私が京大の学生だった30年前にも、中核派は元気に活動していました。
熊野寮の一部は、その頃から中核派の根城でしたよ。
それ以外は普通の学生が普通に使っていましたけど。
あの頃は、校内や通学路には中核派(そのほかの学生運動団体もありました)の
「アジ看板」
も設置されていました。
独特な字体を使うんですよね。
また、毎朝、サングラス、ヘルメットの学生運動家が校門で拡声器をつかってアジ演説をしていました。
それをサングラスをかけた公安当局が無線機で何か話しながら監視している、というのが、私の学生時代の「毎朝の光景」でした。
ときおり、「バリスト」(バリケードストライキ)と呼ばれる「授業妨害」もありました。
学生運動家が授業前の教室に乱入し、廊下に机や椅子を積み重ねて教授の入室を阻止してから、学生の前で「社会革命の必要性」を演説するんです。
うちのクラスでも一度ありました。
ある日、「中核派」のヘルメットをかぶり、サングラスをかけた学生運動家が授業前の教室になだれ込んできました。
お、これがバリストか!
学生運動家は手際よく廊下にバリケードを築き、入室できなくなった教授が戻っていくのを確認したあと、私たちの前で演説を始めました。
今の社会はくさっている!
今こそ革命が必要だ!
みたいなことを気持ちよさそうに叫んでいましたが、ノンポリ学生(思想的になにもない)である私たちは教室から出ることもできず、ぼーっと時間を過ごしていました。
当時はスマホも(それどころか携帯電話も)なかったため、ぼーっとするしかなかったんですよね。
しばらく聞くとも梨に聞いていた演説の最中、突然、クラスメイトの山本(だったと思う)が立ち上がり、
「そんな立派な思想をもっているのに、なんでヘルメットとサングラスなん?」
とのんきそうに発言しました。
それまで気持ちよさそうに演説していた運動家は、窓の外を指さし、
「公安当局に顔を見られると就職に影響がある。あいつらは卑怯なんだ!」
とこれまた気持ちよさそうに言い放ちました。
・・・え?就職?
と私が思うより早く、これまで退屈そうに座っていた同級生たちは一斉に息を吹き返し、学生運動家に大声で詰め寄りました。
「就職に影響?あんなに批判していた資本家に頼るのか!」
「くさったと言っていた社会の歯車を目指しているのか!」
「そんないい加減思想で、俺たちの時間を奪ったのか!」
さっきまで、「授業潰れてラッキーだな」ってみんな小声で話してなかったっけ?
でも、同級生たちの怒りはすさまじく、その後、「すみません・・」と小声で言いながら学生運動家が教室を出るまで、みんなの怒号は続きました。
出て行った後はすぐに大声はやみ、「次の授業なに?」「飯食いに行く?」みたいな、いつもの平和な教室に即時に戻りました。
心底、「こいつら、敵に回したくないな」と思いました。
ちなみに、山本は大阪で一流の弁護士となっています。