横長に広がった舞台の形。
以前はこれが当たり前の形だと思っていた。

歌舞伎座の桟敷席に座るとちょうど舞台の高さと座っている位置が同じ高さになる。
平土間の席からは少し見上げる形になる。
何か演じている役者と同じ位置の目線になっていることで、同じ演目でもちょっと見方、受け取り方が変わってくる。
同じ高さで横から見るせいか、舞台上の装置が幕に絵が書いてあったり、奥行きの薄い作りであることがよくわかってしまう。
横長の舞台は、正面から見た位置で考えられているので、左右の動き、上下の動きが主になる。そんな考え方、見方の違いがよくわかる。

平土間から見て桟敷席はやはり目立つ席で、座っている人がどんな人か、花道側は必ず平土間席から見られる位置にある。
また歌舞伎は、伴奏する奏者が舞台上にのっているので、その熱演を見ることができる。
横長の舞台なのでそのスペースが確保できている。

日本の舞台の感覚はやはりここが基本なのかなと思う。



そんな感覚で外国のオペラ劇場に行くと、やけに間口が狭く感じたりする。横よりも縦の高さに圧倒され、また奥行きの広さが感じられる。

オペラ劇場の桟敷からも、オーケストラピットが上から見おろせ(もちろん平土間の座席も)、平土間からはかなり見上げられる位置関係である。

バレエは、特にあの劇場あっての振り付けである。
必ず舞台の左奥や右奥から対角線に沿って、斜め前に出てくる踊りがあるが( 御免なさい、名前が出てきません。教えてもらったと思うのですが………。)あれは間口が狭く、奥行きのあるあの舞台でなくては似合いません。
(日本の奥行が無く横に長いと、右、左に動いている、立体感のない動きになってしまう。)

オペラの引っ越し公演でもきっとそんなことに苦労するのだろうなと思う。


よく海外のオペラ劇場にオペラを見に行くというと、「わざわざ飛行機代をかけて行かずとも、同じ配役、プロダクションで日本にも来るじゃないの。いくら値段が高いと言っても飛行機代よりは安いでしょう」と言われます。


でも、それをいれるハコ ( 劇場 )と、観客はやはりかなり違っているのです。
それが総合的にかもし出すものがやはり違っているのです。


長い年月をかけて生まれてきたものなのでこればかりは真似のできないものです。
あの熱気と高揚感は全てで感じられるものではありませんが、たまたまそういったものに巡り合った時に思うのは、これは日本には無いなということなのです。

「そろそろ、出かけたいな」と心では思うのですが………。
「今年もまた無理だろうな………。」