アメリカでの成功、そしてロックスターになることを夢見ていた世界の数多くのロックバンドが方向性を見失い、

焦り、

模索し、

戦い疲れ、燃え尽きて姿を消していった90年代初頭



スウェーデンのTREATも、そんなバンドのひとつでした。

「Would Of Promises」(1987年)

時代を感じるMVですね。

「Get You On The Run 」(1989年)





同じスウェーデンのヨーロッパが、

「THE FINAL COUNTDOWN」を80年代にアメリカで大ヒットさせ、世界的に有名になりましたが、あとに続く北欧のバンドがいなかった。


この時代はアメリカでの成功がステータスであり、世界中のミュージシャンはみんなそこに向かって頑張っていたように思う。


世界のロックシーンが劇的に変貌していった1992年に発表されたTREAT5枚目のアルバム「TREAT」

このアルバムで歌うはずだったバンド結成時からのオリジナルメンバーのヴォーカルロバートアーンルンドは、

アルバムの音楽的方向性に疑問を抱き、作品制作途中でバンドを脱退。


バンドは後任に、

ロバートとはまったくヴォーカルスタイルの違う男を選んだ。


スウェディシュエロティカ、

後にイングウェイマルムスティーンバンドでも歌うことになる、

「マッツレヴィン」なる男をヴォーカリストに迎え、5thアルバム「TREAT」(1992年)を完成させる。


「Watch Your Tongue」(1992年)



バンド名をアルバムタイトルにするのは、バンドが大事なターニングポイントにあることを意味し、

そしてメンバーの様々な思いが込められている。

’’また1からのスタート’’とゆう意味合いもあったのだろうか…?

…と当時は感じた。


過去作4作品と比べるとキーボードサウンドを抑え、

かなり男臭い音作りになっており、マッツレヴィンのザラザラしたワイルドな声質もあってか、かなり荒削りなロックンロールとゆう印象をうけた。


アメリカナイズされた曲がほとんどで、これは全く別のバンドではないのか? …とゆう錯覚すら感じる。


しかしこの作品が、

グランジやヘビーロックに変貌したわけではなかった。


TREATらしさを残していた。


TREATは、この時代のアメリカのバンドにはない独特な個性があり、

北欧のバンドらしい透明感のあるサウンドや哀愁ただようメロディーが特徴のハードロックバンドであった。


5thアルバム「TREAT」は変貌する90年代の世界のロックシーンの中で苦しみ、もがきながら発表されたのだろう。

当時、このアルバムの音を聴いて僕はそう思った。




しかし。




結果的に時代の波にのまれ、アルバムはヒットすることもなく。

たいした話題にもならず。


バンドは、

このアルバムの小規模なライブツアーを終えた頃…。



ひっそりと解散した。



世界はTREATのような音楽を求めてはいなかった。



目まぐるしく変化する音楽シーンの中、僕もTREATとゆうバンドが存在していたことすら忘れてしまっていた。


人間の記憶とゆうものは、

時として残酷。



しかし。



解散から約18年後の2010年。


オリジナルメンバーであるヴォーカリストのロバートアーンルンドが復帰しての再結成復活アルバムが突然発表された。


2010年

アルバム「Coup De Grace」


「A Life To Die For」(2010年)

「No Way without You」(2010年)

「We Own The Night」(2010年)

「All For Love」(2010年)



予兆はあったのだろうが、

僕からしてみれば突然のニューアルバム発表でした。

そして、

素晴らしいメロディーが詰め込まれた名盤に仕上がっていた。



そして2016年には、

アルバム「Ghost Of Graceland」

を発表。


「I Don't Miss The Misery」
(2016年)

「Nonstop Madness」(2016年)


2017年には、アルバムにともなう来日公演も実現した。
バンド単独ライブとしては27年ぶりの来日

27年は長い。


しかし、大阪東京の2公演のみ。
しかもどちらもキャパ700人ほどの小さな会場。

よく来てくれた!

大阪公演に行きましたが、素晴らしいライブでした。
アルバムからの新曲もかなり演奏していたことからも、まだまだ現在進行形のバンドなんだと感じました。

しかし。

必死に戦っていた90年代に制作した5thアルバムからは一曲も演奏されなかった。
予想はしていた。

バンドとしてはあのアルバムは過去の黒歴史なのか…?

ロバートは音楽的な方向性に疑問を抱き、あのアルバムには参加していなかったしね。


そして、2018年には
アルバム「TUNGUSKA」を発表。
さらに今年(2022年)4月にも、
アルバム「The Endgame」を発表した。


新曲を作らず、
過去の代表曲だけで今もライブ活動をしているバンドは世界にたくさん存在する。
TREATのように80年代のバンドが今も新譜を発表してライブ活動しているとゆう事実は嬉しいですが、そういったバンドは少ない。

しかし。
TREATのようなタイプの音楽をやるバンドがロックファンから無視され、
ダサいとゆう認識がはびこっていた90年代。
その時代に発表された5thアルバム「TREAT」は、必死に世界のロックシーンにしがみついていこうとゆう気迫のこもった意欲作であり、野心作であり、ハードロックヘビーメタルにおける名盤の一枚じゃないでょうか。

けっして失敗作ではない。