BUCK-TICKは、2009年2月11日(水・祝)の18:00~18:40頃まで、
『Wednesday J-pop TV Show』に出演し全国ネットで放映、
その姿を、現した。

『Wednesday J-pop TV Show』では、ライヴアクトだけでなく、
メンバー5人揃ってのインタヴューにも回答している。

『不動の人気を誇る5人組ロックバンド“BUCK-TICK”。
独特のポップ・センスとダークな世界観を併せ持つ彼らが、
生きることへの前向きな想いを込めた
ニューアルバム『memento mori』を引っさげ登場します』

と、ナレーションを決める松尾貴史は、後にインタヴューでもBUCK-TICKと絡むことになる。

大声援の中、登場する5人のメンバー。

――割とこういうトーク番組ではないですが…音楽番組でもトーク有りお番組に出演されるのは、
珍しいですよね?特に生放送とかって?

櫻井「珍しいです。はい」

――始まる前、スタッフに「今日はメンバーしゃべらないから、気にしないでやってほしい」って、
言われたんですけども…頑張ってしゃべって頂けるでしょうか?

櫻井「はい(即答)」

――年末には恒例の武道館ライヴをやられたそうですけども。このライヴはどんな感じだったのでしょうか?

櫻井「ま、一年の締めくくりみたいな。
その、締め、みたいな感じで、いつも演ってるんですけども。
ま、みんな22年もやってるんで、色んな曲を演れますね。」

――2000年からずっとやってるそうなんですけど、12月29日っていうのは、もう、決まってる?

櫻井「あの…、たまたまイベンターさんの持ってる日が・・・(29日)」

――(笑)ぶっちゃけますね!ずいぶん!もっと凄く意味のある日かと思いましたが…。

櫻井「いえ…、その日しか空いてなくて…。」

――(会場笑)…そして、そのライヴでMCをほとんどしない、と?伺ったんですけども。
MCは、ほとんどしないんですか?

櫻井「いや…(観客に)そんなことない…ですよね?ねぇ?」

――(観客に)どうですか?MCなさいますか?
(します!します!)します!って。
どんなことをお話になったり、するんですか?

櫻井「…やっぱり、MCって、ひとりしゃべりじゃないですか?
なんで、あんまり、苦手なんですけど…まあ、今日はいい天気ですね、くらいは・・」

(観客笑)

――ホントですか!?
(他のメンバーの)皆さんは、あまり、ライヴ中、しゃべられないんですか?

樋口「…そうですね。あんまり……恥ずかしがり屋なんで…」

――じゃあ、皆さん恥ずかしがり屋さん、なんです、かね?ね、今井さん?

今井「はい・・・」

――ね、先ほどから、あまり目を合わせて頂けないんですが。
――リハーサルの時もね。一度も目合わせて頂けないですもんね。
――でも、それは、嫌われてる訳ではなく…恥ずかしがり屋さん、ということで。
ポジティヴに捉えて行きたいと思います。
さあ、アルバムのお話も伺って行きたいと思います。
アルバム『memento mori』。こちらをリリースされますが、
こちらのタイトルに意味を教えて頂いても宜しいですか?

今井「・・・タイトル?ええ、まあ、
黙っていても、明日はやってくるんで、前向きに、生きたら、いかがか、と」

――これは、ちなみに何語なんでしょう?

今井「ラテン語です」

――ラテン語?あまり訊いたことない言葉で。
――ラテン語は?昔から(笑)?

今井「(笑)・・・ちょっとダケ・・・」

――でも!ラテン語から抜粋してくるには、何か意味があったんですね?
惹かれたモノが、あったんですよね?

今井「ええ。たまたまその言葉を知る機会があったんで・・・。」

――でも、凄く前向きな意味があったということで、メッセージを。
ここで視聴者に方からお便りが届いてますので、読ませて頂きます。
「ニューアルバムのタイトル『memento mori』という言葉に、
今生きているこの瞬間を大切にしょう、というプラスの意味を感じたのですが。
メンバーの皆さんが“今生きてるな”と強く感じる瞬間を教えて下さい」
というメッセージを頂きました。
――深いですね・・・。
――深いですね。今生きてるな、って感じる瞬間。じゃあ櫻井さんから。

櫻井「・・・まあ、こうやって、みなさんと、目を見て…まあ、ぬくもり、ですよね。」

――・・・素敵な…。
――モテるは。これは・・・。
――モテますね。この意見はカッコいいですねぇ~。
――樋口さんはどうですか?生きてるゾ!って思う瞬間は?

樋口「いや~ぬくもり、って俺が言っても駄目だなぁ~。椅子。足が着かないんですよね~」

――(笑)高いですよね。椅子。
――高いんですよ!ホント、すみません。

樋口「でも、みんなとこうやって逢えるのが…やっぱり」(会場拍手)

――そうですよね。せっかくですから皆さん。おひとりずつね。
――ヤガミさん。どうですか?

ヤガミ「そうですね。やっぱり、こうやってBUCK-TICKで活動してる時ですね。
ええ。ライヴ演ってる時です。」

――おお!
――皆さん、やっぱりカッコいいですね。
――誰も、風呂入ってる時とか、言わないですね。
――星野さんは?

星野「オレは・・・メシ喰ってる時」

――あら!ハイ!来ました!メシ喰ってる時!
――でも、最後、今井さんが。さあ、今井さんは?

今井「・・・え~と、酔っ払ってる時。ですかね?」

――酔っ払ってる時!生きてるな!って感じるんですね。
――でも皆さん、やっぱりカッコいいですね。
さあ、そして、BUCK-TICKさんと仲の良い?この方と中継が繋がっています。
どなたでしょうか?サプライズですよ。こんにちは。

松尾貴史「こんにちは」

――松尾さん!すごく忙しいところありがとうございます。
ところで、BUCK-TICKさんとは、どんな関係なんでしょうか?

松尾「あ、あの、生きてるな~っていう関係です~」

――(笑)見ていてくださって。ありがとうございます~。

松尾「あの~U-TAくんとのね。ちょっと一緒に冗談でバンドを組ませて頂いてるんです。
U-TAくんはベースで。あとドラムスとか、ギターとか色々居るんですけど。
僕は、なんにも音楽的才能がないので、“支配人”って役を」

――“支配人”って役があるんですか?
さあ、ところで樋口さん?

樋口「そうです。役者さんの勝村さんとか・・・
そういう面白いなんか出来ないかって始まったんです。」

――名前がポークソテーズ?
面白いことということで、今流れてるのが「ハンバーグの作り方」っていう曲?
これ、どういう活動をなさってたんでしょう?

松尾「あの~友達のお祝いかなんかに集まって、いやがらせの様にライヴを演るという」

――いやいや。豪華なメンバーですけども。
そして松尾さん。松尾さんだけが知っているBUCK-TICKさんの秘密をちょっと…。
言える範囲内で構いませんので、ちょっと教えていただけませんか?

松尾「ああ、言っていいですか?」

――生放送ですので、耐えられる範囲でお願いします。

樋口「あの!危険じゃないところで!お願いします。はい。」

松尾「危険じゃないところ?そうですね。どうしようかな?」

櫻井「え~あの・・・U-TAの危険なところでいいですよ」

松尾「危険なところでいいですか?」

――ハイ!櫻井さんからOK出ました!

松尾「あの酔っ払って、打ち上げで、
その場にいた人間が全員全裸になった時があったんですけど…。」

樋口「うわー!駄目じゃないですか!」

――これで、軽い方だと?

松尾「でもね。モチロン男ばっかりですけどね。
ソン時に、あの豊くんは、美意識があるので、、、最期まで黒い靴下だけは、履いてました。」

(会場メンバー大爆笑)

樋口「うわ~もうまいったな~。こんなに人が沢山いるのに・・・」

――松尾さん、お忙しい中、素敵なお話まで聞かせていただいちゃって。

松尾「今もう、締めようとしてますね?」

――はい。もう、その通りです。正解です。
生放送なもので~ありがとうございました~。

松尾「いいとも~」

――いや~。おそらく、樋口さんはその時、一番、生きててよかったなぁ~と、
思ってたとおもうんですけどね。
BUCK-TICKさん!ありがとうございました~!後ほど歌って頂きます~!



と非常に楽しい内容のトーク部分の放映であった。

こんなにフランクにテレビ番組に登場する彼らを見ることが出来るとは想いもしなかった。

まずは、ゲスト出演の松尾貴史に感謝したい。
照れるU-TAの素顔は、やはり、チャーミングである。



松尾貴史は、ナレーター・DJ・俳優・コラムニストなど務めるマルチタレントである。

愛称及び旧芸名の「キッチュ(kitsch)」は元はドイツ語の美術用語で、
「まがいもの・粗悪品・俗悪趣味」などを意味する。
改名した現在でも、小劇場の役者や、関西出身の芸人・タレント、原田芳雄や立川談志など、
古い知人からは未だ「キッチュ」と呼ばれている。
(松尾曰く沢田研二の愛称「ジュリー」と同じと冗談めかしている)。
自分のことを“放送タレント"と名乗る。
“タレント”と言われても何やっている人かわからないから
・・と2007年11月19日放送のNHKスタジオパークで語っている。


超常現象・オカルト懐疑論者として有名で、
『たけしのTVタックル』(テレビ朝日系列)が政治主体になる前には、
大槻義彦・野坂昭如と共に「超能力バスターズ」として出演して
肯定論者と激論を交わしたこともある。
また超常現象懐疑論者集団のJapan Skepticsのメンバーである。
所属事務所:古舘プロジェクトの才気あふれる人物と言える。

そんな人物とも人脈の広さを感じさせる交友関係を持つ、
社交的な樋口豊の姿が、印象的である。

松尾貴史は、1993年4月に、奥野敦士、勝村政信、原田喧太、川村かおり、樋口豊と、
幻のバンド「ポークソテーズ」を結成した。
後に、中野裕通、金山一彦、芳本美代子らも加入。
草月ホールでの単独コンサートも開催している。
楽曲「ハンバーグの作り方」は2か月間ものあいだ、NHK『みんなのうた』で放送されることになった。

このインタヴュー中に、今井寿が、興味深げに、U-TAに、
「こんなのやってたの?」 と聞いている姿が映る。

笑顔でU-TAは「うん」と頷く。
BUCK-TICKの活動の自由度を物語るエピソードのひとつであろう。

$【ROMANCE】

バンド初期の頃は、地元群馬の先輩にあたる松井恒松(BOOWY時代)のフォロワーとして、
ダウンピッキング一本のベース奏法を貫いていたが、
BUCK-TICKの音楽性が変化したアルバム『狂った太陽』の時期からかつてのスタイルを捨て、
豊富なヴァリエーションでベース・プレイを追求するベーシストとなった。
BUCK-TICKの楽曲が16ビートの横ノリ主体になると、
兄であるヤガミトールと二人でスタジオに篭り、猛練習に励んだと言う。

このリズム隊のヤガミ兄弟の変容こそが、BUCK-TICKの音楽的な多様な展開を可能にし、
他の何処にも存在しえないロックバンド“BUCK-TICK”の、
オンリー・ワンな存在感を支えているのは間違いない。

同時に今後、BUCK-TICKが如何なる趣向に挑もうとも、
この無敵の兄弟がいる限り、不可能なジャンルは存在しないと言えよう。


櫻井敦司が語っていたことであるが、“楽屋でヴォーカリスト”と呼ばれるヤガミ兄弟も、
実は、非常に恥ずかしがり屋で、マイクを向けられると、いつもの調子で、冗談が出ず、
意外と一番真面目な返答をするというのである。
そして、気遣いは、この兄弟の特質であるとも言えよう。

特に樋口“U-TA”豊には、それが、ベース・プレイにも滲み出ている。

それは、もしかしたら、ベースというポジションが、彼にそうさせるのかも知れないし、
彼の持つ特質こそが、ベースという楽器の天性的な性質と言えるのかも知れない。



樋口“U-TA”豊は語る。

「たしかにメンバーそれぞれ、微妙なリズム感の違いがありますからね。
“気持ちいい!”っていう感覚もそれぞれ日によって違ってたりもするし。
その中で一番適切なポイントを見つけて弾く、って感じですから。
今井くんとか、たまに絶妙なギターを弾くから(笑)。
それと歌との間を“どう取り持つかか?”ってこともあったりして。
とは言え自分探しから始まっていくことはないんですけどね。
自分はこういうスタイル、っていうのはすでにあって、
それを使ってどうみんなと合わせていくか?という部分で」

――バンドの中の自分のポイントって、どうやって見つけていくの?

「今井くんやヒデの曲が出来上がってきた時点で、
そこにどんなアッちゃんの歌が乗るのか想像しますね。

もちろんみんなで音出すわけだけど、
最終的には、アッちゃんが歌うことで魂が入るわけだから。
今回はその歌をいつもより早めに聴くことが出来たから良かったんですけどね。
“こんな感じで歌いたかったんだ”っていうのがすぐ分かって。
もっとも俺とアニイは今井くんやヒデが自分で歌ったデモ作った時点で、
もうリハーサル・スタジオに入ってるんだけど」

――そこでは?

「まず、デモをもらった時、電話なりで話はするんですよ。
もしもそこに印象的なベースが入ってたら“これはどの程度残しておいた方がいいの?”とか聞いて。
それで“適当に変えて”ってなる時もあれば、
“実はそのフレーズは想い入れがあるし後からギターと絡めていく予定だから残しておいて”ってなることもある。
もちろん“どんな感じ?”って聞いて“よろしく”で終わっちゃう時もありますが(笑)。
その上でスタジオに入って、アニイと曲を聴きつつリズムを煮詰めていくんです。
デモに入ってるのは機械で作ったリズムですからね。
それをどう生に置き換えていくか、っていう。
そこで“こんな感じにしたらいいんじゃない?”ってアイデアが湧いたら録音して
今井くんなりに聴かせて“ちょっとやり過ぎ!”みたいな話になったり(笑)」

――ヒデくんの場合は?

「ヒデはデモを仕上げるのが早いので、
時間がある時は“じゃあ俺行くよ”って言ってスタジオに来てくれるんですよ。
そこでディスカッションする。
昔はそういうの全部レコーディング本番でやってたから結構大変だったんですけどね。
その点、今回はレコーディングまでに2ヶ月ぐらい準備期間があっんで、余裕もありましたよね」

――その間、ずっとアニイと?

「前はそうだったんですけど、
事前にあんまり2人でやり過ぎるとレコーディングの時、新鮮さが失われることに気付いてね。
固めたものをただ録る、みたいな。
レコーディングもまずこの2人で録るところから始めるわけだし。

だから今回は自分一人で煮詰めることも多かったんです。
レコーディングの時にもまたディスカッションはするんですけどね」

――やはり入念な準備を経てるんだね。

「準備の時間はもっとあっていいと思ってるんですけどね」




そうして出来上がった新作『memento mori』を樋口“U-TA”豊はこう語る。


「17枚……自分が好きな海外アーティストでもアルバム17枚目とか聞いたら
“大丈夫か?”とか思っちゃいますよね(笑)。
だからもう気にしないようにして(笑)」

――でも、煮詰まることなく作り続けているように見える。


「そうですね。いいテンションで出来てると思います。
アルバム出来て、ライヴのリハーサルも凄く新鮮でドキドキするし」






17枚目にして、最高のグルーヴの傑作アルバム『memento mori』。
今だに、ベテラン・ベーシスト:樋口豊をドキドキさせる刺激がここにはある。





タイトルの『memento mori』は、ラテン語の「自分がいつか死ぬことを忘れるな」
という意味の警句だという。そう、いつか人は死ぬ。
君も、僕も、大好きなあの子も。
だから、今を、この瞬間を楽しむんだ。
死ぬ気で踊り続けろ──この素晴らしき世界で。



$【ROMANCE】