BUCK-TICKは、2009年2月11日(水・祝)の18:00、
音楽情報番組『Wednesday J-pop TV Show』に出演。
貴重なメンバー5名が、並んでトークをする姿が、全国ネットに流れただけでなく、
最新シングル「GALAXY」。
続いて前作『天使のリボルバー』から、「モンタージュ」。
そして、『memento mori』からの先行第一弾シングル「HEAVEN」がパフォーマンスされた。
人生は、永遠にはつづかない。
だから、一瞬たりとも、無駄には出来ない。
「HEAVEN」は、このたった3曲だけのマスメディアでのライヴ・パフォーマンスでも、
時間の価値を教えてくれるような輝き放ちながら、月の輝く夜空に飛んで行った。
この一曲で、感動的にフィナーレを飾るアルバム『memento mori』。
人生は【愛】と【死】・・・。
メンバーは、語る。

「今までは【死】の方ばっかりいってたから(笑)。
でも今回は【生】のほうが凄く強調されてる。
考えて怯えてても仕方ないし。
【死】を考えることだけが人生では、殺伐としてしまいますし」
(櫻井敦司)

「聴いた人が【生】でも【死】でも、
何かを考えてくれれば、それでいい」
(星野英彦)

「誰も逃げられないですから。【死】からは。
だからこそ生きるしかないのかなって思う」
(樋口豊)

「明日亡くなっても悔いのないように。
今日一日を頑張って生きよう」
(ヤガミトール)

「人はいずれ平等に死ぬんだから。
だったら今はそんなこと考えなくていいから飲んで食って、生きてみようよ。
“【生】と【死】”も“【愛】と【死】”も隣り合わせのもの。
そのことだけを知っていればいいんだと思う」
(今井寿)
「HEAVEN」はミディアムテンポのシンプルなポピュラリティーを持つ楽曲で、
日本のカルト・ロック・スターダム“BUCK-TICK”のシングルにしては、
彼ららしいトリッキーなギミックや、歪なギター・フレーズが挿入されている訳でもなく、
重厚な深淵過ぎるテーマが、リリース直後のイメージを、僕に、
彼ららしくない“スノッブさ”を感じさせてしまったのかも知れない。
スノッブな真っ白な【死】・・・。
その引っ掛かりは、「HEAVEN」を繰り返し聞くうちに、疑問へと変化していく。
BLOG【ROMANCE】を書き続けていた僕のなかに変化が、訪れたていたのかも知れない。
素直に、この「HEAVEN」を胸の密室へ仕舞い込むことが出来ないうちに、
第二弾シングル「GALAXY」が、僕の胸に突き刺さる。
そしてニューアルバム『memento mori』のタイトルが告げられ、
【愛】と【死】のモチーフが、伝えられる。
僕の仮想現実は【ROMANCE】を通じて、この現実世界に再現されているのではないか?
そんな錯誤が、胸をよぎる。
そんな訳はなかった。
それは、単に、僕という個人が、そういう局面に達していただけのことで、
彼らは、20年以上も昔から、この「死生観」に立ち向かって、
血反吐を吐き、のたうちまわり、あがき、苦しみながら、
確実に、この現実世界に、BUCK-TICKの【愛】と【死】を展開していたのだから。
奇妙なシンクロニシティが、僕の胸の密室の鍵穴に、
・・・・・・挿し込まれたような、そんな気がした。
しかし、その鍵は、回されることなく、その「密室」の扉を開けるに至らなかった?
・・・だから、僕は、その扉を破壊するしか、なかった?
【ROMANCE】は、「女神」で2008年と終え、
「FLAME」で、2009年の産声をあげた。
そうして年は明けた。
これぞBUCK-TICKポップロックと言えるような「GALAXY」が、
リリースされ、やがてニューアルバム『memento mori』が衝撃に映える。
そして、このニューアルバム『memento mori』の最後に収録された「HEAVEN」を聴いて、
涙が零れた。
なんなんだろう?
この情動は・・・。
たしかに、ギター・アレンジ等のニュー・ヴァージョンではあったが、
基本的な曲調に変更はない。
しかし、明らかにナニカが違う。
それは、「HEAVEN」に至る『memento mori』の傑作と言える全ての楽曲群の所為かも知れない。
そして、少し自分の中で一度、眠っていた魂が揺さぶられるかのように、
僕の密室に「HEAVEN」が響いた。
気がつくと涙が、零れた。
どうしてだろう?
僕は、故郷の母を想わずには、居られなかった。
そして、この真っ赤な血を分け与えてくれたことに感謝するのと同時に、
この我が母の子として、生まれたことを、誇りに、想った。
今井寿のレクイエムとも言えるようなシューティング・スターに身を許して、
天空に、心を寄せる切っ掛けを与えてくれた。
今井寿の言う力強いメッセージとギターのロック・サウンド。
そこから導き出された櫻井敦司による母性。
「胸に咲いた 赤いカーネィション」
と
「胸に挿した 白いカーネィション」
母のいる子は、自然に胸に花が咲く。
それは、きっと【愛】の花だろう。
人によっては、その母のぬくもりに、気付くのが難しいかのも知れない。
でも、深い胸の内に、たしかに存在するぬくもり。
僕の母は、僕の生き方に、反対したことは、ない。
それに甘えて自由気ままに生きてきた。
そのことを、後悔したことはないし、それが自然であった。
しかし、それは、母の赦しが存在したからに他ならない。
それに、気付いた時、或る親戚葬儀で集まった席で、僕は言ったことがある。
「自由に生きて、親の世話もろくにしないで、ホントに俺は親不孝だね」と。
親戚のほとんどが、それに同意するように「本当だ」と笑っている中、
母はひとり、真剣な顔をして反論したことがあった。
「そんなことない」
母はその時だけ、しっかりとした自分の意見を僕や親戚たちに伝えた。
「子供が自由に、生きることは、親不孝なんかじゃない」
僕は・・・。
僕は、気付いたら、涙を零していた。
アルバム『memento mori』の最後の「HEAVEN」を聴いた時の涙は、
同じ種類のモノのような……、
そんな気がした。
カーネィションは、
十字架に架けられたイエス・キリストの為に流した聖母マリアの涙の雫が姿を変えたもの、
であるという説もある。
そして、母を亡くした子には、白いカーネィションを挿してあげないと、と。
そう想う。
あなたにも、母は確かにいるんだっていうことを。
それは、あなたの胸の密室の中かも知れないし、
空高く天空の向こうから、あなたを見守っていてくれるかも知れない。
でも、あなたに、確かに母はいるんだよ。
それを、あなたに伝えたいから。
胸に白いカーネィーションを挿して何処かにいる母を知らせなくっちゃ。
櫻井敦司は、「GALAXY」にも、「HEAVEN」にも、
表裏一体の存在を描きたかったと語る。
この「HEAVEN」の赤と白のコントラストが、
「GALAXY」における命のキラメキと、悲しい夢の存在であり、
珠玉のストーリーが双方に、封じ込めらている。
母なきあなたに、僕は伝えたかったのかもしれない。
あなたの母は、きっと夜空の上で、あなたの「ミウ」と一緒に見守ってるはずなんだ、と。
そう。間違いなく。僕の母と同じように、と。
ねぇ、わかるよね?
あなたは“生きる”、って、約束してくれたから…。
◆◇◆◇◆
このテレヴィジョンでのライヴ演奏される「HEAVEN」を視て確信を持つ。
彼らが、BUCK-TICKが、描きたかったモノ。
それは、【愛】と【死】から、浮き上がる【生命】の力強さ、だ。
櫻井敦司は、インタヴューに答える。
「死というのは尊いものですけど、同時に一瞬のものでもあり、儚さもある。そんな感じですね。
だからこそ、これだけいろいんなテーマの文学や芸術作品のタイトルになり得ているだなと思う」
――そこで深読みを始めてしまうと、
長い歴史を持ったバンドが“終わり”を意識しながら作ったアルバムなのではないか、
と勘繰りたくなってしまうんですが。
「いや、少なくともバンドとしては、そういう意識はまったくないと思います。
個人のレヴェルではわかりませんけど、バンドとしての単位では。
これまでもこういった“死の重さ”みたいなものついては、
程度こそ違え、テーマとして扱って来ましたからね。
逆に言えばその都度“終わり”というものを意識しているということかも知れませんけど、
ま、それより単なる“美”であって欲しいというか」
――“死を忘れるな”が転じて“だからこそ今を謳歌しろ”という解釈も成り立つわけです。
それはこの作品像にも繋がるところですよね?
「はい。そのへんは特に、今井のなかにはあったんじゃないでしょうか。
僕なんかの場合はもう、昔から“死”というものを美意識みたいなところで暗くとらえてて……
というか、とらえきれてなかったと思うんですけど、
今回は今までとはちょっと違う解釈をしようとしたところがありますね。
もっとポジティヴな解釈というか“すべてを惜しみなく出し切る”みたいな。
もちろん“出し切ろうとすること”についてはいつも同じなんですけど」
――タイトルを把握したうえで聴いたとき、
僕はこの表題曲が想像していたのとは違うまったく逆の温度間を持っていることに驚かされました。
「ああ、わかる気がします」
――完全に“謳歌しよう”モードですよね。
「ええ。僕自身の場合は“死”に限らず何でも重くとらえすぎちゃう癖があるんですね。
やっぱりデリケートな部分、敏感にならざる得ない部分もあるものではあると思うんで、
そこで簡単に“呑んで、食って、楽しもう”という解釈に転じることはできないというか。
ただ、コンサートとかそういう状況で、
みんなが一瞬にそういった憂いを吹き飛ばして一緒に楽しんでくれるためのものという意味では、
いいんじゃないかと思います。
個人的にはむしろ、“死”というのはそう遠くないものというか、
近しいものとしてとらえてきたところがあるんで。
だからこの曲についてはすごく考えるところがありましたし」
――たとえば人間は“明日死ぬつもりの覚悟で”とか
“このアルバムが最後だとしても後悔のないように”といったことを口にしがちですですけど、
本気でそういう気持ちになるものかといえば……。
「ええ。そこで“一瞬にしてこの世から消える”ということが可能なんであればいいけども、
そうはいかない。
それが事故であれ病気であれ、少なからず誰かに悲しい思いをさせることになるし、
自分でも悲しい思いをすることになる。
それは残念なことですから。
だから“死”というものを完全に忘れることはできないにしても、
音楽によってそれを少しでも意識の外に追い出したり、
“大丈夫、楽しもうよ”という気分になれればいいなと思うんです」
――極端な言い方をすれば、“音楽は娯楽であるべきだ”ということでもあるわけですか?
「ええ。娯楽だと思います。そうじゃないと僕は困っちゃいます(笑)」

ニューアルバムのタイトルソング「Memento mori」のポジティヴさは、
そのまま、シングル「HEAVEN」で見せた櫻井敦司の母性のしなやかな力強さに、
“Loop”を見せた。
「生まれ 泣き叫び 笑い 愛し 恋を・・恋をしよう」
「もがき 歌歌い 踊り 愛し 恋を・・恋をしよう」
この素晴らしき、狂いゆく腐りゆく世界で。
この美しき、生まれゆく翳りゆく世界で。
……それでも、生きて行くんだ、という櫻井のメッセージが今井寿の胸に響いたに違いない。
…そして、それが、櫻井敦司の言葉から出たところに、
今井寿を共鳴させる鍵があったのではないだろうか?
それが、吐き気がするほどロマンチストな今井寿の【愛】だ。
だから今井寿はいつになく、このモチーフについて丁寧に語る。
――例えば今井さんにとって、【愛】を感じる瞬間というのはどんな時ですか?
「んー……出会い、かな」
――確かに“出会い”というキーワードも出てきますね。ライヴはいかがですか?
「もちろん、それはありますね。ファンのそういうところからも感じますし」
――逆に、【死】を意識することも…?
「ありますね。自分自身(の死)もそうだし。
周りの…それこそメンバーとかもそうだし、
ヘンな話、順番にいなくなる、みたいな感じじゃないですか(笑)」
――人生としては(笑)。
「友達とか親とか兄弟とか、そういうのを、ふとリアルに感じる瞬間とかがありますね。
そこで“そりゃそうだよな”って見せつけられるというか」
――若い頃は思わなかったですよね。
「思わなかったですね。頭で考えたとしても“よくわかんない”みたいな。
でも今は現実として、出会って、別れてっていう、それはもう確実なんだから」
――そうなんですよね。死だけは平等にやってきますから。
ただ、早死にする良い人もいれば、長生きする悪いヤツもいますから、平等かどうかアヤしいですけど。
でも今回の『memento mori』を聴いて。
どうせ死ぬなら後悔のないように生きたいっていう前向きなものと感じましたよ。
「むしろそっちですね」
――だから光を感じるんですよね。アルバムんのイメージでいうと。
「そうありたいなっていうのはあります。
もちろん1日1日大事に生きる…そういうのがいいかも知んないけど、
反省も後悔もしないでやりたいようにやるっていうのも、それはそれでいいのかなって(笑)」
――確かに、ひとつの幸せかも知れないですね。
今井さんは自分自身の死を意識した時、どうありたいと思いますか?
「死を意識した時に……先のことを考えずにいたいなっていうのはありますね」
――と言いますと?
「“何年後にこれやって…”みたいな計画的なのは、あんまり考えなくていいかなっていう感じですね」
――ただ、今この瞬間はやりたいことをやっておきたいっていう。
「うん。だといいですね」
――実際、音楽家として、表現者として、そうなってますよね。今回の絶好調ぶりを考えると。

そして【愛】溢れるロックナンバー「GALAXY」へと繋がる命。
命キラキラ輝くように、僕には、忘れられない2008年から2009年の“Loop”を経験した。
君はもう飛べる。何処だって行ける。
君は舞う。
天の水辺羽遊ばせて、命ゆめゆめ踊れBABY。
空を染めて。
さあ夜明けだ。さあ羽ばたけ。さあゆっくり……ほら。
君は舞う。
悲しい予感する夜は、闇夜を走れ走れ。
空いっぱい舞いあがるんだ。
この素晴らしき、狂いゆく世界で。
君は夢見て泣いている。
この美しき、腐りゆく世界で。
とても綺麗な夢をみた。
この素晴らしき、生まれゆく世界で。
君は夢見て震えてる。
この美しき、翳りゆく世界で。
何も悲しい事は無い。
真夜中・・
混ざり合いながら、その色の鮮明さを増していく「白」と「黒」…。
ダイジョウブ。
俺たちは、【愛】と【死】…。
「HEAVEN」が待っているから…。
…「GALAXY」で逢おう。


HEAVEN (5:22)
(作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿 編曲:BUCK-TICK)
ラララ・・
その目はCRAZYでLOVELY BLUE BLUE SKY
生まれ 泣き叫び 笑い 愛し 恋を・・恋をしよう
金網越し交わしてるKISS
国境 抱き合うANGEL舞いあがる羽の 影は一つ
君は舞う 空を染めて
君は舞う 空いっぱい舞いあがる
この素晴らしき 生まれゆく世界で
桜咲く 風に吹かれて
この美しき 翳りゆく世界で
胸に咲いた 赤いカーネィション
ラララ・・ ラララ・・
その目はCRAZYでLOVELY IN THE SKY
もがき 歌歌い 踊り 愛し 恋を・・恋をしよう
銃声 眠れない夜も終わる
雨に濡れた君 まつ毛甘く震わせて 蝶に成ったよ
君は舞う 風と踊る
君は舞う 空いっぱい舞いあがれ
この素晴らしき 狂いゆく世界で
桜咲く 風に吹かれて
この美しき 腐りゆく世界で
胸に挿した 白いカーネィション
この素晴らしき 生まれゆく世界で
桜咲く 風に吹かれて
この美しき 翳りゆく世界で
胸に咲いた 赤いカーネィション
ラララ・・
胸に咲く 赤いカーネィション

