★鳥憑元気(とりつく•げんき)
著者。独身なのだが、突然現れた元カノとの間に出来た娘に困惑している。

★宇都野美弥(うつの•みや)
自称、元気の娘として現れる。12歳だと言うが、突然大人っぽい表情をする事がある。

★美優(みゆ)
元気の13年前の彼女。伝えた待ち合わせ場所には来なかった事がすれ違いになる。
元気と美弥は、ベンチで寛いでいた。

元気「そう言えばさあ、お母さんって元気でやってるの?結婚とかしているの?」

……俺は13年前に別れた彼女のその後を娘に聞いてみた。幸せならそれでいいんだが……。

美弥「元気だよ。女手一つで私を育ててくれたんだよ。たまにお婆ちゃんも遊びにくるし」

元気「そっか……それは良かった」

美弥「それよりパパはどうなの?彼女とかいるの?再婚しないの?ねえ、ねえ」

……美弥は、俺の手を揺さぶってきた。 

元気「再婚って……俺とママは、結婚してた訳じゃないんだよ。ただの恋人同士だった」

美弥「じゃあ、ママと結婚すれば?出来ちゃった結婚……じゃなくて、出来ちゃってた婚だね」

元気「出来ちゃってた婚!?」

……出来ちゃってた婚。

……子供が出来たから結婚する。じゃなくて、これから二人の間に出来た子供を育てる為に結婚する出来ちゃってた婚かあ……それも有りだな。

元気はニヤニヤしている。

美弥「それもいいけど、次はどこ行くの?みや、遊園地とか行きたいんだけど……」

元気は妄想から現実に戻った。 

元気「もっと面白い所に行こう!」

元気と美弥は、那須塩原市の奥地にある板室自然科学センターに来た。近くの川には沢山の鯉のぼりが風に吹かれて泳いでいた。

美弥「ねえ、遊園地は?それかアウトレットモールに行って洋服とか買ってよ」

元気はマンホールカードを掲げた。

美弥「何それ、キティちゃんじゃない?」
美弥は那須塩原市のマンホールカードを手に持つと、興味を持ったみたいで喜んだ。

元気「このカードはねえ、ここに来ないと手に入らない貴重なカードなんだよ」

美弥「へえ〜面白いね。他にこのカード貰える所ないの?もっとカード欲しくなっちゃった」 

……美弥はやっぱり俺の子供だな。カードを手にして興奮するって事は親ゆずりなんだな。

……だがしかし、もう16時近いからカードを配布している場所なんかあるのかな?

美弥は、スマホで何かを検索している。

美弥「……あった!福島県の白河市なら18時まで配布してるって載ってるよ」

元気「福島県?!マジで行くのか?」 

美弥「ねえねえ、行こうよ〜」

美弥は、元気の腕を揺さぶってきた。

元気「よし、行くか!」
……俺たちは、那須高原をあとにして福島県白河市へと向かった。助手席で美弥は、外の景色を見ながら鼻歌を歌っていた。

……俺はチラチラと娘の顔を見ながらデレデレしてしまっている。やっぱり可愛い。

……美弥、ごめんな。出産の時、立ち会えなくて。それに12年間もの間、父親らしい事をしてやれなくて……。今後は、その、美優と出来ちゃってた婚やらをして君を育てていくからね。

元気の妄想は止まらない。
元気は、白河市に向かう道中で何やら懐かしい自販機を見つけて車を止めた。

美弥「どうしたの?」

元気「美弥、おもちゃ買ってあげるよ」
元気はコスモス自販機にお金を入れると、レバーを引いた。すると、箱が出てきた。

美弥「何これ?」

元気「これは……スマホに付けると面白い写真がとれるアタッチメントだよ」

……これは、きっと美弥も喜んでくれるだろうな。今どきの女子が欲しがるに違いないね。
美弥は、あまり喜んでいない様子だ。

美弥「今は編集アプリで色んな写真撮れるから、こんなの……いや、ありがとうね」

……ダメだこりゃ。もっと、今時の女子の心を掴めるようにならなきゃね。

……そして、俺らは福島県白河市までやってきて無事にマンホールカードを手に入れた。

美弥「パパ、ゲット出来て良かったね」

……美弥も満足してくれたようで良かった。
元気と美弥は、白河小峰城前でスマホで記念写真を撮った。いきなりの事で元気は、良く分からない表情になってしまっていた。

美弥「パパ、今日はお疲れ様」

元気「ありがとう、美弥」

……美弥は元気で良い娘だ。出来る事ならば一緒に暮らしたいがすぐは無理だろうな。出来ちゃってた婚は難しいが、俺は栃木県まで美弥に逢いに通ってもいいかな?って思ってきた。
栃木県のどこかの公園で元気は車を止めた。

美弥「この公園でいい」

……美弥は家に帰るそうだ。
元気は財布から1万円札を出した。

元気「美弥、これ、お小遣い」

美弥「……いらない」
美弥「本当はねえ、パパに会ったら高い服を買わせたり美味い物をご馳走させてバイバイって思ったけど、お金じゃ買えない良い思い出をくれた。だから、もういいの。私は大丈夫」

元気「美弥……また逢えるかな?」

美弥「パパがみやの事を大事に思っているならいつでも逢えるよ。今日はありがとう!」

そういうと美弥は、1回だけ振り返って去って行った。元気はその背中を見て号泣していた。

……美弥、本当にありがとう。

……美弥、パパはいつでも君の事を想って頑張るからな。また君に逢えるのを楽しみに待っているからね。こんな俺をパパと呼んでくれてありがとう。それじゃあ、さようなら愛娘、美弥!

元気は1人寂しく神奈川県へと帰った。
★トリ散歩・栃木編(後編)

◎監督 TRICK★STAR
◎演出 TRICK★STAR
◎脚本 TRICK★STAR
◎出演 TRICK★STAR
◎撮影 TRICK★STAR
◎編集 TRICK★STAR
◎衣装  TRICK★STAR
◎小道具 TRICK★STAR


……。

美優【もしもし、元君?いまどこいるの?】
突然、美優から連絡が入った。

元気「お〜宇都野さんか。君の、いや、俺達の娘は素晴らしいコだったよ。あんなにしっかりした娘に育ててくれてありがとうね」

美優【宇都野?……それに娘って?私、まだ子供産んでないけど何の話?】

元気「美弥だよ、宇都野美弥!君が待ち合わせ場所に呼んだ12歳の女のコだよ」

美優【ちょっと何言ってるか分からない!私が待ち合わせ場所に指定した道の駅は茨城県で20時だよ……元君ちっとも来ないじゃない!】

元気「え!栃木県の道の駅•思川に8時じゃなかったっけ?!まさか……違ってた!?」

美優【何度もメールしたよ。何やってんのよ】

……そう言えば、今日は、美弥に夢中で1度も携帯電話を開いていなかった。

美優【宇都野美弥って誰?宇都宮じゃん!】

……ちくしょー!騙されたー!!

……美弥って誰なんだ!ただの家出少女じゃねーかよ!!俺を利用して遊んで貰った今時の他人の女のコだったんじゃんか!

美優【元君、詐欺にあったんだよ。大丈夫?何も盗られてない?お金とか?】

元気「何も盗られてない」

……何も盗られてないどころか、元気と生きる希望を貰ったから結果オッケーだな。

美優【良かったね。心配したよ】

元気「美優……まだ、間に合うか?」

美優【……うん。待ってる!】
★トリ散歩・栃木編(前編•後編)完。