全国の医療機関で勤める医師が2010~14年度で、虐待の疑いがあると判断した子供の死亡154件のうち、捜査機関が起訴したのは13件と約8%であることが厚生労働省の調査でわかった。

再発防止に向け、法律で義務付けられた都道府県・政令市による検証も6件しかなかった。

「各機関が断片的な情報を持っているだけでは多くの虐待死が埋もれてしまう」として、医療機関と司法・行政の3者による情報共有をすすめるような制度を整備するよう求めた。

 

全国962の医療機関を対象に調査をすると、371施設から病院内で死亡が確認された子供のうち医師が虐待死を疑ったのは以下のとおりである。

 

虐待死が疑われたのは154件、うち0歳児101件。このうち「乳幼児揺さぶられ症候群」が疑われる脳内出血や体への複数のあざなど、医学的に虐待の説明がつかず、医師が「確定的」と判断したのが42件あって、「可能性が大きい」が39件、疑いが残るが73件だった。

154件のうち、医療機関から警察に通報されなかったのは16件、通報されても起訴となったのは13件になった。

 

調査では司法解剖された58件のうち、死亡時に子供を診た医師と解剖を担当した法医学者が解剖前後で情報交換せていなかったのが40件もあった。医師が警察側から解剖自体も知らされていないことも41件あった。

起訴率が低い要因について、児童虐待は密室性が高く、親が認めない場合は立件が難しいとされてきたが、関係機関の情報共有が進まず、有効活用されなかった可能性もある。

 

一方、医療機関から児童相談所へ通報されたのは62件、児童虐待防止法は児童相談所を設置する都道府県・政令市が虐待死を把握した場合、再発防止のため検証を義務付けているが、行ったのは6件だけだった。

 

医療機関側が不確定な通報をためらっているとみられる背景は、検証の意義を十分理解していない。「行政も医療機関と連携し、虐待の可能性があれば積極的に検証すべきだ」。

厚労省虐待防止対策室は「事案を把握する手法や方策」を検討したいとしている。

 

「全事例の検証必要」

 

米国や英国では、虐待死や事故死を見逃さないよう、子供の全死亡事例を病院や警察・福祉機関が情報を共有し、原因などを検証できる「子供の死亡登録・検証制度」を整備、日本にも導入しようと、内閣府などに要望書を提出している。

 

厚労省の専門委員会も、今年3月の報告書で「従来の死亡事例検証では、虐待死を見逃している可能性を否定できず、子供の全死亡事例を検証できる制度が必要」と指摘。具体的には、地域内で関係機関が活用する、施策向上のため全国の情報を集約して国が活用する。

2種類のデータベースを構築などを「直ちに実施」すべきと提言。

 

誤飲や転落など子供の事故死では、今年度から消費者庁や警察庁、厚労省など8省庁と内閣府が連絡会議を発足するが、虐待死ではまだ取り組みはないのが現状である。