私は布の頭巾で頭髪を隠し、裸足でゴールデン・テンプルに向かった。
正門入口に到着すると、折り目正しい黄色のターバンを巻き、立派なひげを蓄えた背の高い美青年が槍を持って立っていた。その先では、大理石に敷かれた絨毯の上で老人がひざまずいている。「アムリタ・サラス(不老不死の池)」と呼ばれる人口池の上に建つゴールデン・テンプルに向かって祈りを捧げているのだ。
中へ入ると、長方形の大きな人口池を白い大理石の歩廊が囲み、さらにその歩廊を白い寺院やその下の回廊が外壁となって囲んでいた。
出入口が東西南北の四方にあるのは、シーク教が外国人や異教徒を含めた万民に開放された宗教であることを象徴しているためだった。
巡礼者の後について池を囲む白い回廊を左回りで歩いていくと、池の片隅でシーク教徒たちが沐浴をしていた。ターバンとパンツを着けた以外は裸であるため、毛深く逞しい体が露に見える。
私も服を脱ぎ、鯉が泳ぐエメラルドグリーンの水に身を浸した。
足下の階段はぬるっとしており、三段下りると胸元までの深さとなった。その先は柵があり進めない。大勢のシーク教徒からの視線を感じながら、私は不老不死を願ってこの池に身を沈めた。
ゴールデン・テンプルの入口は沐浴場と反対側にあった。
無償の食事が配られる横で、頭に被りを付けた信徒と観光客は、赤いカーペットが敷かれた池上の歩廊で大行列になって並んでいた。
ようやく寺院の中に入ると、グルの顔写真や偶像はなく、グル・グラント・サーヒブがご神体となっていた。百科事典よりも大きい聖典が、豪華絢爛な刺繍がほどこされた布に被って本堂の中央に置かれていた。聖典の隣ではタブラとハルモニウム(床置オルガン)の使い手が聖歌を演奏している。巡礼者は聖典に向かって頭を床に付けた後も、屋上まで続く階段に腰を下ろし、演奏に合わせて祈りを捧げていた。