昨日はお茶のお稽古。



旅行後初めてのお稽古だったから
なんだかすごく久しぶりみたいな気がした。



寝不足だったせいか
髪のセットも着物の着付けもイマイチ。
それでも先生は褒めてくれる。







私は贅沢にも
一対一のお稽古をしてもらっている。



まずは先生がお点前の見本を見せてくれる。
そして次に私がそれに習って濃茶のお点前をする。


それが終わると私が薄茶のお点前をする。



途中で一瞬だけ先生と交代して
私の薄茶を先生がたててくれる。



そんな流れ。








昨日は頭がぼーっとしてるし
先生がお点前の準備をされてるとき
和室で1人座って待っていると
あくびが出そうになる。



でも先生のお点前が始まった途端
あくびは止まる。



先生の綺麗な所作。
それを自分にインストールしようと
ただただ目で追いかける。



寝不足で頭が働いてないはずなのに
自分の番になると案外と覚えていた。



そんなことがこっそり嬉しい。






私が茶道を好きな理由の一つに
「ゆっくりできる」というのがある。



茶道は一つ一つの所作を丁寧にする。
だから時間がかかる。



お辞儀も心の中で
「いちにぃさん」と数えてゆっくりやる。
畳の上に置く手のひらは体重をかけない。



歩くときもスタスタ歩かない。
つま先まで意識を向けて
畳の縁を踏まないように歩く。



道具を取ったり置いたりするときも
軽いものは重いもののように
重いものは軽いもののように扱う。



指先まで意識を向けるけど
物を持つときは
指先はピンと伸ばさない。



そういうことを意識してると
自然と動きがゆっくりになる。



多分そのうち
それは意識しなくても
自然と出来るようになるんだろう。



だがそれはまだ遠い先のお話…





初めて先生のお点前を見たときは
なんて優雅だろうと思ったし
こんな世界は私に合わないかもと思った。



なんせ私はセカセカして生きていた。



タリーズでも船でもブルーノートでも
素早く動くのが当たり前で
1秒でも早くお客様に商品を届けるのが当然で
ゆっくりしていたら怒られた。



それは日常にも影響を与えた。



誰も見てなどいないけど
1秒でも早く家事が終わるように動く。



車に乗っているときも
なるべく近道をしようとするし
なるべく早く帰れるように
用事はさっさと済ます。



レストランに入れば
すぐに注文を取りに来て欲しいし
すぐに料理を出して欲しいし
すぐに食べてしまいたいし
すぐにお会計したいし
すぐに帰りたい。



無駄な動きがないように
無駄な時間を費やさないように。



そんなことを無意識のうちに考えていた。







茶道も無駄な動きはない。
一つ一つの所作は
全て細かく決められている。



でも違うのは
一つ一つがゆっくりと行われること。



最初の頃はそれがじれったかった。



さっさとやれば10分くらいで出来るのに
それを1時間くらいかけてやるのが。



でも今はとても心地良い。



坐禅や瞑想と同じく
呼吸がゆっくり出来るし
心がのんびりできる。



どれほど自分が生き急いでいたか
茶道を習ってから分かった。



私の先生は
「楽しむことが一番大切」と言われる。



お点前の正確さよりも
お茶とお菓子を味わって
客との会話を楽しみ
巡ってくる季節を賛美する。



はじめの頃は
「そうはいっても…」と思っていた。



お点前を覚えなくちゃと必死だった。



その必死な頃は
先生との会話はうわの空で
考え事をしていたりした。



お稽古に行く前は
ため息をついていたし
身体がだるかった。



なんでお稽古に通ってるのか
わからなくなっていた。
やめようと思ったこともあった。



でも今年に入ってから
意識がガラッと変わったのだった。



ある信頼している人に
「茶道を本気でやってみたら?」
と言われたのがきっかけだった。



それもいいかもしれない。
そう思った私は
早速ルーズリーフとファイルを購入し
習ったお点前を書き留めるようになった。



それから不思議と
お点前のときに身体が自然と
動くようになっていった。



もちろんまだ間違いは度々あるけれど
それでも気持ちがお点前から離れなくなった。



そして茶道がすごく楽しくなってきた。
そのことに地味に感動している。



日常もゆっくり時が流れるようになった。



お店に入っても
注文はすぐに来なくても構わないし
料理も美味しいなら全然待つし
ゆっくり食べたいし
店員さんとお話したいし
帰り道に寄り道するのも楽しい。



のんびりし過ぎていて時々焦る。



窓の外の風に揺れる薔薇の茎を眺めて
「あーいいなあ」と思う。


私はほんとはのんびりした性格なんだと思う。



茶道がそれを教えてくれた。



そういえば先生もよくおっしゃる。



「ゆっくりでいいんだよ」



私はのんびりできる時間が少ないと
心に余裕がなくなる。



だから最近は急ぐのを諦めて
のんびりするようにしている。



そういえばタリーズの頃
シフトインの30分前には必ず行って
客席でコーヒーを飲む習慣があった。



あれものんびりするためだった。









何かに悩んでるときって
早く答えを出したくなる。



早くそのモヤモヤを消したくなる。



問題そのものよりも
そのモヤモヤが不快だったりする。



でもそんなときこそ
美味しいお菓子とお茶でも飲んで
のんびりすることをお勧めしたい。



大好きな誰かと
のんびりお話する。
それだけで心が晴れることもある。



自分で自分を追い込んではいけない。



「早く答えを出さなくては」と
追い込んでることの方が辛かったりする。



もちろん考えることで
出てくる答えもあるんだけど
時が来なければ見えてこないこともある。



早ければいいというものでもない。



私には私の
あの人にはあの人の時の流れがある。



しばらく考えてみても答えが出ないときは
考えることを手放して
心がホッとすることをする。



問題は案外
自分が作り出しているものだ。