昨日、帰ってきた時はもう午後10時をまわっていて、小雨が降っていました。
夕刊を開けるとアレッポの名前が目の中に入ってきました。

「シリア北部アレッポとその周辺での停戦を再確認したと発表した」とのニュース。
シリアの内戦やイスラム国など、近頃は戦争のニュースでばかりで登場する町。アレッポ。


確かにこの街を訪ねたことがあります。
まだ戦争の影が見えなかった頃のこと。

シリアは遺跡が多く残されている国でもあるのです。
相次ぐ 戦争でそれらが学術的に研究されないままになっているのです。
そのままになっているだけでなく、戦火にさらされ、文化遺産であるのに関わらず破壊されているのです。
何千年も風雨にさらされて残ってきたものも、一瞬にして形を無くしてしまう。それがどんなことを意味しているのか、歴史が証明して行ってくれるのでしょうか。


街の中心に、要塞の形をしたアレッポ城があり、そこへ通じる道が両側にびっしりと商店が立ち並んでいた市場、つまりスークでした。


イスラム圏の国々のスークは強烈な香辛料の匂いがします。


アレッポはまた、オリーブ石鹸の有名な土地でもありました。
四角い形に切られて、オリーブの薄いモスグリーンの色をした石鹸がうず高く積まれていました。



香辛料の匂いは生活の匂いでした。
平和の匂いがでもありました。
しかし、石鹸の匂いはどうだったのか、記憶がないのです。

スークのゆるい坂道を通り抜けると、突き当たりにアレッポ城がありました。
中世のヨーロッパの城にも見かけましたが、城へ通じる橋を渡った所の大きな門の上に、お鍋のようなものが設置されていて、グラグラ煮えた油を、敵が攻めてきた時に浴びせるのだと教えてもらいました。

内戦が始まり、そのスークが焼けてしまったというニュースが流れた時、あのゆったり流れていた時間は何処かに消えて、ただその逆境の時を耐えねばならない街の姿が浮かびました。

それからまだ、平和が訪れたニュースは入ってきません。
それどころか自爆テロや空爆の話が絶えません。

何故か、子どもの時から中東に心を惹かれ、行きたいという気持ちを持ち続け、その願いがかなった時は何とも言えない気持ちでした。

戦火が消え、落ち着いた時の流れるあの街の顔を取り戻してもらいたいと切に願っています。