「踊ろうぜ!ベイベー!!」


BUCK-TICKは、2009年2月11日(水・祝)の18:00から、
音楽情報番組『Wednesday J-pop TV Show』に出演。
貴重なメンバー5名が、並んでトークをする姿が、全国ネットに流れただけでなく、
最新シングル「GALAXY」に続いて演奏された前アルバム『天使のリボルバー』から、
痛快なロックンロール「モンタージュ」がプレイされたが、
このチューンが、この後のライヴツアーの強烈なフェイントになっただけではなく、
2005年に、やはりNHKの音楽番組『BEAT MOTION』で、当時ど真ん中に浸かりきっていた
“GOTHIC”のラム酒の海で、「ROMANCE」と「DIABOLO」を演奏した後で、
ハイパー・デジ・ロケン「残骸」をパフォーマンスした場面を思い起こすことになった。

テレビ放送での、BUCK-TICKエントリー・ナンバーは、
一筋縄ではいかない、まさしくマジック・セット・リストと言えるだろう。


「降り注ぐ太陽 眩しくてたまらない
 いっそ ただ 影のよう
 消し去って かまわない」




フランスのサッカー選手:ジネディーヌ・ジダン(Zinedine Yazid Zidane)は、

「フェイントは相手を出し抜くためのものではない。
ゴールへの選択肢を増やす為のものだ」

と語っていたが、この「モンタージュ」を鑑賞した視聴者は間違いなく、
デビュー20周年の盛大なロックモニュメント【TOUR2007 天使のリボルバー】の再来のような、
ライヴツアーが、この後【TOUR2009 memento mori】で再現されるのだろうという予測を、
脳裏によぎらせて、鑑賞していたのではないだろうか?

これは、華麗なる誤算である。


「透ける皮膚 血の管 咬みついて 放さない
 縺れたら 解けない もう二度と 解けない」



$【ROMANCE】



この頭脳的な一曲のフェイントによって【TOUR2009 memento mori】の、
“愛の惑星”の炸裂からスタートするライヴ・アクトに、
意外性と新鮮な風を感じる心理的アンカーが仕掛けられている。

非常に、魅惑的なBUCK-TICKマジックといえよう。

そして、ジネディーヌ・ジダンの言葉にあるように、
このフェイントは、決して、我々ファンを出し抜く為のモノではない。

それは、彼らの【愛】と【死】というテーマへの選択肢を増幅する
高等な演出のテクニックである。

これにより、僕たちはまた想うのだ。

「嗚呼、また、彼らに、裏を画かれてしまった!」、と。

ただし、このフェイントが我々にとって喜ばしいことであったのは、
間違いのない、事実、だ。



「僕ら 蛇行の巣で絡み合う
 解けない誘惑のオズワルド」




この後のライヴツアー【TOUR2009 memento mori】の内容で、
彼らはそれを、まざまざと証明してくれることになる。

ただこの日、このテレビ番組『Wednesday J-pop TV Show』において、
この「モンタージュ」を演奏したことの意義は計り知れない。
大きな影響があったことも間違いではない。
やはりそれぐらいの費用対効果をマスメディアの雄:テレヴィジョンが持ち得ているということだ。
一般人の洗脳操作に、もっとも、有効な手段であることは、間違いないだろう。

そんな歌詞の「モンタージュ」が僕の頭の中でぐるぐると螺旋を描く。

その先には、まさしく“天国”という名の“memento mori”が待ち受けていた。

それは、アルバム『memento mori』の持ち得る多面性の表れであろう。

誰かが言っていた。

ホールクラスのライヴツアー【TOUR2009 memento mori】後に追加公演された
2009年9月11日~10月31日までのライヴハウスツアー
【TOUR memento mori -REBIRTH-】14本の公演で4曲目にプレイされた「モンタージュ」が、
「まるでアルバム『memento mori』の収録楽曲であったかのように違和感なく」
演奏されていた場面で、彼らのこの広大な華麗なる誤算は、美しく実るのである。

それが、アンコールで頻繁にエントリーした「極東より愛を込めて」ではなく、
「モンタージュ」であったことの意義は、非常に巧妙で美しかったと言える。

しかし、この時点で、美しき華麗なる誤算に気付いたオーディエンスは、
僕の含めて多くなかったことで、あろう。

またしても、さすがは、今井寿、としか言いようが、ない。


$【ROMANCE】



「ねぇ知らないだろう ほら終わらない黒を
 闇より深い 暗い 暗い 闇を」





周知の通りアルバム『天使のリボルバー』に収録されるロックチューンのほとんどが、
ライヴ・アクトを通じて、その宝石のような光を放ち、
その楽曲の持つマテリアルが、魅力的にシェイプされ、酸素を呼吸し、
躍動を始める。

その代表例こそ「モンタージュ」と言えるだろう。

ライヴによって【生】を得るロックナンバーと言ってもいい。

この日の「モンタージュ」も本当に、生命の息吹を与えられ、
【-REBIRTH-】を迎えたような、そんな印象が残る。

番組ナビゲーターのさくらも左手を高く突き上げてコーラスに合わせる。
おそらく初めてこの「モンタージュ」聞いたリスナーにも、
同様のロックンロール・マジックが架けられている証拠と言えよう。


「YeahYeahYeahYeahYeahYeahYeah!
 何もかも溶け出して

 YeahYeahYeahYeahYeahYeahYeah!
 抱き合いたい 雑ざり合いたい」



アルバム『天使のリボルバー』は、上級者向けのアルバムだと僕は【ROMANCE】に書いた。
それは、このアルバム単体では、その魅力を十分に堪能することが難しいだろう、
と想ったことが、メインの理由である。
いかにもストレートな味付けのこのロックンロール・アルバムが、
天使が悪魔で、悪魔が天使であること教えてくれることと同時に、
遠大なBUCK-TICKのモチーフとして「死生観」と通じて、炸裂することになる。
そしてその先に存在するのがアルバム『memento mori』である。

今井寿は『memento mori』は、あくまで『天使のリボルバー』の次のアルバムという意識で、
制作したのだ、と語っている。

まるで、この難解なパズルのモンタージュが組み合わさった顔こそ、
新作『memento mori』の表情であったと言わんばかりのイデア:理想的な姿が、
ここに存在することになる。

それは、『memento mori』後半の大作「天使は誰だ」を聴けば、
誰でも納得するであろう。
無駄な妄想であるが、この「天使は誰だ」一曲が、
もしアルバム『天使のリボルバー』に収録されていたら・・・。

恐らく『天使のリボルバー』は、決して上級者向けのアルバムではなく、
BUCK-TICKのどのアルバムよりも明快なロックンロール・アルバムと成り得たのではないだろうか?

しかし、敢えてそうしなかったことに、BUCK-TICKの深淵な「死生観」を観ることになる。
やはり『天使のリボルバー』はこれで、よかったのだ、と、
そう想わせてくれる説得力が、ニューアルバム『memento mori』の持つ深い感慨と“Loop”する。


「僕ら まるでモンタージュみたい
 僕ら 雑ざり合い君がいない」


そして、今後、『天使のリボルバー』と『memento mori』は、
渾然一体に溶け合い――更なるBUCK-TICKの鉄壁の要塞を築く礎になるのは、
間違いないことであった。

それは、かつて『Six/Nine』と『COSMOS』というアルバムが融合を見せた瞬間に似ている。

【光】と【影】

【生】と【死】

【太陽】と【月】

【希望】と【絶望】

【エロス】と【タナトス】

【天使】と【悪魔】

そして・・・それは・・・

【愛】と【死】。

そんなピースとピースを掛け合わせたモンタージュの向こうに、
何が見えるのか!?

それは、きっと個人で全く違い情景かもしれないし、
全く文化を共有しない全人類が見る全く同じ情景かもしれない。


ただひとつ言えるとしたら・・・

それは、そのモンタージュ写真を創るのが・・・

僕たち本人に、他ならない、という事実だけである。






モンタージュ
 (作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


降り注ぐ太陽 眩しくてたまらない
いっそ ただ 影のよう 消し去って かまわない

僕ら 地獄みたいな熱で
僕ら みんな蒸発させて
僕ら・・僕ら・・

透ける皮膚 血の管 咬みついて 放さない
縺れたら 解けない もう二度と 解けない

僕ら 蛇行の巣で絡み合う
解けない誘惑のオズワルド

ねぇ知らないだろう ほら終わらない黒を
闇より深い 暗い 暗い 闇を

YeahYeahYeahYeahYeahYeahYeah!
何もかも溶け出して
YeahYeahYeahYeahYeahYeahYeah!
抱き合いたい 雑ざり合いたい
YeahYeahYeahYeahYeahYeahYeah!

僕ら 蛇行の巣で絡み合う
解けない 誘惑のオズワルド
僕ら まるでモンタージュみたい
僕ら 雑ざり合い君がいない

ねぇ知らないだろう ほら終わらない黒を
闇より深い 暗い 暗い 闇を

YeahYeahYeahYeahYeahYeahYeah!
何もかも溶け出して
YeahYeahYeahYeahYeahYeahYeah!
抱き合いたい 雑ざり合いたい
YeahYeahYeahYeahYeahYeahYeah!
何もかも溶け出して
YeahYeahYeahYeahYeahYeahYeah!
抱き合いたい 愛し合いたい
YeahYeahYeahYeahYeahYeahYeah!
YeahYeahYeahYeahYeahYeahYeah!
YeahYeahYeahYeahYeahYeahYeah!

降り注ぐ太陽 眩しくてたまらない
いっそ 僕 影のよう モンタージュ もういない

抱き合いたい 雑ざり合いたい

$【ROMANCE】