※アプリ『漢字ナンクロ』の画像は許可を得て掲載しています。


【第六感】
【傷病】
【序列】
【統一】
【統治】
【安寧秩序】
【感傷】
【保全】
【安全第一】
【病人】

※以上の熟語を全て使った手紙形式の短編小説。

・・・ ・・・ ・・・


​前略
歩さんの活動をサポートしてくれる同志に巡り合ったとのこと。
前向きなお二人の姿を想像すると私もとても嬉しく、これからも仲良く助け合っていくことを願っています。
だけど、ご自分が妻帯者であることを忘れないで。あなたのちょっとした油断が奥様の【第六感】に引っかかって、妙な誤解を与えないように気をつけてくださいね。
​教員時代を振り返ると、日々の授業のほかに、生徒間のトラブルや【傷病】への対応に頭を悩ませ、PTAから持ち込まれる難題に対処する毎日でした。
職員会議一つとっても、そこには当然のように男社会の【序列】があり、女性であるがゆえの悲しい現実に直面したものです。
教育委員会と教職員組合による労働条件の交渉会議にしても、現場で直接、給与や勤務時間を決定できるわけではありません。交渉結果を踏まえて自治体の首長に条例を勧告する、という手続きを踏むのです。
これには根深い歴史的背景があり、国の方針に組合側が激しく反対運動を展開し、鋭く対立する時代が長く続きました。
「現代は、教育委員会が学校の環境を定め、組合が現場の声を代弁してそのブレーキ役を担っている」というのは綺麗事で、私には今なお、国による目に見えない思想【統一】が行われていると思えてならないのです。
しかし、「一定のルールに基づき、【統治】の名の下に国家や組織の【安寧秩序】を維持するためだ」と言われてしまえば、現場の一教師としては返す言葉も見つかりませんでした。
……おっと、教師を「卒業」した身でありながら、つい昔の【感傷】に浸りすぎてしまいましたね。
​今回の、真理子の幼稚園探しとあの山火事を通じて、私は「環境【保全】」の大切さを痛烈に感じています。
子供を預けてでも働かなければならない親がこれほどいるのに、受け入れる社会環境が整っていない。これでは少子高齢化が進むのも無理はありません。
山火事にしても、山林に人が手を加えず放置されていたことが被害を広げたと聞きました。
真の「環境保全」とは、単に何もしないで放置することではないはずです。
幸い、幼稚園はやっと見つかり、真理子も喜んで通園しています。病院に併設されている園なので、子供たちの【安全第一】を徹底しつつ、お年寄りや【病人】の方々とも自然に触れ合える温かい場所です。その素晴らしい教育方針に賛同し、ここに決めました。
その入園手続きの前に、今まで夫婦別姓だったのを主人の姓「齋藤」に変更しましたのでお知らせします。
​今夜は珍しく、主人が午前様にならずに帰ってきましたので、そろそろペンを置くことにします。

​歩さんへ
   姉・齋藤遥香より
P.S. その後、洋美さんから連絡はありましたか? ウクライナにいらっしゃるとのこと、ニュースを見るたびに心配でなりません。


・・・・・・・ ・・・

(第8章)へ続く