ある雨の日のこと、老師が部屋から、「なんぞ持ってこい」と呼ぶ声がしました。「また雨漏りだ、早く何か持っていけ」と僧たちが騒いでいると、一人の僧がざるを持って飛んで行きました。すると、「これだ、これだ、よく持ってきた」と上機嫌でほめているところへ、もう一人の僧が桶を探して持ってきました。すると、「バカ者!そんなものが役に立つか!」と烈火のごとく叱りとばされたのです。
普通ならば桶ですが、そこは禅の修行です。雨漏りだから桶だと考えて行動する分別があったから駄目なんです。師匠からもってこいと言われたら、ざるでも桶でも何でもいいのです。「オーイ」と呼ばれたら「ハイ」と返事する。そこには一分の隙もない無心のおしえです。これこそ師匠と弟子との啐啄同時です。
