッツ・フリードリッヒの奥さまだったのですね〜〜〜
パウル役は、ジェームス・キング。
ワグナーのものをたくさん歌っていて、その歌い方を聴いているとなる程と思われる感じはありましたが、これもまた難しい役どころを、しっかりと演じられていました。
1983年のベルリンで上演されたものの映像でした。
何しろやはりこのオペラは誰が演ずるかで、かなり印象が変わってしまうのだと思います。
マリエッタは、圧倒的な演技力でした。この役は踊り子の役ですから、踊りの場面もしっかりと踊り演じられていて、その歌唱力とともに圧倒的なマリエッタでした。
かなり小柄な方のようですが、舞台装置もその身長差が目立たないように工夫されていましたし、立ち位置なども考えられていたようでした。
こういうことって、普通ではわからないことなので、ご指摘いただくとなるほどと思うことが多く、オペラを楽しむ色々な要素を知ることができます。
こういう講座の時間では全曲を通して見ることはできませんが、そのポイント、ポイントをご指摘いただけるので、またなるほどと思うことが多いのです。
彼女のマリエッタは、他の方のものを存じ上げませんが、素晴らしいものでした。
それがまず心に残りました。
実は一つ、見ていてこれはいつの時代設定なのだろうと思ったことがありました。
19世紀末あたりなのだと思いますが…20世紀初頭?
飾られているマリーの絵は、衣裳がまるでイゾルデ姫のようなドレスですし、足元にはリュートが描かれていて、彼女の遺品にリュートがあるのですから、絵を描く際の小道具としてではなく、リュートは愛用の楽器だったようなのです。
しかし、その時代リュートを気軽に弾けていた女性がそんなにいたのでしょうか。
彼の部屋にきたばかりの踊り子マリエッタが、その彼女の愛用のリュートで歌の伴奏をしながら自ら歌うということになっていたのです。
たくさんのキラキラした音が出る楽器、チェレスタ、グロッケンシュピール、トライアングルやリュートも入っているオーケストラだったようですが。
このオペラがなかなか上演されにくい原因の一つにこの楽器の多彩さもあるようです。特別な楽器があればあるほど、伴奏が大変ですし、色々な方にお願いする率が高くなるので……
新国立劇場で、2013〜2014のシーズンで演奏された時のプログラムによりますと、ハープ、ピアノ、チェレスタ、ハルモニウム、マンドリン、バンダのオルガンなどの奏者のお名前が普通のオーケストラに足される感じで書かれていました。
ここではリュートではなくマンドリンで音を出されていたのですね……
ちょっとこのリュートの扱いにびっくりしたわけです。
この時代、こんなにすぐ弾けてしまうほど、リュートはポピュラーな楽器だったのでしょうかね……
かなり難しい楽器だという認識があったのでちょっと違和感でした。
そんなことを感じずに、お伽話の一種のように感じれば良いのでしょうかね。
運河が流れ、「水の都」であることから水が原因の病いであるコレラが連想され、そして《死の都》の名前はそこからきているのだというお話は興味深いものでした。
何気なくテレビを見ていましたら、感染病のことに関したクイズ番組のようなものをやっていました。ロンドンでコレラが流行った時、感染者の多く出ている地域の地図を作るという現代にも通じる方法を考え出した人のことが出ていました。
その地図から、原因を水、井戸にあるということを見つけ出した方のお話でしたが、コレラと水の関係をまず連想したのは、この《死の都》の説明をお聞きしたばかりだったからでしょうか……