「三菱自動車がアライアンスファミリーの新たな一員となる。信頼を回復し新たなビジネスチャンスをつかむ」。日産自動車のカルロス・ゴーン社長は、5月12日の会見で自身満々だった。
軽自動車の燃費偽装問題に揺れる三菱自動車に対して、日産は2373億円を出資し、事実上傘下に収める。10月に予定する三菱自の第三者割当増資を日産が引き受けて、三菱自株の34%を取得、三菱グループを上回る筆頭株主に成る見込みだ。
日産と三菱自は、2011年に軽自動車の共同開発を行う合弁会社を立ち上げ、三菱自が生産する車両を2013年から両ブランドで販売してきた。不祥事発覚からおよそ3週間。全容解明が進まない中で、日産は火中の栗を拾う形で三菱自の救済に乗り出す。
追い詰められた三菱自動車
リコール隠しで、2000年代に二度の経営危機に瀕した三菱自が三度、窮地に陥っている。
軽自動車「ekワゴン」「ekスペース」と、日産向けに供給する「ディズ」「ディズルークス」の4車種について燃費データを改ざんし、実際より最大15%良い燃費を届け出ていることがわかった。きっかけは日産からの指摘。現行車種までは三菱自が開発を担ったが、次期モデルから開発する日産が現行車を測定した際、説明できないデータの乖離を見つけたという。
調査の過程では別の法令違反も浮上した。1991年以降、燃費を測定するためのデータを測る際、国内の道路運送車両法で規定される惰行法法ではなく、米国で使われる高速惰行法を採用、惰行法で測定していたのは僅かな車種にとどまった。四半世紀も法令違反を続けたことに成る。
三菱自は2014年に懸案だった優先株を買い戻しで処理。2016年3月期末で自己資本比率48%.約4800億円の現預金を持つ、即座に資金繰りに窮するわけではない。
が、4月20日以降、三菱自は当該軽の生産・販売を中止したこともあり、4月の軽販売は前年同月比の55%に激減した。今後も販売再開のメドは立っておらず、たとえ再開できたとしてもブランドイメージは毀損している。「私どもで信頼を取り戻すのは困難だ」
さらに軽以外にも疑惑が広がったことで、国内乗用車メーカ最下位でわずか10万台の国内販売は、大幅減は確実だ。販売台数の9割以上がアジアを中心とする海外で、国内依存度は低いとはいえ、母国市場の撤退となれば、経営へのダメージは大きい。
また三菱自の生産は国内が55%を占めている。国内最大の生産拠点である水島製作所(倉敷市)は日産への供給分が大半、今後を見据えると、日産から切り捨てられるわけにはいかなかった。
軽とアジアが欲しかった日産
日産にも三菱自を見捨てられない事情がある。一つには軽が今や国内販売には欠かせない存在である。
「ディズ」と「ディズルークス」は日産の国内販売全体の約4分のいち1を占める。4月の日産の軽販売は前年同期から半減以下まで落ち込んだ。不正の影響はむしろ日産のほうが深刻とも言える。
軽の次期モデルでは日産が開発を担当するものの、生産は引き続き三菱自の水島製作所の計画だった。軽に求められる低コスト生産のノウハウは三菱自が優れている。三菱自を見きった場合、自社で軽の生産に乗り出すか、他のパートナーを探すしかない。
もうひとつが日系他社に比べて伸び悩んでいる東南アジア市場の開拓だ。
タイやインドネシアではSUV(スポーツ多目的車)「パジェロ」やピックアップトラック「トライトン」を擁する三菱自の人気は根強い。それを日産が取り込めば、東南アジアの勢力図は一変する。
しかし、問題全容解明が遅々として進まない中、資本提携を急ぐことに疑問を呈する声も強い。「日産が三菱自を救済することに違和感はないが、不正問題が何処まで拡大するか読めない段階では」、時期尚早で意外感がある。
これに対して会見では両トップとも、「2011年の合弁会社設立から提携拡大を話し合っていた」と口をそろえる。
仏ルノーのトップも兼ねているゴーン社長はかねてから、「自動車業界はスケールメリットが重要」と、世界ビック3入りを目指してきた。
狙うは世界ビック3の一角
自動車業界の熾烈な競争で勝つには、環境対応や自動運転のための巨額投資が必要で、規模拡大が必須とゴーン社長は信じている。2015年の日産ルノーの世界販売台数は世界4位。三菱自を加えれば上位3位に肉薄する。
順位ではなく、安全性にも注意して欲しいと思いますね。リコールも多いと感じるのですが!