「悲しい予感など無いさ 僕は嘘をついた
真夜中」
シングル盤「GALAXY」も「HEAVEN」と同様に通常盤(BVCR-19742 税込1,050円)と、
ボーナスDVDが付属された初回生産限定盤(BVCR-19743~4 税込1,890円)の2タイプがリリースされた。
ボーナスDVDには楽曲のヴィデオ・クリップと「Making of MUSIC VIDEO」が収録され、
また初回生産限定盤には、
2008年のシングル「HEAVEN」との連動となる抽選特典応募券が封入されていて、
2009年初頭に赤坂BLITZにて実施された無料ライヴへの招待が抽選で当たるという特典がついた。
「Making of MUSIC VIDEO」では、
「GALAXY」のジャケットにもなった櫻井敦司のブラック・アイ・メイクを
他のメンバーも施して、インタヴューに答える姿が見られる。
高速で撮影のセットが組み上げられるシーンから始まるこの映像は、
円形のステージの周りを回る高感度カメラから映し出される疾走感で、
この「GALAXY」のドライヴする躍動感が表現されていることを教えてくれる。
シルバーのレスポールを肩に掛けながら登場する黒装束の星野英彦の後ろからは、
サイドを薄く刈り上げたモヒカン族の末裔ヤガミトールが、
スティックを軽快にスウィングしながら現れる。
櫻井敦司のこの時のトレードマークとも言えるブラック・シルバーのトレンチを着付けるデザイナー。
黒でかためられた衣装に、鈍く輝きを称えるシルバー・スタビライザーを持つ今井寿も、
この黒い円形のステージに上がる。
襟元を直してもらう樋口豊もブラック・ビューティーなトレード・マーク“ゼマティス”を光らせる。
ディレクターから注意の声が上がる。
「くれぐれも、皆さん!落ちないように、注意してください」
絶景といえる五角形の布陣を組むBUCK-TICKの5人。
スポットライトとともに回転する高感度カメラが動き出すと、
「GALAXY」の撮影が始まったようだ。
真剣にモニターをチェックする5人。
ヴィデオ撮影もこの長いキャリアの中で、幾度となく繰り返されてきた仕事のひとつだ。
しかし、そこにも楽曲製作やレコーディングと同じ温度のクリエイティヴな情熱がある。
いいものをファンたちに贈りたい。
シンプルにして、究極の姿勢と言えるだろう。
「いつもの動きより・・・
意外と止まってたほうが・・・絵になるような。
カメラが動いてくれるんで。
っていうのが、さっきわかりました(笑)」
と撮影について語る今井寿。
樋口豊は厳しい現場でもスタッフと冗談を交わし、
その場の空気をなごらかに癒してくれる。
天性のムードメイカーだ。
「激しく演りすぎて・・・
(落ちないように)」
「・・・あれ?
(U-TAさん)いなくなってる・・・。
とかならないように(笑)」
マイペースな星野英彦は、
「演ってる方は、あんまり・・・普通というか。
いつも通りの演奏で・・・でも仕上がりが楽しみだな、と。
あの・・・回るのが・・・。」
淡々とこなしていくなかに、熱いアクションを込めるヒデ。
ヴィデオクリップ本編では顔を見せることにないモデルの美少女も、
このメイキング映像では映し出される。
真夜中に、綺麗な、そして哀しい夢を見るのは彼女だろうか?
金粉が舞い散る中、黒いドレスで、BUCK-TICKを待っている。
この金粉を舞い散らせるのは櫻井敦司だ。
ジャケットのダークなブラック・アイ・メイクが峻烈に映し出される。
気付けばメンバーは皆、このアイ・メイクを決めている。
サービス精神旺盛なアニイは、このメイクのバッチリ決まった姿から、
カメラを下に落としていき、スリッパ履きの自分をネタにしてくれる。
なんとピンクのスリッパが、なんてキュートにアニイに似合うことか。
アンニュイに目を傾げるブラック・アイの今井寿はまるで、モナリザのようだ。
続くブラック・アイの星野英彦は嬉しそうに語る。
「目も充血していますが・・・頑張ったかいがあるように、
いい作品になってると思います」
今井も
「(うなずいて)・・・いいモノが出来ると思います」
U-TAも
「結構、押しましたが・・・。いい映像がとれたと思います」
アニイは抱負も語ってくれた。
「2009年は精力的にやるんで。まあ、宜しくお願いします(笑)」
最高の笑顔だ。
そして、櫻井敦司のコメント
「まあ、スタッフの方も、かなり過酷な条件で撮って頂いてるので、
ええ、そういう結晶が皆さんの目に映ればいいな、と思ってますけど」
とスタッフへの労いを忘れない。
前年末の恒例となる年末スペシャル・ライヴ【THE DAY IN QUESTION】を初開催となる
京都、静岡を加え、伝説の12月29日には日本武道館で実施したが、
これがシングル「GALAXY」と2月18日リリースが決定していた『memento mori』への
導火線的な役割を果たしていた。
『memento mori』の第二弾シングルとなった「GALAXY」は、
レコーディング制作時から、シングル用の候補一番手であったらしい。
今井寿主導のもと進行するBUCK-TICKのレコーディングであるが、
メンバーやスタッフも、シングル的なアプローチで、各パートの収録及びアレンジに当たっていた。
そんな中で、当初、「GALAXY」は、今井寿が歌詞を書いていたというエピソードが、
ファンクラブの会報にて、伝えられている。
今井寿曰く
「やっぱ違うかって」
という事で最終的には櫻井敦司の手による作詞がなされることになった。
そして出来上がった「GALAXY」を聴く限り、今井寿の判断は正しかったと言えるだろう。
BUCK-TICK楽曲のカラーに、やはり、作詞作曲者の独特なニュアンスによって、
楽曲の印象が決定しているは、事実であろう。
一心同体のBUCK-TICKの結束力には、舌を巻くものが存在するが、
コンポーザーのキャラクターによって楽曲の個性が決定し、バンド編成の効果で、
その魅力が増幅されるという訳だ。
しかし「GALAXY」という楽曲ほど、櫻井×今井チームの象徴的な印象を放つ楽曲もない。
今井寿のやはりさすがと言えるようなメロディ・ワークに、
深みのある櫻井敦司の詩世界というBUCK-TICKオンリーな色が本当にマッチする楽曲である。
そこらへんのクールな今井寿のセンスには、感服する他あるまい。
シングル・リリースされた「GALAXY」と「HEAVEN」は、
双方ともにシングルを意識して制作されたという話が載っているのだが、
スタッフにも絶賛であった「GALAXY」が、先行シングルに先にあがっていたが、
コンポーザー今井寿の意向により、「HEAVEN」、そして「GALAXY」という順で発売が決定したシーンに、
今井寿の細やかな拘りを感じずにはいられない。
この二曲。
BUCK-TICKという楽隊としても、双方ともに意表を突くストレートなメロディを持っている。
これはより幅広いリスナー層に、向けて発信するという彼らの意志表明と取れるだろう。
メジャーデビュー22周年を数えるこの年、
決して短いとは言えない、そのキャリアの中でも、
未だ、広がりを追求するその姿勢には、敬意を表する他ない。
櫻井敦司による歌詞はシングル・ナンバー「RENDEZVOUS~ランデヴー~」に見られるような、
祝福の愛に満ち満ちているし、これもシングルナンバーの「空蝉-うつせみ-」からであろうか、
人の親としてのやさしさで満ち溢れている。
人間の人生における【愛】と【死】を教え諭すのが、人間の親の使命である、とでも、
言いたげな櫻井敦司の歌詞には、人間的な成長が垣間見れることが可能だ。
担当した櫻井敦司によると、
「歌詞も突き放してカッコ付けるばかりではなく、
諦める部分と、それでも、ここで生きて行くんだ」
という諦めない部分を表現したとされる。
「自分はこんなにもちっぽけで頼りないけど、嘘をついてでも、あなたを守りたい」
という気持ちは、
やはり「GALAXY」の一節
「悲しい予感などないさ 僕は嘘をついた」
に象徴的に表現されている。
等身大の親の愛をここまでストレートに表現するには、
並みの人生経験では不可能であろうし、
同時にいかにも、いつもストイックで謙遜気味な櫻井敦司らしい表現である。
そのストレートさが、我々の胸を撃ちつけるのだ。
「GALAXY」にヒットされた我々の胸に残る“愛おしさ”は、
この今井寿のポップなメロディが包み込んでくれる。
今井作曲の楽曲に見られる特質のひとつとして、
楽隊としてのBUCK-TICKのポテンシャルを最大限に発揮する素材である、というのがあると思う。
星野英彦のアコースティックで奏でられても可笑しくない旋律で進行する「GALAXY」は、
樋口豊にやさしいベース・グルーヴと、
ビート・センス溢れるハードヒッター、ヤガミトールの軽快なドラム・ワークを一層引き立てる。
「GALAXY」にこそ、
BUCK-TICKたるモノを内包したエッセンスのすべてが詰め込まれていると言っても過言ではない。
唯一、少な目で配慮されたダーク・ロック色は、
「GALAXY」のジャケット写真に見られるブラックのアイ・メイクで、
パーフェクトに補完されることになる傑作ヴィデオ・クリップの完成といえるだろう。
偶然ではないにしても、コントラストとしての「HEAVEN」の純白を生かす最高のカラー、
それが「GALAXY」のブラックであった点には、感動すら憶えるだろう。
真っ白と闇の黒のコントラストが、今までになかったBUCK-TICKに、色を染める。
それは、モノトーンの色合いなどでは、断じてなかった。
人生に凄味を感じさせる様々なカラーが重なり合い、
その結果として浮かび上がったカラーこそが、この二曲の“白”と“黒”であった。
シンプルにして究極。
僕個人としては、究極の一曲という意味において「ROMANCE」の黒を掲げていたが、
さらに、その上位に君臨するインパクトが「GALAXY」に存在した。
「ROMANCE」が彼らの漆黒の闇を表す“黒”ならば、
「GALAXY」の“黒”は、生きることの凝縮された結晶である。
それを実現したBUCK-TICKは、2009年を迎えた時点で、
すでに“銀河”の彼方の存在となり得た。
またアルバム『memento mori』のリリースを控え、
メディアに姿を再び表し始めたBUCK-TICKの凄味は、他のどんなものとも比較できるものではなく、
ただただ、孤高の存在として君臨するひとつのシンボルであった。

死を想いながら、聴く「HEAVEN」そして「GALAXY」について
アルバムリリース直前の今井寿と櫻井敦司がインタヴューで答えている。
――『memento mori』(死を思え、死を忘れるな)というタイトルは、どこから生まれたものですか。
今井「曲作りに入った頃ですね。
自分の持っているオブジェのタイトルが「memento mori」で、
意味は何となくしか知らなかったんで調べてみたら、
語感も面白いし意味も面白い。
その言葉をキーワードに制作する事をメンバーに提案したんです。
それがアルバム・タイトルになりました」
――中世文化の象徴といったイメージもありますが。
今井「そうですね。
でも退廃とかそっちではなくて、もっとポジティブな方向の意味合いで。
誰にも必ず平等に訪れる、避けられない事として死はある。
だからというんじゃないけど、楽しく生きましょう、と」
――昨今の世界情勢や事件のニュースを見ていると、様々な形での死を意識せざるを得ないんですが、そうしたことと関連が?
今井「そこはあまり考えてないです。
意識して意味を込めてはいないけど、込められているのかもしれない。
ただ、死に対しての感覚が、麻痺しているかなとは思います」
――ちゃんと死を意識して生きて行くということでしょうか。
今井「基本はそこだと思います。そうだったら良いなと思う」
――それを作品のテーマに制作していったんですか。
今井「アルバムのテーマとして、枠というか縛りは作らなかったので、
作業している中で、そういうものが自然と出てきたのかなと思います」
――歌詞は櫻井さんがメインで書くイメージがありますが、今井さんが歌詞を書いている曲も多いですね。
今井「そうですね。書き過ぎかなと思ったんだけど(苦笑)。
いつもどっちが書くか決めないで、曲を作って行くんだけど、
いっぱい書くバージョンの時は、これぐらいかな」
――言葉にしたい事が多かったんでしょうか。
今井「曲によって、ですけど。
フレーズが出てきちゃったりとかテーマがうかんだりすると、自分で書いた方がいいかなと考えて」
――シングルは「HEAVEN」「GALAXY」とスケールの大きなタイトルですが、
櫻井さんも「memento mori」を意識して作詞したんでしょうか。
櫻井「最初はアルバム・タイトルに決定してはいなかったので、
自分でテーマを見つけると言うか、大きなテーマで書こうと思っていました」
――櫻井さんの歌詞でも、死については昨今のニュースを連想させるところがありますね。
従来の作品とは、死に対するアプローチが違う印象もあります。
櫻井「たぶん今までは、僕個人で言うと、
腫れ物に触らせる的な感じを醸し出していたのかもしれません。
危なっかしいものに触れされるというか。
遠い話だったのかもしれないですね。
今はちょっと近いような気がしている。
12年飼っていた猫が死んだり、肉親の死だったり、いろんなニュースだったり。
やっと目を背けるんじゃなくて現実として捉えてきたのかな。
一番違うのは、曲の方向。
今井のエネルギーみたいなのが、すごく上に向かっていると思うんです。
そういうのを意識していたら、全体の感じが違ってきた」
今井「急に何かが変わったわけじゃないけど、ちょっと考える事があって。
やっぱり兄弟とか家族とか、夫婦でも友達でも、ずっと続くことはないわけで。
どこかで別れがある、ということをすごく意識し始めたかな」
と語るふたりに、ひとつのイデアを見る。
「GALAXY」「HEAVEN」こそ、人類のイデアだ。
大袈裟では、決して、なく・・・。



GALAXY (4:19)
(作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿 編曲:BUCK-TICK)
君のその胸 ハートマーク踊る
濡れている羽震わせて 命キラキラ踊りながら
さあ目覚めだ さあ飛びたて さあゆっくり ほら
君のその胸 ピースマーク描く
太陽羽透かしてみれば 命ギラギラ溢れそうさ
さあ目覚めだ さあ飛びたて さあゆっくり ほら
君はもう飛べる 何処だって行ける
天の水辺羽遊ばせて 命ゆめゆめ踊れBABY
さあ夜明けだ さあ羽ばたけ さあゆっくり ほら
悲しい予感する夜は 闇夜を走れ 走れ
真夜中 君は夢見て泣いている とても綺麗な夢をみた
真夜中 君は夢見て震えてる 何も悲しい事は無い
君のその胸 ハートマーク踊る
濡れている羽震わせて 命キラキラ踊りながら
さあ目覚めだ さあ飛びたて さあゆっくり ほら
悲しい予感など無いさ 僕は嘘をついた
真夜中
真夜中 君は夢見て泣いている とても綺麗な夢を見た
真夜中 君は夢見て震えてる 何も悲しい事は無い
真夜中 君は夢見て泣いている とても綺麗な夢を見た
真夜中 君は夢見て・・

