「高尾」へ向かう中央線はいつもこの時期は、山ガールと呼ばれる人たちやハイキングへ行く家族連れ、お墓参りの人、などの行楽客が多い。

新緑の季節で、桐の花の藤色が美しい。



一年に一度、この連休の一日は必ず高尾の霊園に友達と行くことにしている。
かなり長い間そうしている。

高校時代に仲が良かった何人かの中で、笑顔の一番似合う、優しい人柄の彼女は、ある時.、ALS
と診断された。

なかなか仕事と日常生活の忙しさ、病院が遠いせいもあってお見舞いに行けなかったが、同級生に怒られるようにして一回病院を訪ねた。




彼女は昔と変わらない笑顔で、お話も明るい調子で、私の近況を聞くという形でたくさん笑ってくれました。
もう寝たり起きたりという動作はできなくなっていて、他人の介助が必要になっていたけれども、表情やお話はできる状態だったので、私は一生懸命に楽しい話をしました。

またの来訪を約束したのですが、なかなかお見舞いに行けずにおりました。

人口呼吸器をつけてもうお話が出来なくなったことを友達からの電話で知りました。
その時、「もう話はできないけれども耳で聴くことは出来るので、あなたの歌を聴きたいと言っているので、録音して送ってあげて」との伝言を受けました。


幾つかの歌のリクエストがあったのですが、その時私は喉の状態があまり良くなかったのでとてもそのリクエストに応えられる状態ではありませんでした。何とかしたいと心は焦っていたのですが、その約束は果たせないままになりました。


同じ選択の音楽の授業を受けたのか、合唱クラブの音楽会で聴いたことを思い出してくれたのかは定かではないのですが、聴きたいといってくれた希望を叶えることができなかったことが、未だ心に残っています。


その後、歌の先生の何人かにお世話になりながら、また、歌えるようになりました。
まだまだ歌い続けていこうと思っていますが、その時の気持ちだけは大切にしていきたいのです。