将棋のタイトル戦、叡王戦の番勝負最終局が昨日あって、挑戦者の伊藤匠が絶対王者の藤井聡太を破った。

これで五番勝負は伊藤の3勝2敗になって、八つある将棋タイトルのうちのひとつを藤井からもぎ取った。


というのがニュースになっている。

小学生時代に藤井聡太を負かした男として有名だった伊藤匠だが、その後は同い年の藤井におよそ3年遅れでプロ入りすることになった。

それでもプロ棋士としては十分に早いわけであるが。


対局後のインタビューで「藤井さんがいたから強くなれた」と、いつもの低いボソボソ声で答えていた。

これはお世辞でもなんでもなくて、心の底からの本音のように聞こえた。


将棋の世界はAI研究による日進月歩で、勝つためには毎日地道な積み重ねが欠かせない。

いくら好きな将棋とはいえ、その地道な作業には時に息の詰まるようなストレスも感じるのではないかと想像する。

そこをなんとかがんばり抜くには少し向こうに明確な目標物があった方が力が出るのだろうと思う。


しかしこれは同じことが藤井聡太の方にも言えるような気がする。

254日前に全冠を制覇して以降、もっぱらタイトルを守る立場になった藤井聡太の方は、この254日間ずっとそもそも前を目指す目標物がない状況だった。

タイトル戦の連続で疲れもあったという意見もあるが、その疲れの正体は前を目指すことの難しいその状況にあったのではないかと思う。


それが今回、叡王タイトルが目標物のひとつに戻った。

小学生以来の同い年のライバルが、タイトルホルダーになって本当の意味でのライバルになった。

このことでかえって藤井七冠のメンタルに良い刺激が入るような気がする。


とりあえず、将棋界のためにもタイトル奪取した伊藤匠にとっても、新たな目標のできた藤井聡太にとっても、全方位的に今回のタイトル奪取劇は良かったと思った。




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