「私が生きているときは、死はない。
 私が死んだときには私の生はない。
 したがって私にとって死は存在しない」

(エピキュロス)




「この川を越えれば人間世界の悲惨。
 越えなければ、わが身の破滅。
・・・進もう。賽は、投げられた!」

(ユリウス・カエサル)



2008年12月17日、BUCK-TICKは、26枚目シングル『HEAVEN』をリリース。
翌12月18日から12月23日及び12月29日に年末の一大モニュメント【THE DAY IN QUESTION】を開催した。

毎年、意味合い的には、一年の活動の締め括りといった意味合いが大きい
ライヴ・アクトとなるのが、この【THE DAY IN QUESTION】であるが、
この2008年の【THE DAY IN QUESTION】は、誕生を意味すると言ってよかった。

そして、迎える最終公演は、日本武道館。

前年の12月29日は、ライヴツアー【天使のリボルバー】追加公演の最終日であったので、
一年ぶりのリクエスト形式のイベント・ライヴということで、
ファンの期待は非常に高いものとなったが、
この年は、それだけでは、なかった。

“誕生”。

この世に中で、これ以上に、素晴らしいモノがあろうか!

シングル「HEAVEN」がオリコン・ウィークリー・チャート6位を獲得、
続いて年明け1月14日に、第二弾シングル「GALAXY」、
そして、2月18日にアルバム『memento mori』のリリースを控えているBUCK-TICK。
毎年恒例の12月29日 日本武道館での【THE DAY IN QUESTION】。

2001年より毎年行われている同公演は、
アルバム・ツアーとは違って自由な選曲で行われるお祭りイベント的なもので、
京都、浜松を含め3会場で開催された。
2007年の20周年アニヴァーサリー・イヤーを経て、
2008年は楽曲制作に没頭する為の一年といえた。

いつもの通り、ファイナルの日本武道館公演は9,000人ソールド・アウト、
開場の数時間前から武道館敷地内はBUCK-TICKファンで埋め尽くされた。

ライヴは例年どおり「THEME OF B-T」のSEとともに、
ステージ上部から吊るされた無数のチェーンが緑色に照らし出されながらゆっくり降下してくるという
妖しくスリリングな演出で開幕。

京都、静岡と話題になっていたのが、今井寿のヘアー・スタイルで、
長く伸びたワンレングスを、編み込んで、頭上で“おだんご”と作るという、
エキセントリックなヘアー・スタイルに挑戦したのも、
新たなる誕生を意図したものかも知れない。

今では長髪に髭の今井寿に見慣れてしまったが、
このヘアー・スタイルで登場直後は、必然的に注目の的となった。

本公演は、スカパー!&スカパー! e2にて2月に独占放送されることが決定していた。
楽屋から先頭で表れる編み上げの今井寿は、ハーフ丈のジャケットに貴族騎士のような、
純白のフリル・シャツ姿で、後ろに、ヤガミ“アニイ”トールが続く。

ヤガミ“アニイ”トールは、両手に早くもスティックを持ち、
振り回しながら、すでに、一曲目にリズム・インしているかのようだ。
真っ赤な衣装で、インパクトあるトサカは健在で、サイドが薄く刈上げてある。

その後ろからは、ブラックのトレンチ・コートの革命家:星野英彦。
しっかりとベルトで、ウエスト部分を結んでセクシーなイデタチである。
「HEAVEN」のヴィデオでも、櫻井敦司と御揃いの純白のトレンチ(ヒデはハーフ丈)が思い浮かぶ。
本当に何を着ても似合ってしまう長身と美しいフォルムを持ったギタリストだ。

背後から櫻井敦司と樋口豊が、ほぼ同時に楽屋を出る。
壁に両手をついて、アキレス腱を伸ばす樋口豊と、
仁王立ちの櫻井敦司。
まるで本当の兄弟のような二人。
樋口豊も、中世の貴族を思わせるようなドレススーツをタイトに身に纏う。
モード&スリムな衣装である。

日本武道館のステージに一番初めに現れたのは、樋口豊である。

いつもの笑顔で、大きく手を振りながらステージ前面を横断して自分のポジションへ向かう。
続いて星野英彦は、反対側のステージ袖までゆっくり歩きスタッフからホワイト・バニーを受け取る。
そうしている間に、ヤガミトールはドラム・キットに着席してスタンバる。
今井寿は、ワインレッドのマイマイを肩に掛ける。

我慢できない今井寿がギターを鳴らす。

すると、それがまるで合図であったかのように櫻井敦司は、その後ろを通り、ステージ上段に構える。

このシェイプが美しい。

櫻井敦司は、ロング丈の衣装が多かったが、今回はナニカ、エスニックなデザインの
ブルゾンとパンツで、軍隊のようなロング・ブーツを履いている。
衣装に中央には、ゴールドの刺繍が施され、アクティヴなイメージだ。

後光指す櫻井敦司に見惚れていると、今井寿が観客に向かって少し手を振る。

観衆の興奮は早くも最高潮といえる位の歓声だ。

この大歓声の中、「THEME OF B-T」が終了すると、更に歓声のヴォリュームが上がる。

そして、甲高いヤガミトールのティンパニーが日本武道館に鳴り響く。

真っ赤なライト・アップが一気に点灯し、【THE DAY IN QUESTION】がスタートする。


櫻井敦司の手拍子に合わせる大観衆。
日本武道館全員の手拍子の中、キュートなイントロを奏でる今井寿。

「愛とか世界 儚い 羽をたたんだ皆殺しの天使
 お願いだ 天使のラッパ鳴り響く」


とラッパ・ジェスチャーの櫻井敦司。
樋口“U-TA”豊も笑顔で気持ち良さそうにベースをリズミカルに合わせていく。

「残酷だね ダーリン 愛と血肉をむさぼるゾンビーナ
 泣いたりしない 愛はネコソギだぜ NIGHTMARE」


いきなりメランコリックな前シングル楽曲「Alice in Wonder Underground」から始まり、
元気いっぱいに跳ねるオーディエンスに、ダーリンと呼びかける櫻井は、優しげだ。
もう早くもファンタジックな夢を魅せ付けられるようにBUCK-TICKワールドに突入する日本武道館。

そこには、漆黒の羽も、ステッキも、シルクハットもなかったが、
エスニックな軍服の櫻井敦司も、ナイトのような今井寿も、
ヒデも、U-TAも、アニイもまるで、御伽の国から飛び出してきたような幻覚を見ているようだ。

ナチュラル・ドラッグ!

そう、我々は幻覚を見ているのかも知れない!

そんな気にさせられる。


「OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
 DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!」



マイクスタンドを掻き分けるような櫻井敦司の眼光は、こんな幻想の中でも鋭い。
オーディエンスを射抜くかの如き視線で威嚇してくる。
それをキャッチーな今井寿のギター・フレーズが包み込んで行く。

またもや手拍子で日本武道館がひとつになる。

「ベットの中 流星 君の孤独を抜け出そうよ 今夜
アンドロメダ タンバリンはピエロ UP SIDE DOWN」


櫻井敦司はピエロみたいに片足をあげておどけて魅せる。
夢ゴゴチのまま、今夜もBUCK-TICKの不思議な国への入り口へと堕ちていく。
今宵12月29日。
クリスマスよりも、元旦よりも・・・、
我々にとっては、神聖なる夜だ。

「真っ逆さま 跳んで 迷子になりに出掛けようパレード
 高く高く 息を止め潜って FALLING DOWN」


さあ!堕ちよう!
この穴の先に何が待ち受けるかはわからないが、
君と一緒、貴方と一緒なら、きっとダイジョウブ。
さあ!賽は、投げられた!

「高く そう高く沈んでいく
 君の耳元で囁いた」


この感覚は・・・浮遊感?
それとも、失墜感!?
その両方は一遍に感じながら彼らの宇宙を堕ちて行く観衆。
上が下で、左が右だ!
前に進もうとすればするほど、君は遠ざかって行く。
君が駆け寄ってくると、僕は君を突き抜けてしまう!



「OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
 DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!」



でもダイジョウブ!
人生は、愛と死。
君と一緒なら、あなたと一緒なら、
どこまでも・・・。
いつまでも・・・。
悪魔も天使も一緒に彷徨う、この日本武道館。


「さあさあ寄っておいで覗いてみな
 今宵皆様お贈りするはbaby
 ありとあらゆる愛ヌラリ
 お楽しみあれ」


エピキュリアン:今井寿が、更に穴の奥から我々を誘っている。
騙されたと思ってコッチへ来いよ。
どうせ、戻っても、人間の悲惨。
「長いこと考えてる者が、いつも最善のものを選ぶわけではない」って、
そういったのは文豪ゲーテだっけ?
自分にとって何が大事で、何が大事でないか?
優先順位をとりわけ厳守。
悩むのは、馬鹿です。
考えるのはいいですが、悩んでいても病気になるだけ。

「いくよ もういいかい まだだよ
 君の耳元で息を吐く」


同じ馬鹿なら、今宵、喰らい、踊り明かそう!

「高く そう高く沈んでいく
 君の耳元で囁いた」


人生は愛と死!
俺達は愛と死!
Baby don't cry ダイジョーブさ!
人生は Oh Yeah 愛と死!




前ライヴツアーのクライマックスに登場していた「Alice in Wonder Underground」は、
前々回のライヴツアーでは、トリの一曲という印象が強い「DIABOLO」の、
双子的モチーフが描かれていたから、ライヴのトップに、この楽曲が来たこと、
観客は、狂喜乱舞する。

かれこれ何年もファンやってきたので、激変するこのミュージック・シーンの中で、
彼らがどんな立ち位置にいるのかくらいは、ファンも冷静に見ることはできる。

それでもアルバムを冠にしたツアーでは大きな会場を埋めることはできるし、
こうして年末12月29日、日本武道館のライヴを行えば全国からファンが終結する。

メンバーも歳を取ったが、ファンだってそれは同じこと。
ファンによって長短はあるが一緒の年月を過ごしてきたわけだ。
お互い大人になるってもんだ。
盲目ではない分、もう離れることも出来やしない。
それなら、最後まで見続けてやろう、と、ファン達はこの12月29日を聖夜と決めた。



勿論、この日本武道館が、初めてではなく、京都、静岡と、
バンド側も、この「Alice in Wonder Underground」のオープニングのウケには、
自信を持って臨んでいたから、ノッケから、アッパーな方向に、
この【THE DAY IN QUESTION】向かっていったのは間違いなかった。


・・・だからBUCK-TICKにも一点の妥協もない。
全員に夢を魅せるべく、最高のショウを魅せるだけだ。
この年も頭から、寸分の出し惜しみもない【THE DAY IN QUESTION】が始まる。


今宵【THE DAY IN QUESTION】!

我らが、神;BUCK-TICKの聖なる夜。

さあ!真っ赤に染まるんだ!



$【ROMANCE】




【SET LIST 2008.12.29】
01.Alice in Wonder Underground
02.疾風のブレードランナー
03.Baby,I want you.
04.ANGELIC CONVERSATION
05.GLAMOROUS
06.CREAM SODA
07.ORIENTAL LOVE STORY
08.Snow white
09.絶界
10.love letter
11.唄
12.ROMANCE
13.極東より愛を込めて
14.鼓動

~ENCORE1~
01.ILLUSION
02.GALAXY

~ENCORE2~
01.真っ赤な夜
02.ICONOCLASM

~ENCORE3~
01.RENDEZVOUS~ランデヴー~
02.HEAVEN



Hey Baby 今は 喰らい 飲み 踊ろう
人生は愛と死!

Hey Baby Baby don't cry  愛死合おう
俺達は愛と死!




彼らは4月3日 川口リリアメインホールから7月1・2日 NHKホールまで
全25公演の【BUCK-TICK TOUR 2009 memento mori】を行うことが決定した。










Alice in Wonder Underground
 (作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


愛とか世界 儚い 羽をたたんだ皆殺しの天使
お願いだ 天使のラッパ鳴り響く

残酷だね ダーリン 愛と血肉をむさぼるゾンビーナ
泣いたりしない 愛はネコソギだぜ NIGHTMARE

いくよ もういいかい まだだよ
君の耳元で息を吐く

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!

ベットの中 流星 君の孤独を抜け出そうよ 今夜
アンドロメダ タンバリンはピエロ UP SIDE DOWN
真っ逆さま 跳んで 迷子になりに出掛けようパレード
高く高く 息を止め潜って FALLING DOWN

高く そう高く沈んでいく
君の耳元で囁いた

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!

ENTER DIABOLO

いくよ もういいかい まだだよ
君の耳元で息を吐く
高く そう高く沈んでいく
君の耳元で囁いた

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!

DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!
EPICUREAN LET'S GO!
EPICUREAN LET'S GO!
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!




$【ROMANCE】

$【ROMANCE】