久しぶりに読み聞かせに行きました。
何冊か持って行った本のうち、私は「水仙月の四日」という宮沢賢治の本を読みました。
このお話に出てくる、雪童子(ゆきわらす)が愛おしくて、いつまでも絵本をながめていたくなります。
私はいつも、2月に行った岩手の雪原や白い山々、真っ青に凍った空、吹雪、きらきら輝くダイヤモンドダストの話をして、石花石膏・・・お話に出てくるような鉱物を見たいと言う子に見せてあげます。
賢治を好きになって、鉱物も大好きになりました。
他に、雪山のお話や冬のお菓子の話をして、あとは自由にしています。
私が絵本を読んでいると、小さな男の子が隣にすとんと座りました。
どうしたの?と目できいて、にこっと笑うと、男の子がぼそぼそと最近読んで気に入った本の話をしてくれると言います。
うれしい、ありがとう、と言いました。
思わず笑顔になりました。
男の子は、口を開きかけて、また閉じてしまいました。
なかなか言葉が出てきません。
でも、眼球があっちこっちと動いて、頭が小さくゆれたり、かすかにうなづいたりしています。
唇はちょっとすぼまったり、きゅっとむすんだり。
広角がほんの少し上がったり、また一文字に結ばれたりしています。
言葉は無いけれど、この子は、今、語っているんだなぁ・・・。
この子の心の中で、大好きな物語が展開しているみたい。
言葉は無かったけれど、もう、この子の心の声はあふれていました。
声無き声に耳を傾けると、この子の、聞かせてあげるよ、おばちゃん、ぼくの大好きなお話だよ、という思いが、体で伝わってくるような気がしました。
心の中は一生懸命なんだろうなぁ・・・。
子どもの体温がぽわっと上がっているような感じがしました。
ゆっくりゆっくりでいいよ。
この子の言葉がこぼれ落ちてくるまで、そばにいようと思いました。
やがて、男の子は、たどたどしく語り出しました。
一生懸命話してくれます。
うん。私も一生懸命聴くよ。
それは、竜と男の子の冒険のお話でした。
男の子は、登場人物のように、竜の背で風を感じ、自由に世界を飛び回っていました。
言葉は無くても、竜と男の子は心通じ合えたのです。
そして、いっしょに世界を変えるような冒険をして、本当の自分を見つけたのです。
物語の世界にダイブして、深く深く潜っていって、その世界に浸っていろいろな体験をしてきたんだね。
すごいね。それってすごいことだと思うよ。
それにね、とっても素敵なことだと思うよ。
いいなぁ・・・。楽しかった?
こっくり。にっこり。
喜びや悲しみ、怒り、苦しみ、生老病死、夢、愛、冒険、家族の問題、友人関係、さまざまなテーマの物語の本がたくさん並んでいます。
子どもが、本を手に取って読み始めると、その子の抱えている問題が、読んだ本の世界を通して伝わってくることがあります。
何もできないし、何かをする立場でもありません。
でも、直接心に踏み込まなくても、何も聞かなくても、物語の世界を共有することで、ただそれだけでお互いに満たされることがあります。
これも、本の力。物語の力なんだろうな・・・と、胸がいっぱいになることがあります。
そういえば、竜の物語のタイトルも作者名も聞かなかったし、男の子も言いませんでした。
きっと、男の子の心の中で紡ぎ直された物語だったのでしょう。
あの男の子は、なんとなくですが、何かと向き合う決意をしたような・・・そんな気がします。
またいつか会えるでしょうか。
一期一会。
あの男の子に、心からありがとう。
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最後まで読んでくださってありがとうございます。