エジプト・トルコ旅行から帰ってきて 酷い時差ボケや風邪などの体調不良から どうにか回復してきたので また ぼちぼちと ブログを再開します。

前回は 自分のビジネスモデルを確認する第一歩として ”お客様は誰か”ということについて述べました。

皆さま方は 色々なビジネスの形態に関わっていると思いますが 私が関わってきた ITサービスのビジネスは基本的に B-T-B のビジネスです。 これは、自分のお客様にも お客様がいるということです。 私が行った研修では これを”お客様のお客様”と呼びましたが、そもそも ”自分のお客様は、お客様のお客様のお困りになっていることを解決するために 何らかの施策を立て 実行しようとしておられて、そのために 自分に何らかの役割を果たすことを期待して依頼をされている。” ということだと思います。

ただ、これは 論理的には正しいとしても 多くの問題点があります。

まず、”お客様のお客様は困っていることを認識しているか”、”お客様のお客様は問題点を認識しているか”、”お客様は、自分のお客様が誰かをはっきりと正しく認識しているか”、”お客様は 自分のお客様の課題を解決するのが自分の仕事だと認識しているか”、”お客様は 自分のお客様と 課題の解決について コミュニケーションできているか、また解決のベクトルや実行について何らかの合意ができているか”、などについて ほとんどの場合 曖昧なまま放置された状況で 色々な施策が実行されています。     その結果は それぞれが 自分の都合のよい解釈をして施策を実行することから、多くの不整合が発生し 終わりの見えない修正を繰り返し 膨大な無駄が発生します。 最悪の場合は、施策そのものが 未完成のまま 放置されるようなことも生じます。

ITサービスにおいても 最近 要求開発やBABOKなど 上流のステークホルダーを 抑える重要性が議論されるのも 同様な理由からですが、私が知る限り ”お客様のお客様の要求” を 論理的に詰めることについて記述されたものは見かけません。

”自分のビジネスモデル”の源流がここにあるわけですから、これについては もっと真剣に研究されるべきだと思っています。

次に もっと大きな問題として、仮に お客様のお客様”が 自分の課題を認識したとしても それが 決して 解決しようという機運には繋がっていないということです。 日本の会社の構造から、”お客様のお客様”は 企業における 上流部門・上層部、外部では大手企業の場合が多いのですが これらに所属している人たちは 自分が問題を解決する当事者だという認識は 通常 持っていません。 彼らは どちらかというと 金を出してベンダーに解決させるのが 自分の仕事だと思っていて、課題の定義から解決のベクトル、実行までほとんどをお客様に丸投げしているケースを多く見かけます。

お客様も また 自分では解決しにくい部分や 面倒な部分、コスト的に難しい部分を 実行内容が不明確なまま あなたに 丸投げしてきます。

そのような 環境の中で ”お客様” そして ”お客様のお客様” に ご満足いただけるように ”自分のビジネスモデル” を 構築していかなくてはならないわけです。

”本当のお客様は誰なのか” ということを決めるのは ”自分のビジネスモデルは何か” ということの 根源的な問題ですから 当然 自己責任なのですが あまり深く考えられていないケースが 多く見られます。

ここで 私は ”本当の お客様は 誰であるべきか” ということは、越権行為なので いたしませんが、深く考えるための ファシリテーションを行います。

まず、”そもそも 会社は この仕事で 何をやりたいのか”ということを 質問します。

前回もお話したように 選抜組ですから ”中国工場の在庫管理のシステムを作りたい。” などという 馬鹿な答えは返ってきません。 突き詰めて考えてもらうと、自然に 次のような答えになってきます。

それは、”コスト削減の観点から、白物家電の生産を中国に移転し、中国工場が生産のメインになるが、今までの中国工場の生産効率や管理基準では メイン工場としての役割を果たせない。成熟した日本の白物家電工場の管理システムを参考にして、中国工場の状況に合わせた形で ビジネス・プロセスを構築したい。”というようなものです。

ここでの キーワードは、””日本の管理システムを参考にして”、”中国工場の状況に合わせたビジネス・プロセス” ということです。

日本の場合、ビジネス・プロセスは 長い歴史もあり 様々な部門の能力を最大限活用できるような形になっていることが多く、また それは 多くの暗黙知で支えられています。 それをサポートする管理システムは、暗黙知であるプロセスを前提条件として構築されているため、例外処理についても ITシステムによって 十分 カバーされていなくても 機能するような形になっています。

しかし、中国では 日本のような暗黙知があるわけではなく(むしろ、違う形での 中国独自の暗黙知がある可能性が高い)、ビジネス・プロセス自体が 日本と異なる場合が 多々 あると考えざるを得ません。

そのため、日本の管理システムは参考になったとしても、”それをベースにして、ITシステムを作る。”ということとは かなり かけ離れていると考えるのが 妥当でしょう。

”中国工場の状況に合わせたビジネス・プロセスの構築”が 主な 命題であり、決して ITシステムだけで解決することではないのです。

次の質問は、”それでは 会社の中で その仕事のオーナーは誰ですか” というものです。

答えは、かなり明白で ”白物家電の工場移転チーム” という答えにならざるを得ません。

”白物家電のITグループ”、”ソリューション・グループ”、”メインPM”,”関連アプリケーションの開発チーム”などは、パートナーという位置付けで 協働して お客様である ”白物家電の工場移転チーム”が、中国工場でのビジネス・プロセスを構築し、何をITで、何をIT以外のプロセスで、とりあえずどこまでやるのか、今後 どうするのかを 確定し、サポートしていく必要があるわけです。

決して、言われたことだけを ITで構築することではないのです。

ここまで来ると、ほとんどの方が 自分が今まで考えていたお客様、自分のビジネス・モデルは違うのではないかと思い始めます。 ただ、そうはいっても 今まで ”白物家電の工場移転チーム”とは 話もしたことはないし、他の協働メンバーとも 上下関係という認識はあっても、協働してチームとして お客様をサポートするという意識が醸成されているとは とても思えません。

”じゃ 何を どこからやるのか。 どこまで やるのか。” ということを 他人(講師である私や、他の受講者)に 論理だてて説明することが 求められてきます。

MBAのような研修では、事例をもとに議論を進めますが、これは 所詮 他人事です。 評論家的に、自分の思うことを やったり 言ったりするわけですから、ワークロードとしては きつくても プレッシャーはかかりません。

ところが、この場合は、自分のことですから 逃げ場がないわけです。

自分のお客様、自分のビジネス・モデルを 他人に 論理的に説明するのは 結構 大変なことです。


来週から、エジプト・トルコに 15日間ほど 旅行しますので、次回のアップデートは 5月の中頃になると思います。

前回のケースで、アプリケーション開発リーダーである貴方に、”お客様は誰か”と質問すると、多くの場合 ”白物家電のITグループ” という答えが返ってきます。

私は、それが間違っているとか、正しいとかいうことは 決して言いません。 誰をお客様に設定するのかは その人の仕事観・人生観に関わるものであり、他人が とやかく言うものではないと思っています。

私がやるのは 分析を深めるための質問でありファシリテーションです。

この場合、まず私は ”お客様である白物家電のITグループとは、どれぐらい頻繁にコミュニケーションを取っていますか。 彼らが困っていることは何ですか。 それは、彼らと確認できていますか。 貴方のやっていることは、その解決とどのように繋がっていますか。”と質問します。 前回、書いたように 白物家電グループとは 全くと言ってよいほどコミュニケーションを取っていないので ほとんど まともな回答はできません。

ここで このアプリケーション開発リーダーは 他人に対して 論理的に ”誰がお客様なのか”ということが 説明できず、自分のやっている仕事の正当性を説明できなくなります。

また、”メインPMがお客様である” という アプリケーション開発リーダーもいます。 サブPMとして、もっとも頻繁に コミュニケーションを図っている相手ですから、そう考えるのも一理あります。

ここで私は、同じように ”彼らが困っていることは何ですか。それは彼らと確認できていますか。貴方のやっていることは、その解決とどのように繋がっていますか。” と質問します。 貴方は、メインPMが、”ソリューション・グループが固めるべきIT要件が、十分 確定していなくて、それは 業務要件が固まらないことに起因している。 そのため、変更要件が読み切れていなくて、この開発には大きなリスクがある。リスクが、マネジメントしきれていない。”ということで 困っていることを聞かされていますし、十分 認識しています。 ただ、”貴方のやっていることは、その解決とどのように繋がっていますか。”という点になると、問題は確認できていても 無視して 自分のやりたいことをやっているだけということに 気付かざるを得ません。 そのため、当然 自分の仕事の正当性を論理的に 他人に説明することはできません。

正当性を説明できなくても、”言われたことをやるのが、私の仕事”と 開き直ることもできますし、それも 一つの仕事観なのかもしれません。

ただ、この企業の創始者は著名な経営者で多くの名言を残しておられますが、その中に ”言われたことだけをやるのなら 君はいらない。”という言葉があります。 シンプルですが、非常に奥の深い言葉です。

また、この研修の目的が リーダーシップの育成であり、部門からの選抜組であることもあり、自分の仕事の正当性が他人に説明できないと 悩み始めます。

ここから、”本当のお客様は誰なのか”という 自己分析が始まります。

”本当のお客様は誰であるべきか” ということを 私は言いませんが、その可能性についてのヒントを与えて 自分自身の考えを深めていく ファシリテーションがここから始まります。

これについては 次回以降にお話しします。