どうしても気になったから買った。

「The Last Campfire」。
一時期ゲームが好きなSNSユーザーの間で話題になったNo Man's Skyを作った会社のゲームでこちらももれなく一部のユーザー間で話題になった。
「故郷へ帰る理由と方法を探すアドベンチャー」と書かれていてめちゃくちゃ気になってたので購入。

まずまとめる前にオープニングについて書いておきたいのでざっくり書く。
あと比較的短めのストーリーゆえにがっつりエンディングまで触れてるのでもし読む人が居たら注意。

さっそく行こう。オープニングではエンバーと呼ばれる種族の子が仲間とどこかへ向かっているムービーが流れる。

仲間とはぐれてしまった赤ずきんエンバー。怯えながらどこかへ流されて行き画面が暗転。
ここで本作の主人公「青ずきんエンバー」に切り替わる。よく見ると近くにOPのムービーで登場した赤ずきんが居る。

ちょっと哲学的な児童書のような独特の雰囲気。
エンバーと呼ばれる種族は故郷と呼ばれる場所を目指して旅をしているらしく先程の赤ずきんとこの青ずきんはその旅する者たちの1人という事らしい。

ここでオープニングの話は一旦区切って本編の話。
「希望」をテーマにしたこのゲームはマップ内を探索して他のエンバーを探すパートと絶望してしまったエンバーたちの心をパズルゲームという表現で解き明かすパートで分かれておりどれも難易度がちょうど良い。

こんな感じで絶望で石化してしまった人に触れて心の中に入り込む。
その人が抱えている絶望や悩みがパズルとなって青ずきんの前に立ちはだかる。
進めていくとモノローグが流れるのでパズルの解き方が合ってるのかどうかがわかりやすい。

パズルのバリエーションも豊富。
こんな感じのものから
こんな感じのものまで同じものは無い。
ストーリーが進んでいくとランタンホルンと呼ばれる特定のオブジェクトを動かせる笛を使って解くパズルも出てくるので謎解きが飽きない。

ランタンホルンとホルンを装着した青ずきん。
歩くと笛とカバンが揺れるのでめちゃくちゃ可愛い。小学生くらいの小さい子どもがちょっと大きめのカバン背負って歩いてる感じがして愛おしい。

青ずきんは各マップにある巨大なキャンプファイヤーを拠点にして行動する。
「幽霊」と呼ばれるキャンプファイヤーの精霊さんに仲間の居場所についての助言をもらいながら走り回ります。

このゲームの魅力はただ人々を救うだけではないというところ。
助けられない人も存在する。
まだ前向きになれない人、心の準備が出来ていない人、自分で立ち上がりたい人、そこに留まりたい人…理由は様々だが青ずきんエンバーの手を借りない選択をする仲間が数人いる。
無力感を感じながらもそっとしておく事にする青ずきんエンバー。相手を尊重する大切さを丁寧に描いてる。誰も悪くない。自分は自分、人は人だもんね。

登場するキャラも個性豊かでインパクトが強い。
キーパーソンとなる鳥の王。
クロスロードと呼ばれる場所に拠点を作り「鳥」と呼ばれるコスプレ姿のエンバーを率いて彷徨い疲れた野良エンバーたちを保護している。
彼の願いや目的は青ずきんと同じ「みんなを助けたい」なのだが道筋がほぼ真逆なのでこの2人は真っ向から対立することになる。

研究熱心で慈悲深い料理人。
自身の果樹園を持ち日々美味しい料理のために腕を磨いていたが「鳥」たちによって大量の豚をけしかけられ果樹園も畑も何もかもぶち壊された挙げ句にスランプが重なり絶望してしまった。復活後は喜んで青ずきんにスープを作ってくれる。

食いしん坊で人懐っこい巨大ブタ。
食欲に支配されて悪食の限りを尽くしていたが冷たく深い沼に転がり落ちたり料理人が作ったスープを飲んだりしたことで冷静になり自身の欲との向き合い方を改めた。頭の上を経由して対岸に移動させてくれる。

繊細で寂しがり屋な造船ロボ。
船を造って暮らしていたが「鳥」たちにより目を壊された上に洞窟の奥に打ち捨てられ暗闇と孤独の中で怯えていた。復活後は穏やかな声音と明るい口調になり青ずきんのボートを作り直してくれる。

旅してる最中の野良エンバーも愛嬌があって可愛い。
この子は料理人から教えてもらったレシピでスープを作ってるのだが隠し味を見て「やっぱりめちゃくちゃ怒ってるじゃん!!」って思った。
余談だが料理人が改革の一手として蓮の実で仕上げたスープなのだが、実際に蓮の実を使った薬膳スープが存在してるので作れなくはない。公式さん是非ともスープのレシピをください。

勝手にカニくんと呼んでる子。
厄介なカニの捕獲を手伝ったら「捕まえたはいいがコイツどうしよう?」となったので譲り受けた。
私も「うーん…カニ鍋か…??」と悩んだ。結局このあとギミックに使用してさよならをしたのだが持ち歩いてる時にカニがハサミをジャッキンジャッキン鳴らしてるのが面白くて暫く周辺を散歩してた。

このゲームはところどころにわかりやすい伏線らしきものがありどんどん先に進めたくなる。
その伏線のひとつが画面に見切れる赤ずきんエンバー。
進めていくマップの中間地点あたりに必ずチラッと居る。存在に気付いても一定の距離まで詰めると一瞬で走り去っていくのでスクショが大変だった。
わりと序盤から画面の端に映り込んでくる赤ずきん。

誰かを探しているように佇む赤ずきん。近くに行くと猛ダッシュで逃げて行く。

明らかに何かの目的があるんだろうなとは思うがこの時点ではまだ接触できない。



【ここからエンディングまでの話】





鳥の王の正体はプロローグからがっつり映り込んでいた赤ずきんエンバー本人で、この世界の果てに辿り着いたのはいいが何もなかったことで絶望してしまっていた…という最終章の入り。

進むべき道を見失い、目標も失くし、それでも彼なりの優しさでエンバーたちを保護するために奔走した赤ずきんは青ずきんにずっと抱えていた孤独を吐露して石化してしまう。この石化していく場面が本当に悲しい。

青ずきんは「そうはさせるか!」と言わんばかりに赤ずきんの心にダイブしていく。

赤ずきんの独白の一部。

希望に満ちた仲間たちが次々と何も無い旅路の果てに絶望していく姿に赤ずきんの精神が蝕まれていく様子や鳥の王としてエンバーを保護する事を決意した経緯が淡々と語られる。

心のパズルを解いて生きる気力を取り戻した赤ずきんは最終的に「望んだ果てがなくても前に進む」という決心をして青ずきんと共に行動する事に。

 
そのままエンディングに突入。OPと同じ構図でボートを漕ぐエンバー。でも今度は2人で寂しくない。
さらにOPでは赤ずきんが流されて辿り着けなかった場所に2人で到着する際、各マップで助けたエンバー達が後ろから次々と現れる。

最後は皆で次の世界へ転送されるポータルのような場所に突入してエンドロールへ。おそらく彼らは自身の定住地を求めてこれからも旅をするんだろうというエンド。
一言で表現するなら禅問答みたいなゲームだった。
映画を1本見たような満足感。普段殺伐としたゲームばっかり遊んでるので優しい世界が脳に染み渡る。またこういうゲームがあったら遊びたい。

今回はこのへんで。ではまた。