「真夜中 君は夢見て・・」
年が明け2009年1月14日、BMG JAPANよりリリースされた最後シングルで、
27作目のシングルとなった「GALAXY」。
この時点で、2009年のベストソングは、早くも是に決まった。
これ以上の楽曲など、存在するはずがない。
前年の年末より、へヴィーローテーションで公開されていたヴィデオ・クリップは、
この楽曲にピッタリの“愛”溢れる内容であった。
まるで、夢から目覚めたような櫻井敦司が、起き上がると、
今までない“優しさ”で、ささやき、唄い始める。
この銀河の片隅での出逢い。
この銀河の果てまで。
ずいぶん遠くまで飛んで来たものだと想う。
「GALAXY」を聴いて、想うことだ。

「真夜中 君は夢見て・・」
僕らは暗い闇の中で生まれた“愛”だ。
それは、何億分の一、何兆分の一の確率だろうか?
生命の誕生の確率に似ている。
いや、もしかしたら、宇宙の誕生の確率に、似ているかもしれない。
しかし、誰しも、同じ事であろうが、
生まれた時にその使命に気付く者は、いない。
きっと多くの若者たちと同じように、
「この退屈をぶっ壊せ!」
と、何処に当たっていいのかわからないような衝動に駆られ、走り始めた。
楽器なんてなんでもよかったんだ。
バンドが組みたかったから、みんな楽器を始めたのさ。
それは真夜中を疾走する暴走族の理由なき反抗に似ている。
何が、目的?
そんなことは、どうでも、いい。
とにかく、右も左もわからず、闇雲に疾走を続けた。
そうしているいるウチに、背中に違和感を憶えた。
時が、背中の向こうに通り過ぎて行く。
アクセルを踏み出すと、それまで一度も出たことのないスピードが出た。
自分で、自分を少しだけ、恐れた。
このアクセルはヤバい。
きっと、僕はどこまで、行けてしまう・・・。
これが、自由というヤツか?これは、本当に僕の力なのか?
半信半疑のまま、僕らは、徐々に、アクセルのコントロールを憶えて行く。
この速度だったら、この位のコーナーは綺麗に廻れる。
そう想った時、僕らの周りには、僕らの光に呼び出された若い連中が集まっていた。
“カリスマ性”?それは、その時、そう言えたかどうか、わからない。
でも、いい見本は、目の前にたくさん在ったんだ。
こんな風になれたらいいな、こんな風に生きられたいいな、って。
こんなキラメキの中に、美辞麗句の爪を立てて、舞台に立てたらどんな気持ちがするのだろう、って。
気がつけば、僕らは地元の人気者になっていた。
「退屈をぶっ壊せ!」と始めたものが、いつの日か、時を追い越し、
時に追われる毎日になった。
巣立ちの時、東京に出向いた。
故郷に、カヨワキ母を残し、僕らは人生の階段を上る。
夢のキラメキに少し酔いながら、その勢いに任せて、想いきって飛び込んで、みた。
周りの連中は、夢のお話だとか、まだ、若いからそのうち、自分の実力がわかって、あきらめるさ、とか。
「クソくらえ!」と思った。
「くつがえしてやる」と思った。
その凶器とも言える“若さ”そのものが、僕らの武器だった。
失う物など何もない。
そんな刹那主義だけが、この止まらない衝動の根拠になった。
そんな闇のトンネルの向こうに出口の光が見えるような気がした。
NIGHTLESS BABYLON を目指し、メディアを羽織って。
鮮やか過ぎたのは、無数の嫉妬の視線。
それが心地よかった。
お前も、やってみろよ! できるものなら!
掴み損ねたのは、束の間の休息。
いいさ。そんなもの求めちゃいない。
生きてる実感だけが、リアルに感じられる。
だから、ステージのことを、みんな“ライヴ!”って呼ぶんだろう?
このスポットライトのキラメキの中で、だけ、生きてる実感がある。
嗚呼、ライヴって気持ちいいな。
そんな感じ。
ネオンを隠せ! 鮮やかな彩りのシルエット!
わかっているさ。"HURRY UP MODE" 。もっともっとスピードをあげなきゃ駄目だ。
めまぐるしい毎日が過ぎていく。
まるで、身体を通り抜けていくように。
時って不思議だ。
スピードを上げれば上げるほど、スローモーションのように見えるよ。
地平線が小さく見える。
僕たちは、あそこに向かってるのだろうか?
わかんないけど、、、それでいい。
走ること自体が、気持ちいいから。
自分が生きてるって実感できるから。
この肉体を通じて感じられることは、凄くセクシャルだ。
何もかも、もう忘れて、瞳を閉じて。
オー・マイ・ダーリン。
先輩が言ってたんだ。
「ライヴって、セックスと一緒だぜ!」って。
その通りだ。
このスピードに身をゆるしながら、僕は天国へ逝く。
このまま、逝けたら・・・しあわせだよな。
誰も皆、見矢う。
揺れながら 舞い上がれ。
この胸を 切り裂かれ 遠ざかる。
正直言うと、こんなにしあわせなら、ずっと此処でやっていたい。
でも、別れはやってくる。
これが、成長ってヤツか。
闇が僕を呼び出すんだ。
これは、真実じゃない、って。
お前たちは、真実を明かせ、って。
それは、常識では、タブーとされる世界だ。
知ってる?
闇を覗くと、闇もまた、僕たちを覗いてるんだ。
それは、避けられない魅力的なもの。
タブーこそ、真実なんじゃないかって。
だから、別れを告げた。
だから、KISSして。
もう、一度だけ。。。
それで、僕は、次へ進めるから。
暗い暗い闇の中で、誰かが、僕を呼んでるんだ。
天使のざわめき、悪魔のささやき。
意識が薄れていく中、僕は真実に触れたような、そんな気がした。
そこは、油絵の絵の具の赤と黒が混じり合ったようなところさ。
この世の何処よりも熱く。
この世の何処よりも醒めてる。
え!なに?
それはイケナイことなの?
そうか・・・。
足下を見つめ直せってことかい?
わかった。
信じられるのは、仲間だけ。
うわべだけの奴らは、勝手に去れ。
誰も止めやしない。
僕たちは、真実に、刹那だけでも、触れられたのだから。。。
僕たちこそ、惡の華だ。
幻想を魅せつけてやるのさ。
そして、また、KISSしてお別れだ。
狂った太陽に焼かれる前は、僕たちは、それでもまだ、地上にいた。
飛べるなんて想っても見なかったよ。
でも、飛べたんだ。
愛する人との別れを通じて。
僕たちは何者なんだろう?
或る日、ふいに気付いたのさ。
翼の存在に。
力を抜いたら、ソラに舞い上がった。
迷って、たけど飛んでみることにしたよ。
ダークサイドからは、相変わらず誰か僕を呼んでいる。
一緒に、“絶頂”を迎えようゼって、呼んでるんだ。
この声に従ったら、飛べたのさ。
これが進化のトビラなのかい?
けれどまだ迷っている。
たしかに飛べるけど、、、飛び出すべき場所はどこ?
そうして飛んでいったところで何があるの?
行き先を迷いながら、飛ぶ事への、闇への憧れを抱える僕。
すごく中途半端な存在に見える。
キラメキを身に纏ってみても、
やっぱり僕は、真実を知りたいよ。
それは、やっぱり、イケナイことなの?
だから、僕らはカルトを気取った。
僕たちには、あまり近寄らないほうがいい。
少し離れて眺めてくれるかい?
そうして、僕らはカルトを装ってみる。
血みどろのこの世界へ。
来てもいいけど、帰り道はないよ。
そうやって自分を傷つけながら、
それでも、僕らは、変体を続けた。
どうして羽根がないのだろう、と、嘆いて見せたりもしたけど。
飛びあがることが僕らの使命なら、
闇の誰かが、そうしろ、というのなら、恐る恐る地上を離れようとした。
そうしたら、決して此処が、自分たちの欲望を満たす場所ではないと気付いたよ。
僕の中には何もなかった。
だから、行かなきゃ。
早く、行かなきゃ。
ひょっとしたら、もう二度とは帰れない。
生まれてきたあの海へ・・さようなら すべてのものよ。
三度目のKISSは、最後のKISS。
これから向かう先に待ち受けるもの。
ひょっとして【死】かも。。。
暗い闇の中へ浮かび上がった僕ら。
相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まりを離れ、
右も左もない空間に、その暗さにただ漂よう。
これが【誕生】なのかも、しれない。
さあどっちに向かおうか?Somewhere?
くそ!わかんねぇ。
あ?こっちか?そうか。こっちだ!
感じるまま行こう。
コスモスが咲き乱れるこの世界の果てに。
血にまみれた愛だけがそこにあるんだ。
見えるかい? 君に似てる愛だけがそこにある。
あれは僕たちの居た大地か?
みんなお元気で、御身体だけは気をつけて。
なんだか、あたたかいんだ。
今までみたいに北風を吹かすだけじゃ駄目なんだって。
アソコを離れて、初めてわかったよ。
あの日狂ってた太陽みたいに。
すごく熱くて・・・。
すごく醒めてる・・・。
天国を探そう。
天使達の星を。
限りない旅に出よう。
サソリと十字を抱いて夜の果てへ。
サヨウナラ夢よ。
僕らなら行けるはずさ。
そろそろ、太陽系を離れたようだ。
もう、僕たちの惑星がすごく小さく見えるんだ。
もう、引き返せやしない。
これが銀河?
らせんの星雲を上り、流線形の最新型に乗って行くよ。
周りに見える無数の光輝く星たちは、まるで、亡くなったアノ人みたいなんだ。
銀色の光を放つ星達。
本当に、綺麗だ。
血を流す事もなく涙も無い。
深い海の闇になるみたいだ。抱き合って。
君は微笑み浮かべて何かを探し続けてるけど、
それは、永遠に見つからず、やがては疲れ果て眠れる。
まだ、あの惑星では、戦いが、絶えないらしい。
僕らは随分、宇宙を自由に飛べるようになったんだ。
今では、いろんな時代にワープすることだって・・・。
少しブレードランナーみたいな近未来にだって行ける。
銀河は自由なんだ。
モナリザを描いたダヴィンチの時代にワープして、イエスの真理を知ったり。
隣に咲く、名もなき“花”にも気付くことが出来たし。
エロスとタナトスの神話に乗って、哲学の世界の本能の運命を覗いたり。
たまには、十三階に登って月光浴したりすることもあったね。
そこでは、天使が悪魔で、悪魔が天使ってことも、本当だったのさ。
それで、わかったんだ。
人生は【愛】と【死】さ。
間違いない。
だから、ダイジョウブって。
だから、ダイジョウブって。
ありがとう。
此処に居てくれて。
君が居るから、僕は、自分の存在を確認できるよ。
御機嫌よう。
君は元気かい?
僕は、相変わらずさ。
寂しくはないよ。
愛してるから・・。
この銀河の片隅から、愛を込めて。
君に贈るよ。

「真夜中 君は夢見て・・」


GALAXY (4:19)
(作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿 編曲:BUCK-TICK)
君のその胸 ハートマーク踊る
濡れている羽震わせて 命キラキラ踊りながら
さあ目覚めだ さあ飛びたて さあゆっくり ほら
君のその胸 ピースマーク描く
太陽羽透かしてみれば 命ギラギラ溢れそうさ
さあ目覚めだ さあ飛びたて さあゆっくり ほら
君はもう飛べる 何処だって行ける
天の水辺羽遊ばせて 命ゆめゆめ踊れBABY
さあ夜明けだ さあ羽ばたけ さあゆっくり ほら
悲しい予感する夜は 闇夜を走れ 走れ
真夜中 君は夢見て泣いている とても綺麗な夢をみた
真夜中 君は夢見て震えてる 何も悲しい事は無い
君のその胸 ハートマーク踊る
濡れている羽震わせて 命キラキラ踊りながら
さあ目覚めだ さあ飛びたて さあゆっくり ほら
悲しい予感など無いさ 僕は嘘をついた
真夜中
真夜中 君は夢見て泣いている とても綺麗な夢を見た
真夜中 君は夢見て震えてる 何も悲しい事は無い
真夜中 君は夢見て泣いている とても綺麗な夢を見た
真夜中 君は夢見て・・

