続き

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私が５歳まで住んでいた場所は、父の務めていたニッケ（日本毛織）の社宅です。最後に見たのは３０年以上前、学生の時。その時も、久しぶりに確認したい衝動にかられ、当時の加古川の実家から自転車で走り回って見つけたのでした。しかし、もはやそれがどこだったか、今となっては詳細は思い出せません。ネットで検索して、今も現存する社宅エリアがあることは分かったものの、それは加古川左岸（東側）のことで、かつて住んでいたはずの右岸（地名は「船頭：ふなもと」）ではないのでした。そこで、生まれ育った地の神社を巡る目的から外れないよう、現存する左岸エリアにある春日神社と、右岸の船頭にある大蔵神社の２つに行って確かめてみることにしたのでした。

まずは、今も入居者があるという左岸の現存ニッケ社宅エリアへ。

※写真はネットより転載

未舗装の路地、昔ながらの板塀。これは確かに記憶に残る懐かしいたたずまい。住んでいた建物も同じような雰囲気だった。けれど、やっぱり住んでいた場所そのものではない、というのがあらためて分かった。５歳に満たないとはいえ、裏手のガラス障子越しに見えていた、堤防らしき高台へ続く坂道、また同時に夕日も見えていた記憶。しかし、ここの立地はそうではないことが確認できたのでした。

とはいえ、久しぶりにこの雰囲気が味わえただけでも良かったと気を取り直し、春日神社に挨拶しておくことにしました。

春日神社はこのすぐ近くにあります。

※写真はネットより転載

住宅と堤防に囲われた小じんまりとした境内。はたして小さい頃ここを訪れたことがあるのだろうかと、できる限り直感を研ぎ澄ませながらぐるりと歩いてみました。

「う～～ん、やっぱり分からん！！」

比較的小さい時の記憶はある方で、６ヵ月くらいのころから断片的に覚えがあったので、何かピンとくるのを期待したけれど、さすがに分からなかった。

そして少し戸惑いながらも参拝。小さい時にニッケの社宅に住んでいたこと、もしかしたらここに来ていたかもしれないことを含めて丁重に挨拶をしたところ、またもや風で返答が。

「え！？通りすがりかもしれへんのに？」

思いもよらず受け取れた歓迎のしるしにまたまた気を取り直し、加古川橋を渡って大蔵神社方面へと向かったのでした。

大蔵神社へ行く途中、もしかしたら住んでいた社宅の痕跡があるのではと期待したものの、その辺りはどう見ても新しい住宅でビッシリ。そうこうしているうちに、大蔵神社に到着。

※写真はネットより転載

見た瞬間思ったのが、何かこれまでの神社と違う？ということ。確かに鳥居や社殿らしきものはあるけれど、なんとなく雰囲気がスカッとし過ぎ。殺風景と言ってもいい。ともあれ、中へ入ってみることに。

※写真はネットより転載

ここまでくると、狛犬さんを発見。しかし、相変わらず奇妙なスカスカ感。もうこれ以上進まなくてよいという気持ちさえ湧いてくる。それでも前へ進むと、小さな祠（ほこら）が。。

※写真はネットより転載

思えば、この神社には手水舎も無かったし、祠には賽銭箱もガラガラの鈴もない！やむを得ずそのまま手を合わせ挨拶を始めたものの、聞いてもらえてる感じがしない。それどころか、早よ帰れと思われている感すらある。なんとか挨拶を終えた後、そそくさとそこを後にすることに。もちろん、ここでは歓迎のしるしらしきものは何もなく、とりあえず義務を果たして逃げ帰ったような後味。いったいどういうことなのだろうか、ここが本命のはずだというのに。。

この時点で、すでに日は傾きかけており、本日最後の高砂神社へは４時までに着けるかギリギリのところ。４時を過ぎると、神社の神様は店じまいの準備に入るので避けた方がよいと読んだ覚えがある。しかし、この機会を逃すと次はいつになるか分からないので、高砂神社の神様には大目にみてもらうことにして移動することに。

高砂神社は、母の実家のすぐ近くにあります。小さい頃は秋祭りの時に何度か連れて行ってもらっており、最後に行ったのは５、６歳の時で、鳥居横の出店で今は亡き叔父にウルトラマンのお面を買ってもらったと記憶している。参拝のために訪れるのは、なんとこれが初めて。どんなだろうと好奇心が湧く。

境内に入ると、これまた今までとは全然違うのがすぐにピンときた。

「ああ、落ち着く～、安心できる～」という感じ。のびのび、開放的な空気感。

そして、ポツボツとではあるけれど、近所の人が入れ替わりやってきて、参拝していく。

さすが高砂神社、と感心しながら、社殿の前で手を合わせた。もちろん、すぐ先の家で生まれたこと、小さい頃に訪れたことを含め、丁重にお礼を述べた。最後の一礼まで終え、しるしを期待して待つことしばし。

しかし、、今回は風どころか空気の動きすら感じない。

「・・・」

期待が失望に変わりそうになったその時、どこからともなく香しい匂いがフッと鼻をかすめた。

線香やろうそくとも違う、今まで嗅いだことのない、しかし、いかにも神社らしい趣のある匂い。

ほんの数秒の出来事だった。

「そうかー、そういうのもありなんかー。」

神様が匂いで歓迎のしるしをくれたと気付いた時、期待に応えてやろうという懐の深さとあまりの粋な演出に感服せずにはいられなかったのでした。

「やっぱりここまで来てよかったー！！」

こうして、生まれ育った土地の神様への挨拶回りは幕を閉じました。

その後、ほぼ５０年ぶりに母の実家跡の前に立ち、神社の方を眺めてみました。

少し奇麗になってしまったけど、これこれ！この雰囲気～！！

たとえ５歳でも、心の中の絵は生きているというのをあらためて実感したのでした。

＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾

思えば昨年は、神社仏閣に興味を持ち、自身で検証して回った一年だったように思います。

この生まれ育った土地の神社巡りの後、なんとなく過去のことが軽くなって意識から離れ、今度は本来の自分を見つけるための願掛け巡りを思いつきます。そこでは、さらに色々な歓迎のしるしを目にすることになりました。そのへんは、またそのうち書いてみたいと思います。

歓迎のしるし（３）