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ある日 小さなやどかりは
自分の声を あわの中に閉じ込めてみました
あの日 大きな大きな岩の下に 小さなやどかりを押し込んで
自分の体でおおいかぶさってくれた やどかりのお母さん
海が凪いだときにはもう 小さなやどかりのそばにはいませんでした
小さなやどかりは いっしょうけんめい
今までで 一番大きなあわを作りました
そして せいいっぱいの声をあわの中に閉じ込めました。
(おかあちゃん!!!!)
やどかりのあわは 月の光にきらめいて 潮の流れにゆれて
ふわりふわりと 遠ざかっていきました
やどかりは いっしょうけんめい 追いかけました
でも あわは どんどん遠くへ
ちりん ちりんと 鈴のようにふるえながら流れていきました
やどかりは 小さな足をむちゅうで動かしました
小さな石や貝殻のかけらにつまづいて
なんどもころびました
海の底に顔を出していた岩にぶつかって
小さなはさみは 少し欠けてしまいました
(おかあちゃん)
あわに閉じ込めた自分の声が 泣いているように聞こえました
やどかりは 追いかけ続けながら 胸の中で叫んでいました
おかあちゃん!
おかあちゃん!
おかあちゃん!
きれいな海なのに いくらはさみで顔をぬぐっても
目の前がぼやけてしまいます
・・・気がつくと 海の色が変わっていました
冷たく早い潮の流れが やどかりを飲みこみそうに渦巻いていました
小さなやどかりには もう潮の中を追いかけることができませんでした
それでもやどかりは ただずっと 見つめていました
遠く 遠くの自分のあわが
見えなくなるまで・・・
その先まで・・・
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その夜
小さなやどかりは夢を見ました
自分があわの中に入って ゆらゆら海をただよっていく夢でした
さがして さがして さがして・・・
目が覚めると やっぱりやどかりは 岩かげに独りでした
でも ここで待っていよう
きっと戻ってきてくれる
やどかりは 空を見上げました
空には お月様と 小さな赤い星がよりそっていました
しずかな夜
かすかな光
やどかりはもう一度目を閉じました
(ぼくのあわは おかあちゃんに あえたのかな・・・)
(ぼくも ゆめであえるかもしれない・・・)
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小さなやどかりは今日も
かすかな声を あわにくるんで 潮の流れにのせていました
(・・・ちゃん)
(・・・ちゃん)
逢えるといいね
逢えるといいね
逢えるといいね
みんなのおかあちゃんと・・・
そうつぶやきながら
この2枚の写真は、娘が撮ってくれたものです。
いつも私の最初の読者は娘で、いつもシビアな感想をくれるのも娘です。
でも、まあまあほめてもくれます。
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お話はずっと、胸の中にありました。
でも、韓国での船舶遭難事故を知った日、胸の中が大嵐になりました。
やどかりゆづといっしょに、私のお話もころころ波間をころがされて、こうして記事に出てきました。
ニュースを見るたびに、深い悲しみと怒り、どうしようもないやるせない苦しみが画面から伝わってきて、立っていられないくらいの痛みを感じます。
犠牲になられた方々の多くが、修学旅行中の高校生だったことを思うと、胸が張り裂けそうです。
でも、見なければいいと言われても、なぜか報道を追ってしまうのです。
画面を見ながら祈った方が、なんだか少しでも届くような気がして・・・。
本当は、どこで何に向かって祈っても同じだと思うのですが・・・。
テレビ画面に向かって、祈っている私です。
事故後、何日か過ぎた日、報道でこのお話を知りました。
ある男子生徒さんが、船の中からお母さんに送ったメールです。
『お母さん、もう言えないかもしれないから送っておく。愛してる。』
お母さんは、その時まだ、事故の発生を知りませんでした。
そして、こう返信しました。
『何?メールは送るなと言ったのに。私も愛している』
どれだけの気持ちで、お母さんにメールをしたのだろう・・・。
お母さんからの返信を、どんな気持ちで読んだのだろう・・・。
涙が止まりませんでした。
毎日祈っています。
思いをうまく言葉にはできませんが・・・。
でも、毎日祈っています。
もともとは、東北を思って心に生まれたお話ですが、韓国の事故関係者の方々へのお祈りをしているうちに、お話はこうして文字になりました。
ベタでつたなくて、ありきたりなお話で、そんなの自分が一番よくわかっていて恥ずかしいのですが、私の祈りの気持ちです。東北と韓国へと、ふたつの祈りの気持ちです。
犠牲になられた方々、救助された方々、ご家族ご友人の皆様、今も捜索活動に関わられている方々、多くの方々に祈りを・・・。
祈ることしかできません。
私の記事やお話や表現で、不快な思いをされた方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。
この時期に、こんな記事をあげることをだいぶん考えましたが、私なりの祈りと願いです。
どうぞお許しくださいませ。
命のともし火がまだ潰えていない方がいらっしゃるならば、どうか奇跡が起きますように。
亡くなられた方の魂が天にのぼり、輪廻の輪に入り、いつか愛しい人と巡り合えますように。
どうかみなさまの心に、かすかでも安寧な時が訪れますように。
いつか少しでも悲しみが癒えますように。
ずっと祈っています。
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ゆづ友さんのKさん、やどかりさんを心に届けてくださって、ありがとうございました。
このお話のつづきは、私の心の中で綴っていきたいと思います。
つたないお話を最後まで読んでくださったみなさん、ありがとうございました。

