「I wanna be ・・・like your dog!」



2008年12月29日、日本武道館「絶界」を演奏し終えたBUCK-TICKは、
この櫻井敦司のMCから、一気に、『Six/Nine』の
ラウド・グランジ・ロック・ワールドに突入する【THE DAY IN QUESTION】。

前哨戦のライヴツアー【FISH TANKer's ONLY 2008】でもエントリーした
BTへヴィ・ギター・ロック「love latter」では、
今井寿、星野英彦ともにブラック・ビューティーなレスポール・カスタムに持ち替えて、
ラウドなカミソリ・ギターをお見舞いしている。

ヤガミトールと樋口豊のリズム隊も、
このツイン・ギターに負けじと、へヴィなグルーヴを生み出すBUCK-TICKダーク・グランジのうねりは、
彼らが、まるでへヴィ・メタル・バンドだったのでは、ないか、と思わせるほどの、
ダークなサウンドである。

丁度、BUCK-TICKが、サウンド的に覚醒を見た1991年の『狂った太陽』から、
1993年の日本のダーク・ロックの先駆け的存在の『darker than darkness -style93-』、
そして、そのダーク・グランジの姿を彼ら独自の解釈の基制作された
唯一無二の傑作アルバム『Six/Nine』の1995年まで間、
世界のミュージック・シーンは、煌びやか1980年代に別れを告げ、
異形のロック・ワールドへと突入しつつあった。

そして、間違いなくそのムーブメントの極東代表は“BUCK-TICK”というロック・バンドに他ならない。

彼らと同世代といえる欧米のロック・アーティストが、
当時、一斉に志した反骨精神とも呼べる魂は、
1970年代初めのハード・ロック・ムーブメント、また、
1970年代後半のパンク・ロック・ムーブメントに、近い「創発」といえた。


一般に、オルタナティブ・ロック (Alternative Rock)と呼ばれるモノである。

Alternative(オルタナティブ)とは、
「代わりとなる、異質な、型にはまらない」という意味の英語の形容詞。



1990年代初頭のR.E.M.、ニルヴァーナ、パール・ジャム、レッド・ホット・チリ・ペッパーズらの
大ヒットにより音楽界に一大ムーブメントを巻き起こし、その影響は現在まで続いているといえるだろう。

ジャンル全体の傾向としては、
1980年代の米メジャーシーンの音楽への反発からくる1970年代以前のロックへの
参照・回帰・昇華(音楽的のみならず、思想的にも)を志向しており、
直接的には1980年代のインディー・ロックの流れを組む。

一定の音楽性を示したジャンルではないため、定義については様々な評論が存在する。

また、当時の日本ではグランジやミクスチャー・ロック(こちらは完全な和製英語)といった
直感的に理解しやすいジャンルで特にさかんにコマーシャルされたためか、
それらを包括する意味合いを持つオルタナティブ・ロック自体の知名度は、海外と比べると低い。


由来としては1978年に、イギリスでは前年のロンドン・パンク・ムーブメントと
入れ替わるようにポスト・パンク/ニューウェイヴが勃興した。
その先鋭的なグループとして
スロッビング・グリッスル、ディス・ヒート、パブリック・イメージ・リミテッド(PIL)
らの名前が挙げられる。

彼らはパンク・ロックが開けたポピュラー化したロック・シーンの風穴をさらに広げようとし、
より自由で実験的な音楽を演奏し、資本的にもメジャーなレコード会社から独立したバンドが多く、
メディアから大ざっぱにオルタナティブ・ロックと呼ばれた。

同じころ、アメリカ各地の大学で学生が自主運営していた大学ラジオ(カレッジ・ラジオ)は、
英国や米国のパンクやポスト・パンク、ニュー・ウェイヴやギター・ポップ、ノイズロックなど、
アメリカの音楽シーンの主流から外れた音楽を盛んに取り上げた。

カレッジ・ラジオのラジオ局は、当時の音楽界の主流であったディスコ・ポップやヘヴィ・メタルなどを
「商業性を第一とし、産業的・芸能的でアートとしての進歩性に欠け、聴衆におもねったもの」
として批判し、
「主流でない音楽、深刻な音楽、自分たちの応援する地元のインディーズバンド」
などを選んで放送する傾向があった。

全米の大学ラジオごとのチャートをあわせた「カレッジチャート」では、
商業性主体のビルボードチャートとは異なるオルタナティブなバンドが上位に名を連ねていた。

1990年代初頭のアメリカでは、ライヴハウスやカレッジチャートなどを基盤に
爆発的に売り上げを伸ばしていたグランジが台頭する。
これらを代表格として、
音楽的多様性に富むそれらは主にオルタナティブ・ロックと呼ばれるようになり、
全米チャート上位を独占していた既存の1980年代風のハード・ロックやヘヴィ・メタルなどとは違う
ロックの呼称として一般的に定着した。

オルタナティブ・ロックとは、そもそも1980年代の主流から外れたロックを指すためのくくりで、
音楽性は雑多で多岐にわたるため、ある一定の音楽を指したジャンルではない。
明確な共通点は、1980年代にメジャーシーンで大きなセールスをあげていなかった音楽、
という程度である。

オルタナティブ・ロックは、
そもそもが1980年代の主にアメリカのメジャーシーンの音楽に対して
オルタナティブ(異質)としてくくられて誕生したジャンルであるため、
額面的にみれば、音楽性は1980年代的なもの(MTV的なもの)と正反対の方向性を持つとされる。

これらはその多くが、様式化された演奏を逸脱した音楽的な挑戦、
もしくは精神的なメジャーシーンへの対立性を志向している反面、
1980年代のポピュラーミュージック、ロックに比べると
聴き手の耳触りのよさやキャッチーであることを単直に求めないものが多い。

これらのいわゆる「アート性に根ざす分かりにくさ」が、
オルタナティブ・ロックに対する一つのタームとなっており、
R.E.M.やソニック・ユースといった勃興の際の旗手となったバンド群は、
その人気が1990年代に入ってメジャーシーンへ表出した際、
その1980年代ヘヴィ・メタル・ロックとは違った抽象性・アート性を、
当時のローリング・ストーンやNMEなど多くのメディアでさかんに議論された。

これらの前衛性・アート性は当時の日本では本国アメリカ以上に理解を得られず、
その定着には時を要した。

日本で本格的にオルタナティブ・ロックの評価が高まり、
きちんと確立されるのはニルヴァーナやレッド・ホット・チリ・ペッパーズらのブレイクにより、
オルタナティブ・ロックが完全に潮流となってからとなる。

サウンド的には、アンダーグラウンド志向に則ってきらびやかなエフェクトは敬遠され、
1970年代以前のロックの影響が濃い、簡素でロー・ファイ的な価値観を重視する。

ドラム・サウンドやヴォーカルにキラキラとしたエフェクトをかけるのは好まれず、
ガレージ・ロック/インディー・ロックのような現実感のある自然なサウンドが重要視される。


演奏面では、特にギターのサウンド/奏法には工夫を凝らし、
いわゆる1980年代に定型的とされていたヘヴィメタル的な奏法を否定し、
速弾きソロなどは用いないバンドが多い。

レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドや
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロに代表される
ギターの私的な改造を主としたスイッチ奏法などの音作りや、
多くのシューゲイザーバンドやノイズ・ロックやインダストリアルバンドが、
得意としているギターノイズ奏法などは特に著名である。

ここにBUCK-TICKのサウンドのイニシアチヴを持つ今井寿が目を付けた。
もともと、バックグランド的には、当時、BUCK-TICKと同種と見られていた
多くのヴィジュアル系バンドとは異なり、
今井寿のバックグランドにあるパンク・ロック、ニュー・ウェイヴそして、テクノ・ロックから、
その個性を発展させたロック・バンドが“BUCK-TICK”であった。

同期とされるZIGGYやX JAPANが、1980年的なへヴィ・メタルのNWOBHMやL.A.メタルの影響の下、
インディーズ・シーンからそのケバケバしい風貌とともに登場した背景とはやや違い、
その重力に反発するような刺激的なルックスに相反して、
先輩格のバンド・ブームの火付け役BOOWYの後継的な役割で登場したBUCK-TICK。

その創作活動が続くうちに、コンポーザー今井寿は、
ノイズロック・インダストリアルサウンドの虜になっていく。

一方、海外のオルタナティブロック及びグランジに好まれた機材としては、
フェンダー社のジャガーやジャズマスター、ムスタングなどが挙げられる。
歪み用のエフェクターは、きめの細かいヘヴィメタルタイプのディストーションよりも
RATなどの荒いタイプのものが多用される。

また、トゲトゲしいルックスを持った変形ギターなど、
1980年代メインストリーム的なものを好んで使用するバンドは非常に少ない。

まさに、生テイストのロックの復興を目指したオルタナティブ・ムーブメントと言って良いだろう。

歌詞は、政治性・メッセージ性が強く、機知に恵まれ比喩も巧みな文学性も高いバンドから、
文に全く意味の通らないようなナンセンスで意図的に歌詞カードすら作らないバンドなど、
様々なタイプが存在する。
歌詞に対するスタンスについてもオルタナティブ・ロック全体に共通する傾向を挙げることは難しいが、
どちらにせよ一般的なヒット曲に有りがちな分かりやすい題材とは一線を画している。
これらは、オルタナティブ・ロック特有のアート性・抽象性の顕在化に役を買っていると言えるだろう。

ステージ衣装、メイクに関しても、力のこもった「いかにも」な衣装やメイクは敬遠される傾向がある。
大半は普段着の延長のファッション、
もしくはバンドによっては通常では考えられないほどの
奇抜・変態的でアヴァンギャルド的なものが好まれる、と両極端である。

日本のBUCK-TICKの変態もやや特殊で、日本のミュージック・シーンからは、
せっかくメイン・ストリームであったものをワザと破壊して、
ドロップ・アウトし、カルト的な趣向へと突き進んだと言えよう。
その中で、自然に彼らが趣向した方向性が、グランジだった。



グランジ・ロックとはそもそも、
その母体・源流を、1970年代以前のパンク・ロック~1980年代の
ポストパンクやハードコア・パンクなどといったインディーロック系のシーンに持つ。

よって、出自的・思想的にはそれらとの関係性を欠かすことはできず、
グランジ自体もパンクの1ジャンルとして包括されて語られることも多い。

グランジの音楽的な最大の特徴は、
パンク・ロック的と呼べる簡素で性急なビートと、
ハード・ロック的と呼べるリフ主体の楽曲構造とが融合されていることである。
また、いわゆる「静と動」のディストーションギターのサウンドも往々にして語られるが、
こちらはグランジ全体というよりもニルヴァーナなどの一部のバンドの楽曲に頻繁に聞けるもので、
その起源はピクシーズなどの1980年代末期のギターロックバンドにあると言われる。
系統的に見ればグランジのサウンドは1980年代のポストパンクなどからの濃い影響が覗えるが、
レッド・ツェッペリンなどの1970年代のハードロックバンドの影響を口にするバンドも多い。

ここにもBUCK-TICKに類似を見る展開が用意されている。
こういった内包されるファクターにひとつにバンドメンバーが好んで聴いていたサウンドが影響を及ぼす。
これも、今では有名な話であるが、ドラムのヤガミトールのフェイバリット・バンドは、
今も昔も、一貫してハードロックの覇者レッド・ツェッペリンである。
これは、勿論、同バンドのドラムス:ジョン・ボーナムのドラム・プレイからであろうが、
ハード・ロック黄金時代を築いたロック・バンドが、レッド・ツェッペリンであることは、
誰も反論出来ないであろう。
ディープ・パープルの皮肉屋で知られるギター・ゴッドの一人:リッチー・ブラックモアをして、
1969年、当時、クラッシックをモチーフとしたオリエンテッド・ロックから、
ハード・ロックへの代名詞へと成り上がった背景には、バンド・リーダーのジョン・ローンに、
リッチー・ブラックモアが、
「レッド・ツェッペリンみたいなハード・ロックを演りたい!」
と直訴したことが、切っ掛けとなる。

ヤガミトールを擁するBUCK-TICKは、必然的にグランジ路線への蠢動を始めることになる。


対して、アメリカでは1980年代のアメリカンハードロックやL.A.メタルなどを忌み嫌うバンドがほとんどで、
あまりにも有名なニルヴァーナとガンズ・アンド・ローゼスの対立を引用するまでもなく、
他の多くのグランジバンドもアメリカンハードロック・メタルを敵視し、
実際にグランジの台頭によって多くのポップメタルバンドはビルボードチャートから消えていった。

多くのバンドは楽曲やアートワークに退廃的な雰囲気を内包しており、
これらも1980年代のUSインディーロックからの直接の影響が覗える。
また、オルタナティブ・ロック全体に共通する傾向ではあるが、
前時代にヒットチャートを埋め尽くしていたポップメタルやディスコポップなどに比べると、
歌詞や楽曲は格段にシリアスな趣となっている。

そこら辺も、日本のBUCK-TICKとは、趣向が一致した。
櫻井敦司の描く、ダークで幻想的なロック・ワールドは、ゴシックから徐々に、
自身の内面を抉り出すような精神世界へと突入しつあったし、
それは、決してヒット・チャートには、全く貢献しない類のモノばかりであった。

当然、日本のミュージック・シーンのほうが、BUCK-TICKのこの動きに当惑することになる。
人気のロック・バンドが扱うモチーフとしては、触れ辛い内容のモノばかり。
まるで、腫れものに触れるかのように、BUCK-TICKを扱うしかなかった。

今井寿や櫻井敦司は、それを、まるで嘲笑うかのように、我が道を突き進む。
そんな彼らからの「狂人の恋文」=「love letter」。

ジャパニーズ・オルタナティブの真髄を魅せつけるかのような内容の『Six/Nine』は、
このラヴ・メタリック・グランジ・ロックから始まる。

身震いするかのように、我々は、耳を澄ましてこのアルバムの世界にへと入って行った。

そこに、出口など、ないことを、知りながら・・・。










$【ROMANCE】


love letter
 (作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


I'm Just A Simple madness man

Is this what you wanted
Is this what you wanted
Is this what you wanted
Is this what you wanted
Is this what you wanted
Is this what you wanted
Is this what you wanted

I wanna live Just like a bitch
Now what's your desire
You wanna make Just like the rich
Now what's your desire
are you honest are you honest
Is this what you wanted
are you honest are you honest
I need you

I wanna be like your dog
upside down and make a god
You wanna be like our gog
upside down for razz ma tazz
are you honest are you honest
Is this what you wanted
are you honest are you honest
I need you

Save my soul please
Show me the way
Save my soul please

Oh Please. Please take this love letter
I'm Just A Simple madness man
Oh Please. Please take this love letter
I'm Just A Simple madness man



$【ROMANCE】