30代前半からお世話になった…
素晴らしく頭の回転が速く、どんな質問にもよどみなく早口で含蓄の深い答えを返し、気心が知れてくると、ざっくばらんに楽しいおしゃべりもしてくれた。
月に1度、ススキノの「牛の松坂」で上質な肉とマルゴーワインをたらふくご馳走になった。
ワインが好きで、ある時は3~4本のマルゴーを平らげ3~40万の破天荒な夕食を共にしたこともあった。
いつも食事中はお抱えの運転手がビルの下で待っていた。
別れ際には僕に財布を渡し「後は好きに飲んで行きなさい」…まるで危ないあちらの筋の話のようだった。
勿論、翌朝会社で空の財布を持ち「おやじッ昨日は有り難うございました」…
財務に強い経営者だったが、常に「成果主義」を曲げない気骨さが僕は好きだった…
短い期間で会社は1部上場を果たし、実に豪快で且つ優秀な経営者だった。
享年84歳…
今日がお通夜だった。
なんとしても駆けつけねばならない恩人の…
しかし僕は今、東京にいる…
明朝、中国に出張する。
戻ったら、いのいちに手を合わせに参上したい…
おやじとの出会いは、僕の分岐点でもあったように思う。
5年くらい前に、当時の思いを記したブログがあった…
この喫茶店の、この席に22年ぶりに座っている…
当時、喫茶店の数は多く、何処もそこそこ賑わっていた
しかし今ではその数も減り、ここ「○○珈琲館」も超有名店になっていた
煉瓦造りの洋館で、都会の中でも異文化なセンスを感じさせた…
この空間だけが、静かな時間がゆっくりと進む…
ここで何を思い、どんな事を夢みていたんだろう…
それまで勤めた会社を辞め、都会のこの街に越して来た。
同じ業態で、それまでとは比較にならない大きな会社に籍を移した。
条件も良く、「野心」も強かった…
慣れ親しんだ街を捨て、たった一人でこの街にやって来た。
初めて「自分で自分の人生を変えた」ような気がする…
今思えば、きっと若い自分の中で「不安」も大きかったんだろうと思う。
仕事を終えると毎日この席で、「昂る気持ち」を押さえるかの様に本を読み漁った…
あれから22年…
あの時の選択は正しかったンだろうか?
後悔はしていないが この席に座っていなければ、今とは違った「平穏で静かな人生」を送っていたんだと思う。
大好きな「アールグレイの紅茶」を口に含むたび、当時の辛かったことや、夢に向かった若かった自分が走馬灯のごとく甦る。
ここは何も変わっていない…
ここだけは、昔のままだ…
時間が止まったままだ…
そこに、ただ歳をかさねただけの自分が座っている…
もう人生に迷うことも無いだろうが、夢をいっぱい抱えた「生意気な若者」を思い出したくなったら又、ここに来よう。
2013,03…
この時の僕を導いてくれた…
おやじ…有り難うございました。
そして、お疲れ様でした…
どうか安らかにお眠りください。
僕はもう少し頑張ります…