★登場人物

●今勝成(こん・かつなり)
36歳独身。結婚する為ならどんな婚活アプリにでも手を出す男。今回は怪しいアプリだった。

●相馬双葉(そうま・ふたば)
今回のゲスト。ネガティブな性格で、勝成を道連れにしようと考える。余命2週間と言うが……。



勝成は、福島県いわき市に来ていた。今回は、いつもと違った婚活アプリ福島県在住の女性と会う約束をしているが、何やら怪しい感じがして周囲をキョロキョロして挙動不審だった。

勝成「また福島県に来たが、今回は大丈夫かな?また約束をすっぽかされたり、痛い女子とかではなくて真面目なコがいいんだが……ん?」

勝成は、殺気を感じて振り返った!
そこには生気を感じない女子がいた。

双葉「……貴方ですか?私と一緒に旅立ってくれる今勝成さんは?初めまして。双葉です」

勝成「ああ……双葉さんね、宜しくです」



二人は海沿いの道を歩いた。

勝成【……何か暗そうだが、見た目は普通だな】

双葉「早速なんですが、どうやって旅立ちますか?海に飛び込むのも良いけど何だが寒そうですし、私は泳げないから沖まで行けないです」

勝成は唖然とした。

勝成「……え?何言ってんの?」

双葉「私と一緒に天国に旅立ってくれるんですよね?勝成さんも闇アプリ登録者ですよね?」

どうやら勝成は、婚活アプリと間違って闇アプリに登録して双葉と出会ったみたいだった。

勝成「いや違うよ!全くの正反対で、婚活アプリで結婚してお互い幸せになろうってアプリに登録したんだよ。双葉さん、もしかして危ない事を考えてない?ダメだよ、ちゃんと前を見なきゃ!」

双葉「私には時間が無いんです!この命、余命2週間しかないんです!だから……もう……」

双葉は、その場で泣き崩れた!

勝成「とりあえず移動しようよ」

勝成【……なんかまた面倒臭い感じがするが、彼女を放おって置けないな。余命2週間ってのが気になるけど、徐々に彼女の心を開かせなきゃな】



いわきマリンタワーまで来た。二人はエレベーターで頂上まで登って景色を眺めた。

双葉「わあ〜凄く高いですね。ここから飛び降りれば一瞬であの世に逝けますね」

勝成「また悪い事考えてる……ダメだよ」

双葉「……冗談ですよ。私は高所恐怖症だから、もっと楽に逝ける方法を探しますよ」

勝成「……まあ〜いっか」

勝成【……彼女を絶対に逝かせない!その為には彼女の心を透視する必要があるな……】



その後、二人は車で宮城県方面へと北上した。車内は無言だったが、双葉が重い口を開いた。

双葉「……かつて、この地では大規模な災害が起こって、全部消えてしまったの」

勝成「双葉さんは、この辺の出身なの?」

双葉「……うん、幼い頃から知ってるこの地はもう跡形もないんです。私も病気で長くないし、みんなが待ってる所へ行きたいの……」

勝成「みんなって?まさか……ご家族や友達も災害で亡くなってしまったとか?」

双葉「いや……みんな今も元気です。私が言うみんなって私が知ってる自然なんです」

勝成「……そっか。人間が無事で良かったけど、故郷を失うのは辛いよね……同情するよ」

双葉の目付きが一瞬変わった。

双葉「勝成さんに見て欲しい場所があるの」




二人は、災害の脅威を展示するとみおかアーカイブミュージアムに来た。そこには災害によって潰れたパトカー、14時46分で止まった時計などが展示されて物々しい雰囲気であった。

勝成「ここは一体……?」

双葉「災害によって失った物たちです。私の知っている物や自然は、全て消えてしまったから私もこの物達と一緒に自然に帰りたいの」

勝成は、双葉の話を聞き流した。

勝成「ここは良い場所だね。災害の脅威を知って貰う為にもなるし、二度と同じ過ちを繰り返さない為にも人間って災害に強くなろうと努力する事が出来るんだ。何年かかるか分からないけど自然は元通りになるし、物は人間の手によって災害に強くなるように強化されるんだよ。だからね、双葉さんの家族や友達が生きてる事に感謝しなよ」

双葉「……」

双葉は黙って、展示物を眺めた。

双葉「……勝成さんの言う事は正論だと思うけど、あと2週間で私に一体何が出来るんだろ?」

勝成「……とりあえず移動しようか?」

勝成【……何を言っても余命2週間って事で会話が止まってしまうから、そろそろ聞き出すかな?】




二人は、宮城県方面へと車を走らせていると道沿いに道の駅があったので立ち寄った。

双葉は、巨大なオブジェに気付いた。

双葉「あれは……ポケモンに出てくるラッキーですね。きっと、災害に見舞われた町を元気付ける為に置かれたんだろうな……なんだが、勝成さんの言った事が分かった気がします」

勝成「じゃあ、もう旅立つとか暗い事言っちゃダメだよ。もっと自分を大切にしなさいよ」

双葉「……はい、ごめんなさい!残り2週間、1日1日大事に過ごしたいと思います」

勝成「……」

勝成【……よし、これで彼女は変な気を起こさないようになったぞ!告白するなら今だな!】

勝成は、双葉の正面に立った。
勝成「残り2週間で君を幸せに……!?」

次の瞬間、双葉のスマホが鳴った。
双葉は動揺してスマホのスピーカーモードのボタンを押してしまい、男性の声が響いた。

医師「……やっと出たな!この間はどうしたんじゃ?話を最後まで聞かずに病院飛び出して」

双葉「先生……私、もう耐えれません。結局、何の病気で余命2週間なんですか?ガンですか?」

医師「ガン?余命2週間?一体、何のこっちゃ?君はただの低血圧の貧血じゃよ!」

双葉「え!だって、余命2週間って……」

医師「え?ワシはこの前、君があまりにもべっぴんさんだから、嫁にしようかな?って言っただけじゃよ!余命2週間って聞こえた?」

双葉「じゃあ、私は生きれるんですね?」

医師「勘違いさしてごめんよ!薬取りにまた病院に来なきゃダメだぞ!それじゃあ、またね!」

双葉は、スマホの会話を切った。

双葉「何て事でしょう……私の勘違いからイケナイ考えを持っていたなんて恥ずかしいわ」
双葉「ありがとう勝成さん、寿命が70年くらい伸びたので好きな事をやらせて貰うね!」

そう言って双葉は去ってしまった。

勝成「え……ちょっと待って、僕の渾身の告白の返事は!?何でこうなるのー!!」

★迷王の婚活旅⑥
◎監督 TRICK★STAR
◎演出 TRICK★STAR
◎脚本 TRICK★STAR
◎出演 TRICK★STAR
◎撮影 TRICK★STAR
◎編集 TRICK★STAR
◎衣装 TRICK★STAR



〜あとがき〜

今回は東日本大震災をネタにさせて頂きましたが、話の中で【津波】や【死】と言う言葉をあえて使わずに書かせて頂きましたので、真面目に作成したシナリオになってます。震災で色々な人や物を失った方々の1日でも早く笑顔になれる事を心より願っております。また次回のブログで!