役職や肩書きを与えられた人がそれを「責任」と感じて「責任にふさわしい行動」をしようとするのか、役職や肩書きを「自分を大きく見せる装飾品」と考えて振る舞うのかによって、その人の価値が決まると信じています。
各都道府県には1つずつ(東京は3つ)、弁護士会があり、私が所属する大阪弁護士会にも「会長」と7名の「副会長」がいます。
いずれも1年任期で、ほとんどの方は「責任」を果たそうと奮闘されているのですが(いつもありがとうございます)、中には残念ながら「装飾品」と考えている人もいるようです。
僕が弁護士になって数年しか経っていない頃でした。
先輩弁護士ともに交通事故の事件を担当しましたが、相手の代理人が当時大阪弁護士会副会長のA弁護士でした。
A弁護士は50代後半くらいだったでしょうか。
ことあるごとに駆け出しの弁護士の私を小馬鹿にするような態度をとるA弁護士に、違和感を覚えていました。
というのも、A弁護士が裁判所に準備書面(自分たちの主張をまとめた書面)を提出するたびに、「どうだ、こちらの主張は正しいだろう、おまえに反論できないだろう」という態度だったからです。
(きちんと反論しましたが。)
裁判も最終段階になり、事故当事者である原告と被告の本人尋問となりました。
本人尋問とは原告と被告にする証人尋問だと思って下さい。
A弁護士の尋問はひどいものでした。
そこでしっかり対応させていただきました。
A弁護士「あたなはそのとき・・・としたんですよね?」
嵩原「異議あり、誘導尋問です」
裁判官「異議を認めます。質問を変えて下さい。」
A弁護士「もし君がこちらの本人ならあなたの態度をけしからんと思うだろう?」
嵩原「異議あり、意見を求めるものです」
裁判官「異議を認めます。質問を変えて下さい。」
A弁護士「もう一度聞くけど、あなたは・・・」
嵩原「異議あり!質問が重複しています」
裁判官「異議を認めます。質問を変えて下さい。」
A弁護士「君はなぜ嘘をつくんだ!」
嵩原「異議あり、本人を侮辱する尋問です!」
裁判官「異議を認めます。質問を変えて下さい。」
こんなことを何度も繰り返していると、ついにA弁護士は私に指を指して、大声で言いました。
「尋問の邪魔をするな!俺は副会長のAだぞ!」
「異議あり!代理人を侮辱する不当な尋問です!」
「異議を認めます。A代理人は発言に気をつけて下さい。」
裁判官は静かに、しかし怒気をはらんだ声で言ったのでした。
皆さん意外に思うかもしれませんが、民事事件の場合「異議あり」はあまり言わない弁護士が多いのです。
なので、私の「異議あり!」は、A弁護士はあまり経験がなかったのかプライドをいたく傷つけられたようです。
裁判官に強く注意されたA弁護士はふてくされた態度で尋問をやめました。
当然、こちらの勝利。
これからしばらくは「なんだ副会長って!」と完全に思っていました、
その後、周りの立派な先生方が副会長になって走り回っている姿をみて、完全に考えを変えましたが。(特に昨年度は本当にありがとうございました)
それから10年ほど経った後にもB弁護士に「私は副会長よ!」と言われる事案が発生したのですが、また機会があれば。
