● ゴム底を貼って、カカトが脱げるようになった靴

東京・新宿
「靴は売らない靴屋」
 泰治(やすはる)です

久し振りの記事のアップです

忙しさを言い訳に、筆が 指が重くて、なかなか記事が書けませんでした

そんな中、こちらのお客さまが「スウェードのパンプスのカカトが、カパカパに抜けてしまうようになったので見て下さいませんか?」と、再調整にお越しくださいました

「お痩せになりました?」と伺ってしまうほど、あっさりとカカトが抜けます

「痩せると足の大きさ、変わるのですか?」

「体重の増減で足のサイズはコロコロ変わりますよ」

「体重は減ってないんですけど・・・・」

失礼いたしました!


中敷き調整をすると、カカトが抜けるようになることがあります

代表的な原因が、足裏のアーチを支えることで、足のサイズが小さくなる(=縦横に広がってしまう足が、広がらない)からです

ところが、そのお靴には、前回の再調整の時に、目一杯サイズ調整用パッドが入っています

これ以上入るか?、という限界近くまで調整してあります

それでも抜けるとなると、・・・最初に浮かんだ答えが、“お痩せになった?”でした

すでに再調整したお靴です

足裏を支えたことが原因のカカト抜け、とは考えにくいのです

こうなったら、限界までパッドを入れるしかありません

足を入れる場所がなくなる、そのくらいパッドをたしてみました

「足、キツクありませんか?」と心配しながら、足を入れていただき、爪先立ちしていただくと・・・

カカトが全くついてきません

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原因がわかりません

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スウェード素材なので、革が伸びやすいのは確かです

それでも、1.5サイズ調整する時のパッド構成にしても抜けるって、全く別の靴になったような感じです


「そういえば、最近靴底が減ってきたんで、ゴムを張ったんですけど、何か影響ありますか?」

「あっ!、それが原因かもしれません」


しっかり履きこなした革底の靴

レディースシューズの場合、底が張り替えられないものが多く、底に穴が開く前に、ゴム底を貼ることがあります

また、革底だと滑りやすいので、初めからゴムを貼る、という方も多いです
(革底にゴムを貼ることの良し悪しについては、また別の機会にお話します)

ところがゴム底を貼ることで、靴の履き感が全く変わってしまうことがよくあります

地面からの衝撃が減り、柔らかく感じる、ということは当然ですが、体重をかけた時の、靴底のテンション、ハリ感、強度が変わり、別物になることがあるのです

お履きの靴を改めて拝見すると、抜群に上手な貼り加減です

つま先、サイド、土踏まず際、靴の反りに、キレイにそわせて厚みを変え、曲線が付いています

この厚みを変えた曲線がくせ者でした

靴底の中心は、ゴムの厚み分だけ、底が厚くなります

中心は底が厚くなったのに、つま先、サイドは元の革底の位置まで削ってあるので、厚みは変わりません

その結果、靴のヘリは、地面から見ると、距離が離れたことになります

つまり、ゴムの厚み分だけ、体重をかけた時、革が伸びる距離が長くなるのです

十分に履きこなして、靴全体が柔らかくこなれている上に、スウェードという柔らかい素材であることも加わって、全体が伸びやすくなっていたんだと思います

結果的に、体重をかけた時に靴全体が伸びる分だけ、靴が大きくなった、ということです


もし、サイドの曲線がきちんと削られていなければ、革が伸ばされる距離は大きくは変わりません

しかし、見栄えが悪い、腕の悪い仕事になってしまいます

もし、履きこなした靴でなければ、足裏の中心が盛り上がったような、変な感じがしていたことでしょう

場合によっては、小指が革で挟まれて、シビレルように痛んだかもしれません(ちなみに、私、オールソール交換をしたグレンソンのブーツで苦しんでおります)


靴底という、普段あまり気にしていないところも、靴の履き心地を大きく変えてしまう、大切な場所なのです

特に、履きこなした靴の底修理では、別物の靴になる可能性があるのです

履きこなして、革底の感触を楽しんだ後、底に穴が開く、チョット前にゴム底を貼って、更に大切に履いていただく

とっても素晴らしいことです

ところが、靴の履き感を変えずに、底を直すのは本当に腕のいい職人さんじゃないとできないのです

そんな職人さんを見つけるのは、今ではとても難しいのです

残念ですが、正直、ほとんどいないと思います

仕方のないことですが、多くの方が、履き感が変わることを了解してください、と事前の了解を求めてこられます

そうしなければ、報酬に見合わない責任を負うことになるからです

着せかえアルバムのComariさんから、この事、ブログに書いてくださいと、リクエストいただき、久し振りの記事更新となりました


結局、中敷き調整だけでは足りず、カカトの内側に薄い革を3枚貼り、ギリギリ、なんとかなるか?というところまでの調整になってしまいました

これに懲りずに、またお越し下さい

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